日本の食文化の発展に大きく貢献してきた食品サンプル。店頭に食品サンプルがあることで、消費者に対してどのような働きかけができるのか?その効果と理由を食品サンプル業界大手の「イワサキ・ビーアイ」の協力のもと、元「日経レストラン」編集長の加藤秀雄氏に探ってもらった。
飲食店でサンプルケースを置くことが、集客や売り上げ増に如何に力を発揮するかを前回述べた。ただ、サンプルメーカー最大手、イワサキ・ビーアイ(東京・大田区)によれば、ケースの使い方には一定の 「 黄金律 」 ともいえる法則があるという。そのいくつかを紹介しよう。
サンプルケースの大きさに比べ、メニューサンプルが少ないと、スカスカ感が出て貧相な印象を与えてしまう。メニューの皿が隙間なく並ぶ程度か、皿のエッジ(縁)がほんのわずか重なり合う程度に並べると、店のメニューの豊富さ感が出る。
メニューの内容、ボリューム感をよく見てもらうために、下段に置いたメニューの皿は45度程度、上段に行くに従って皿の角度を上げ、60度程度にするといい。視線が明らかに上からのぞくような形になる低い棚を除き、棚に皿をそのまま置くのはあまりに芸がないのだ。
身長が低い子供が上段に置いてあるメニューを見るのは無理。「 お子様ランチ 」 のような子供向けのメニューは下段に置く。ドリンク類は上段に置くのが一般的だが、子供向けのドリンク類は、メニューの脇に添えるといった配慮も必要だろう。
店が売りたい、アピールしたいメニューはサンプルケースの中段の中央、つまりド真ん中に置くというのが一般的なセオリーだ。ただ、これは店の入り口に対してサンプルケースがどこに置かれているかといったことによっても変わる可能性がある。イワサキ・ビーアイの岩崎毅社長は、「 一番いいのは、メニューの置き場所を変えて、売れ行きの差を見ることだ 」 と話す。
置き場所を変えたことで、そのメニューの売り上げが格段に上がったということであれば、そこがそのサンプルケースのホットポイントということになる。「 飲食店の中には、食品(メニュー)サンプルは壊れやすいので、触ってはいけないと思い込んでいる人も多い。しかし今のサンプルは蝋細工ではなく、ビニル樹脂または合成樹脂でできているので、壊れる心配はほとんどない。置き場所を変えることで、注文数がどのように変わるかといったことを学ばせる、従業員教育に使ってもらえるといい 」 と岩崎社長は強調する。
上のことにも関連するが、サンプルケースで一番いけないのは、いつも同じメニューが同じ場所に並んでいるといった、サンプルケース自体が「風景化」してしまうことだ。いつ見ても同じというのでは、食品サンプルは力を発揮することができないどころか、お客には「いつ来ても変わり映えしない店だ」と、マイナスのイメージさえ演出しかねない。
新メニューが出ればそれを飾る、季節感を出すために、メニューサンプル以外に桜やモミジの枝を周りに飾るといった工夫が必要なのだ。「食」に季節を感じ、それを愛でる日本の良さを、食品サンプル(ケース)でぜひ具現化してほしいものだ。
株式会社岩崎
東京本社 東京都大田区西蒲田8-1-11
創業 1932(昭和7)年
代表取締役 岩崎 毅氏
事業内容 営業品目食品サンプル及び一般模型の製造・販売・貸付、メニューブック・チラシ等販促印刷物の企画・制作、販売促進・店舗ディスプレイの企画、飲食店コンサルティングなど