沖縄ブームによって全国的に認知されるようになった「泡盛」。独特の香りを持つ沖縄の酒と知られているが、実は、焼酎などの蒸留酒は泡盛がルーツとされており、日本の酒文化の源流でもあるのだ。今回は、沖縄唯一の総合酒造メーカーであるヘリオス酒造の協力により、泡盛の魅力や味わい方を改めて学び、外食店で効果的に活用する工夫をお届けしたいと思う。
泡盛は、日本最古の蒸留酒であり、焼酎のルーツだという説がある。蒸留酒の起源は、紀元前300年頃の古代ギリシャにあり、10世紀頃にはアジアでも穀物・椰子から蒸留酒が造られていた。そして、約600年前の15世紀初頭、中国や東南アジアと貿易を行っていた琉球王国にシャム国(現在のタイ)から蒸留酒がもたらされ、その製法にならって泡盛の原型が生まれたのである。名前の由来は、原料に粟を使っていたからなど諸説あるが、酒の度数を計る際に盃の上方から注いで、その泡の立ち具合で判断したという 「 泡を盛る 」 説が有力視されている。ちなみに、その後、100年の時を経て琉球から九州へ蒸留酒の製法が伝えられ、現代の焼酎が生まれたと言われている。
泡盛の原料は米100%、日本米ではなく主にタイ産インディカ米が利用されている。そして、沖縄にしか自生しない黒麹(くろこうじ)菌で仕込まれ、米麹へと成長していく。米麹に仕込み水と酵母を加えたものが醪(もろみ)で、これを攪拌しながら発酵させ、蒸留すると泡盛が誕生するのである。 いわゆる日本の焼酎との大きな違いは、泡盛は一回だけしか仕込まず、原料すべてを麹に変えて酒を造ること。対して、焼酎は、醪にする段階で副原料を入れる二次仕込み・二段仕込みという工程となる。芋焼酎の場合、一般的には、米で麹を造り、醪になる副原料となる芋を加えている。言ってみれば、原料すべてを麹に変えることが、泡盛のコクのある深い味わいを生むのである。
泡盛は、寝かせれば寝かせるほど熟成するもので、伝統的な方法として甕(かめ)熟成が用いられている。甕に含まれる鉄分やカルシウム・マンガンなどの成分が接することで、熟成が促され、泡盛に甕熟成独特の風味が加わるのである。ヘリオス酒造は、伝統的な甕熟成はもちろんだが、樫樽による長期熟成も導入していることが最大のこだわりだ。ウイスキーやラムなどで使われるホワイトオークの樽を使用している。この樫樽を使用することにより、熟成のスピードを速めることができるのである。また、蔵の中で息づく樫樽は、それぞれが違った個性を醸し出し、微妙に違った芳醇な味わいと、その色合いが原酒につくことにより琥珀色の輝きを生み出し、同社の代表的製品である 「 くら 」 が誕生するのである。
ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラムなど西洋の蒸留酒とは異なり、泡盛は食中酒という大きな特徴がある。ヘリオス酒造 マーケティング本部の松田あすか氏が、「 泡盛は、お酒のみで楽しむだけでなく、 食事と一緒に楽しみながら飲むことができるので、より生活に密着したお酒だと考えています。 」 と語るように、外食産業にとって泡盛は親和性の高い沖縄酒文化なのである。
ヘリオス酒造株式会社
http://www.helios-syuzo.co.jp/
1961年に沖縄の基幹作物であるさとうきびを使ったラム造りからスタートした沖縄唯一の総合酒造メーカー。'79年から泡盛の製造を開始、'91年にはラム造りで培った技術を活かした樽熟成泡盛「くら」を発売、沖縄県内はもとより全国的な人気を得ている。マーケティングリサーチを重視した姿勢により、時代のニーズや生活者マインドに適した商品開発や販売促進を推進している。
取材協力 ヘリオス酒造株式会社 マーケティング本部 取締役本部長 松田あすか氏
文: 貝田知明 写真(人物):トヨサキジュン