【企画特集】飲食業における環境問題を考える
近年、脱プラスチックの動きが加速している。今年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)が制定され、事業者に対してプラスチックの資源循環を進めていくことが求められるようになった。これは、飲食業に携わる人々にも無縁なことではない。しかも大手企業だけではなく、従業員が5名以上の事業者にも求められているのである。そこで外食ドットビズでは、食関連企業に対し、プラスチック製品を供給している グンゼ株式会社 の協力のもと、脱プラに対し、どのようなことが必要なのか考察していきたいと思う。
今年の4月に制定された「プラスチック資源循環法」では、プラスチック排出事業者等に対してプラスチック製品の設計・製造から使用後の再利用まですべてのプロセスで資源循環を進めていくことが求められている。Reduce(リデュース=削減)、Reuse(リユース=繰り返し使用)、Recycle(リサイクル=再生)に加えてRenewable(リニューアブル=再生可能なものに置き換える)の3R+Renewableが前提となっている。つまり、プラスチックの削減・再利用だけでなく、廃棄を前提としない資源の循環が求められているのだ。
このプラスチック排出事業者とは、プラスチック製品の製造者だけでなく、プラスチックを利用している飲食事業者も含まれる。しかも、大手企業だけではなく、小規模企業者(従業員の数が5人以下の、商業又はサービス業の業種を行う会社・組合等)等を除く排出事業者も、判断基準に従って取組を行うことが必要となる。具体的には、①排出の抑制、②分別排出、③再資源化、④再資源化できないものであって、熱回収できるものは熱回収を実施する、といった原則に従うこと、排出の抑制および再資源化等の状況の記録や管理体制の整備を行うこと等が必要とされている。
飲食店におけるプラスチック製品といえば、飲料用のストローやテイクアウトの際に提供するフォークやスプーンなどのカトラリーがすぐに思い浮かぶが、もっと身近な、食品卸やセントラルキッチン等から納入される水産物、畜産物などの生鮮食品や、それらの加工品等の食材を包装する袋に使われるフィルムなども、排出の抑制・再資源化等の対象となるのだ。
これらの食品類の輸送時に使用するフィルムは、冷凍環境下使われることが多く、強度維持のため70μ(マイクロ)m以上の厚みが必要とされてきたので、プラスチック削減に向けた対策が取りづらいことが課題となっている。さらに、無延伸のナイロンポリチューブフィルムが多く使用されていることより、耐ピンホール性(穴が開きにくい)や冷凍下での物質の変質(硬化)による強度劣化も課題となっている。
そこで、グンゼでは、この課題解決のため、極薄強靭延伸チューブフィルム「ピュアラップR FS35Nタイプ」(以下、FS35N)と「ピュアラップR FS40Nタイプ」(以下、FS40N)を今年(2022年)1月に発売した。
「FS35N」「FS40N」は、フィルム厚みがそれぞれ35μm・39μmと極薄なので、従来の厚み70μmや80μの無延伸チューブフィルムと比べ、同用途でのプラスチック使用量が50%以上の削減が可能となる。
また、セントラルキッチンなどでタレ付きの魚などを袋に入れる際、薄くて折り曲げやすいので、簡単に袋詰めしやすく、タレなどがふちに付着しづらいのでシールもしやすいなど作業効率が上がる。
さらに、同社独自の技術により伸び縮みする延伸タイプなので強度の面でも勝る。例えば、魚の切り身や骨付き肉を袋に入れて真空状態にするときや、輸送中の振動などで骨によって穴があいてしまうことも少なくない。そうすると、流水解凍した際に袋の中に水が入ってしまい使い物にならなくなったり、タレが付いた調理済みのものはタレが漏れてしまい食品ロスにつながることもある。これに対して、同社が行った尖ったピンによる突き刺し強度検証で、A社の70μmタイプが4.3N(ニュートン)、B社の70μmタイプが3.7Nだったのに対し、「FS35N」が10.1Nと2倍以上、「FS40N」が14.1と3倍以上の強さがあることがわかった。しかも、冷凍下でも硬化しにくい原料を配合しているので、強度劣化の心配もない。このように、耐ピンホール性が高いので未然に食品ロスを防ぐこともできるのだ。
誰もがSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)という言葉を耳にするようになったことからも、環境問題に対して取り組む必要があるのは、世界的な潮流だ。特に、飲食業に携わる方々にとって、プラスチック削減と食品ロス削減は避けて通れない道である。まずは、自分たちが使っているプラスチック製品がプラ削減や食品ロス削減にかなうものかどうかを取引されている食品メーカーや食品商社に確認することをお勧めする。
グンゼ株式会社(GUNZE LIMITED)
創立 1896年(明治29年)8月10日
代表者 代表取締役社長 佐口敏康氏
大阪本社 大阪府大阪市北区梅田2-5-25 ハービスOSAKAオフィスタワー
プラスチックカンパニー https://www.gunze.co.jp/plastic/