沖縄ブームによって全国的に認知されるようになった「泡盛」。独特の香りを持つ沖縄の酒と知られているが、実は、焼酎などの蒸留酒は泡盛がルーツとされており、日本の酒文化の源流でもあるのだ。今回は、沖縄唯一の総合酒造メーカーであるヘリオス酒造の協力により、泡盛の魅力や味わい方を改めて学び、外食店で効果的に活用する工夫をお届けしたいと思う。
ヘリオス酒造では、関連事業として酒類製造以外にも数々の事業を展開しており、そのひとつに外食店の直営がある。外食産業に積極的に参入するという目的ではない。酒と食は切っても切り離せない関係にあり、どういった提案ができるのかというプレゼンテーションの場と位置付けている。
現在は、イギリス風ビアパブの 「 Helios Pub 」 や 琉球料理が味わえる造り酒屋 「 百甕(ももがーみ) 」 など特色の異なる5店舗を沖縄県内で営業をしている。その他には、黒麹醪酢などの健康飲料事業、ワインやシャンパンを中心とした直輸入の洋酒販売事業なども行っている。
以前と比べると泡盛の知名度は全国的に高くなったが、沖縄以外では、まだまだよく飲まれているというわけではない。
「 酒造メーカーは、お客様に楽しんでいただけるよう、いいお酒を造ってご提供するのが使命 」 (ヘリオス酒造 マーケティング本部 松田あすか氏)であり、泡盛の良さ、飲み方の提案などをさらに強化して、外食店はもちろん、その先にいる消費者に分かりやすく訴えていくことを今後の課題としている。泡盛を飲んだことがないという人は、接触機会が少ないという理由が圧倒的に多い。プロモーションや販路拡大によって、消費者の接触機会を増やしていく構想である。
さらなる事業拡大を図り、 『 一の蔵 』 、 『 二の蔵 』 に続く三番目の貯蔵庫として、トンネルを活用した貯蔵庫 『 与那の蔵 』 を今年から使用開始している。これは、新トンネルの開通に伴い使われなくなったトンネルを再活用するものだ。 トンネル内は温度と湿度が安定しており、泡盛の熟成に 適した環境にあるという 。この環境を最大活用して、より付加価値の高い泡盛造りを行っていく計画だ。 新たな蔵の導入により、さらなる事業の発展を期すヘリオス酒造が目指す方向性はどこなのだろうか。松田あすか氏に伺ってみた。「 常に本物志向で造っていきたいと思います。また、食前、食中、食後酒と言われるように、お酒と食の関係には相性やスタイルがあり、色々なシチュエーションに合わせてお酒は飲まれます。泡盛だけでなく、TPOに合わせた酒文化を、酒類にこだわらず提供していきたいと思っています。」
沖縄料理に限定されがちな泡盛だが、食の楽しみを演出する酒として、まだまだ消費者に浸透する余地がある。外食店にとっては、泡盛に合う新メニューの開発や店の新たな特徴となる可能性を秘めているのではないだろうか。
ヘリオス酒造株式会社
http://www.helios-syuzo.co.jp/
1961年に沖縄の基幹作物であるさとうきびを使ったラム造りからスタートした沖縄唯一の総合酒造メーカー。'79年から泡盛の製造を開始、'91年にはラム造りで培った技術を活かした樽熟成泡盛「くら」を発売、沖縄県内はもとより全国的な人気を得ている。マーケティングリサーチを重視した姿勢により、時代のニーズや生活者マインドに適した商品開発や販売促進を推進している。
取材協力 ヘリオス酒造株式会社 マーケティング本部 取締役本部長 松田あすか氏
文: 貝田知明 写真(人物):トヨサキジュン