【企画特集】店頭集客で繁盛店 食品サンプルを科学する ~食品サンプルが繁盛店を生み出す

企画特集 店頭集客で繁盛店 食品サンプルを科学する 食品サンプルが繁盛店を生み出す

日本の食文化の発展に大きく貢献してきた食品サンプル。店頭に食品サンプルがあることで、消費者に対してどのような働きかけができるのか?その効果と理由を食品サンプル業界大手の「イワサキ・ビーアイ」の協力のもと、元「日経レストラン」編集長の加藤秀雄氏に探ってもらった。

第4回 食品サンプルで日本の優れた食文化を伝承

第4回 食品サンプルで日本の優れた食文化を伝承

サンプルメーカー最大手、イワサキ・ビーアイ(東京・大田区)の岩崎毅社長は 「 日本には温度差をめでる文化がある。春夏秋冬と四季がはっきりとし、それぞれ旬の食べ物が出回る。飲食店にとっては、販促機会が年に4回あることになる。これを活用しない手はない 」 と語る。

食品サンプルで「季節の食欲」を刺激

夏になれば 「 ハモの季節になったか 」 とか、秋に入れば 「 栗やサンマ、マツタケがおいしそうだな 」 といったことを、目から情報としてお客に伝える。もちろん現物を展示することでもいいが、コストを考えると、食品サンプルでこれらのメニューを用意し、ショーケースの中にも桜やモミジの枝を添えるなど、それなりの飾りつけをしながら季節感を演出する。

季節感の演出で「季節の食欲」を刺激以前も述べたとおり、メニューのサンプルケースが 「 風景化 」 することが一番いけないこと。一年中同じサンプル(メニュー)を同じように並べていたのでは、店の前を通るお客に 「 代わり映えしない店だな 」 「 工夫のない店だな 」 といったマイナスの情報を発信しているようなもの。季節に合わせてサンプルを入れ替え、見せ方の工夫をすることで、季節感を訴えると同時に、お客の 「 季節の食欲 」 を刺激することが、何よりの販促策となるのだ。

食品サンプルが食文化の普及、伝承に力

岩崎社長が強調する食品サンプルの効用のもう一つは、食文化の普及や伝統的な食べ物、地域色の強いメニューの継承だ。

昭和7年の同社食品サンプル1号「オムレツ」イワサキ・ビーアイは今年創業80周年。日本における外食の企業化・産業化は1970年代冒頭に始まっているので、その歴史は日本の外食産業史の約2倍となる。太平洋戦争前は食の欧州化、戦後は米国化が急速に進んだ。それまで日本人が見たこともなかった食べ物、メニューがどんどん日本に入ってきて、それが普及していった。その一翼を担ったのが食品サンプルであったことは間違いがない。

近年でも、エスニックブーム、タイ料理、韓流料理ブームなど、日本人にはなじみの薄い料理の流入が続いている。メニューブックの文字情報だけでは伝えきれない色や形、ボリュームなどを実物大で伝えるメニューサンプルが、これらの食べ物を日本に浸透・定着させる上で大きな力となって来た。食品サンプルは、「 食の異文化の伝道者 」 としての役割を果たしてきたといえるのかもしれない。

地方食文化の伝承に科学の力

「地方の食文化も伝承していきたい」岩崎氏談日本各地に残る地域性の強いメニューの継承も、岩崎社長が力を入れたいとする分野だ。コメの裏作として麦を栽培していた地域には 「 うどん文化 」 が、土地のやせた地域には 「 そば文化 」 と、各地には生産面の制約から発生した独自の食文化、地域料理がある。

小麦やそばは、現在では大半を輸入品に依存しているのが実態だが、各地ではこのような料理を伝統的な地域メニューとして残そうという動きがある。

ただ、このような地域の食文化、地域メニューが日本全体の都市化の波の中で、厳しい状況に立たされていることも事実。ましてや、他地域から来た観光客には 「 ほうとうって、どんな料理 」 「 きりたんぽって、何?」 と、分かりにくくなっているのだ。

その中で岩崎社長は 「 これらの地域料理、ローカルメニューを食品サンプルの形で、知らない人たちに伝えて行きたい。地方の個店やローカル飲食店チェーンを応援するのが自分たちの使命のひとつだ 」 と語る。

1点(1店)ごとの注文に応じられるのが食品サンプルの強み。量産をしてコストを下げるのではなく、その店の料理を職人の技により、忠実に再現していく手法をとっているからだ。

高度な技術とノウハウを持った“職人技”職人芸と科学は決して対立する概念ではない。調理が全て科学で解明、説明できることを、私は 「 サイエンス・オブ・クッキング 」 と呼んでいる。なぜこの料理は64℃で加熱するといいのか、なぜ野菜を煮込むときは面取りをすると煮崩れないのかなど、今まで腕のある料理人の技として説明してきたことも、実は全て科学で説明できる。調理人は、このようなことを体感として身につけている優れた科学者なのだ。

これと同じ意味で、実物そっくりの食品サンプルを仕上げていく職人の技の裏には、優れて科学的な技術、理論が隠れている。この科学の力を使い、日本の優れた食文化を伝承したいというイワサキ・ビーアイの姿勢にエールを送りたい。

サンプルケース

読者プレゼント DVD「食品サンプルを科学する」食品サンプルの集客力を“科学”と“事例”で解説



イワサキ・ビーアイ 株式会社岩崎

株式会社岩崎

http://www.iwasaki-bei.co.jp/

東京本社 東京都大田区西蒲田8-1-11

創業 1932(昭和7)年

代表取締役 岩崎 毅氏

事業内容 営業品目食品サンプル及び一般模型の製造・販売・貸付、メニューブック・チラシ等販促印刷物の企画・制作、販売促進・店舗ディスプレイの企画、飲食店コンサルティングなど

文:加藤秀雄氏
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