沖縄ブームによって全国的に認知されるようになった「泡盛」。独特の香りを持つ沖縄の酒と知られているが、実は、焼酎などの蒸留酒は泡盛がルーツとされており、日本の酒文化の源流でもあるのだ。今回は、沖縄唯一の総合酒造メーカーであるヘリオス酒造の協力により、泡盛の魅力や味わい方を改めて学び、外食店で効果的に活用する工夫をお届けしたいと思う。
泡盛の名が浸透しつつあるといっても、ただ居酒屋などに置いてもお客さんが頼んでくれるというものではないだろう。外食店のひとつの売りとするためには、泡盛をどのように活用すればいいのだろうか。ヘリオス酒造・マーケティング本部取締役本部長の松田あすか氏に、消費者が抱く泡盛のイメージや泡盛の味わい方について話を伺ってみる。
- 泡盛のイメージと実態の相違をどのように捉えていますか?
【松田】 イメージとしては、いまだに臭い・強いと思われているかもしれません。アルコール度数に関しては、いま一般的に流通しているのは 25~30度の泡盛ですから、焼酎とそれほど変わりません。沖縄で購入されるお土産物に43度が多いことが、原因のひとつとなっているかもしれませんね。
- 古酒は、キツいお酒というイメージがあるようですが…
【松田】 実際は、そうではないんですよ。もともと原酒の段階では43~44度ですが、貯蔵して、熟成を重ねるとアルコールが揮発して、少しづつですが度数は下がります。それでも古酒の度数は若干高いですが、味わい深く香りが芳醇で、さらに口当たりもまろやかになるので、結構飲みやすいんです。一般的には、原酒を割り水という工程で、水を加えて度数を調節し製品化します。でも、加水をしないことで、古酒の醍醐味を消すことなくお飲みいただけるので、年数を重ねたものは加水せずに、そのままでなければもったいない。そういったことから、古酒は強いという意識になっているかもしれないですね。ですから、まだ古酒を試したことがない方には、一度そのまろやかさを実感していただきたいです。
ヘリオスには、「名水十年」という本数限定の十年古酒がありますが、これは原酒そのものを商品化したものです。アルコール度数は、やはり熟成の過程で37度に下がっています。十年という長い年月寝かせていますから、古酒独特のまろやかで芳醇な味わいが魅力的な商品に仕上がっています。
- 沖縄でのイメージはどのようなものですか?
【松田】 泡盛が家の外でも一般的に飲まれるようになったのは、80年前後だと聞いております。もともと沖縄が米軍統治下にあったため、昔はウィスキーなどの洋酒が浸透していました。沖縄全体で泡盛が飲まれているわけではなかったのです。家庭の晩酌用に飲まれている時代が長かったですね。いまは、居酒屋などでも色々な銘柄の泡盛が並んでいますし、必ずといっていいほど飲まれるようなお酒になりましたね。居酒屋での飲まれ方ですが、東京などでは最初にビールで乾杯して 、あとは焼酎とか他のお酒を飲んだりするじゃないですか。それと同じように沖縄では、ビールの後に泡盛をボトルで頼むというような飲み方が 主流になってきていますね。
また、二日酔いになりにくいとよく言われていますが、蒸留酒なので、雑味成分が普通の醸造酒と比べて少ないからでしょう。
【松田】 首都圏など沖縄以外の地域では、焼酎と同じ感覚でオンザロックが多いようですが、実は、地元では水割りが主流なんです。多くの人が驚かれますが…。水割りにするのは、食事と一緒に長い時間楽しめるからではないかと言われています。あと、意外と知られていないのは、お湯割りの美味しさですね。沖縄はそれほど寒くならないので、まだ、それほど広まっていませんが、寒い時期や寒い地方であればお湯割りはおすすめです。より香りが広がるので、泡盛好きにはたまらないんです。おすすめは5対5から、お湯6対泡盛4です。特に爽やかで香り華やかなタイプのものは、お湯割りに向いています。弊社の「淡麗琉球美人」なんかは、お湯割りにもよく合いますよ。
それから、最近は、社団法人泡盛マイスター協会が泡盛ベースのカクテルを数多く発表しています。今年で第5回を迎えますが、「 泡盛カクテルコンテスト 」 などを主催して、泡盛の新しい楽しみ方を提案するなど、泡盛の普及に尽力しています。また、弊社のホームページでは、「 くら 」 を使った 「 くらトニック 」 「 くらッティーマリー 」 などを紹介しています。
- 泡盛に合う食材・メニューはどういうものですか?
【松田】 当然、沖縄料理全般に合いますが、その他では中華料理に合います。酒質によっていろいろありますが、爽やかな香りで飲み口の軽いタイプの泡盛ならお寿司やてんぷらなど、いわゆる素材の味を大事にするものが合います。
例えば、「ゆんたく」などは、料理の味を引き立てるのでいいんですよね。そのほかには、味の濃い料理には泡盛はよく合います。おすすめ料理として提案しているのは、全国どこでも手に入る食材を使った沖縄料理です。例えば、沖縄風の豚の角煮の「ラフテー」、韓国のチヂミのような、にらを使った「ヒラヤーチー」、皆さんご存知のゴーヤを使った「ゴーヤーチャンプルー」などがあります。
ヘリオス酒造株式会社
http://www.helios-syuzo.co.jp/
1961年に沖縄の基幹作物であるさとうきびを使ったラム造りからスタートした沖縄唯一の総合酒造メーカー。'79年から泡盛の製造を開始、'91年にはラム造りで培った技術を活かした樽熟成泡盛「くら」を発売、沖縄県内はもとより全国的な人気を得ている。マーケティングリサーチを重視した姿勢により、時代のニーズや生活者マインドに適した商品開発や販売促進を推進している。
取材協力 ヘリオス酒造株式会社 マーケティング本部 取締役本部長 松田あすか氏
文: 貝田知明 写真(人物):トヨサキジュン