徹底分析・外食産業の現状と未来への展望 ~アナリストが見た日本の外食産業動向~

徹底分析・外食産業の現状と未来への展望 アナリストが見た日本の外食産業動向

長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。

第二部

第4回 変貌する外食企業(1) 収益確保の体質改善にシフト

現在の外食産業界が従来と異なる点は、これまでみてきたように、外食マーケットが 8 年連続で縮小していること、消費者ニーズがますます多様化・高度化していることにあるように思われます。これにより、売上高増加対策として、積極的な出店をすることで、商圏内では店舗過剰状態が生じ、自社競合を緩和するためや多様な消費者ニーズに対応するために、多業種・多業態化を推進する動きが活発化しております。

その多業種・多業態化も新業態開発のリスクを避けるために M&A (企業の合併・買収)を実施するなど、外食産業界がここ数年、大きく変化してきています。その特徴的な傾向をみてみることにしましょう。

( 1 )出店政策

外食企業における効果的な売上高増加対策のひとつは、店舗を出店することですが、外食産業新聞社が調査している主な外食企業の出店状況をみると、大きく店舗を拡大している業態は喫茶店ぐらいで、他の業態では、平成 17 年で 0.5 %以下の増加率にとどまっています。

企業別にみると、若干増加している企業がある一方で、前年の店舗数を下回っている企業も見受けられます。これは、既存店の見直しを行っているからで、その見直しも従来からの店舗リニューアルやメニュー改訂のほかに、スクラップ(退店)も視野に入れたテコ入れ、損益分近点の引き下げなど店舗の存続にかかわる活性化策を実施しているのです。これらは、商圏が縮小し、商圏内での店舗間競争が激化するため、既存店のウエイトが大きい企業では、既存店売上の増減が全体の売上を大きく左右するからです。

大部分の企業では、マーケットが縮小している中での売上高の増加が容易ではないことから、収益を確保するために体質改善へシフトしており、その一環として、既存店見直しが活発化していると考えられます。

主な外食企業の店舗数の推移
主な外食企業の店舗数の推移
資料:外食産業新聞社「日本外食新聞」、日経MJ
注)店舗数は各年12月末の店舗数。但し「フレンドリー」「スターバックスコーヒー」については各社期末の店舗数。

また、既存店に効果的な機能を設置することで、新規出店と同じ効果を出す試みも始められています。例えば、宅配の実施、営業時間の延長などです。これらの既存店活性化策を早く実施した企業ほど、業績が好転しているように思われ、それが企業間の格差につながっているように思われます。  以上のことから出店政策は、新規出店と合わせて既存店対策が重要になっていることがわかると思います。



堀田 宗徳

堀田 宗徳

1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。

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