長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。
第一部 最終回
飲食店の業績を見る上では、既存店の動向が重要な指標のひとつとなります。大部分の外食企業では、全店舗数の中で既存店のウエイトが大きくなり、最近は、出店することよりも既存店の活性化対策を実施する傾向が強くなっています。
財団法人・外食産業総合調査研究センター が昭和 57 年から毎月首都圏の既存店の売上高・客単価・客数を調査している「外食産業月次売上動向調査」で、昨年から直近までの動向を見てみます。営業給食平均の1店舗あたりの客単価は、平成 17 年 1 月が前年同月より 0.6 %上昇し、 3 月にかけて上昇率が低下しています。その 3 月は、前年実績を下回っています(対前年同月上昇・低下率 0.6 %低下)。 4 月(同 0.6 %上昇)以降、 12 月(同 1.1 %上昇)までは、ほぼ 0.5 %前後で推移しています。平成 18 年に入ると、 1 月( 0.3 %低下)、 2 月(同 0.4 %低下)と前年実績を下回りましたが、 3 月(同 0.5 %上昇)から 5 月(同 0.9 %上昇)にかけて前年実績を上回って推移しました。
客数は、平成 17 年 1 月が前年同月より 2.5 %減少し、 2 月には前年の閏年の反動もあり減少率が拡大、前年同月より 7.9 %減少しております。 3 月(対前年同月増減率 3.6 %減少)から 7 月(同 3.9 %減少)まで単純平均 3.7 %前後で推移しました。 8 月(同 1.4 %減少)からは減少率が縮小し、 12 月には前年同月より 1.9 %減少しました。平成 18 年 1 月(同 2.9 %減少)、 2 月(同 0.6 %減少)と前年実績を下回りましたが、 3 月には平成 16 年 7 月以来 19 ヶ月ぶりに前年実績を上回り前年同月より 0.9 %増加しております。しかし、 4 月(同 1.5 %減)から再び減少傾向となり、 7 月(同 0.9 %減)まで続いている状況です。
売上高は、平成 17 年 1 月が前年同月より 1.9 %減少し、 2 月には 7.5 %と大きく減少しました。 3 月(同 4.2 %減少)から 7 月(同 3.4 %減少)にかけてマイナス 3 %前後で推移し、 8 月(同 1.2 %)から 12 月(同 0.8 %減少)にかけては、マイナス 1 %前後で推移と一段と減少率が縮小しました。平成 18 年 3 月には客数同様、 19 ヶ月ぶりに前年実績を上回り、前年同月より 1.4 %増加しましたが、その後の天候不順等もあり 7 月(同 0.9 %減)まで減少しております。
以上、既存店の売上高、客単価、客数をみてきましたが、客単価は 1.3 %からマイナス 1.2 %とそれほど格差のない範囲で推移していますが、売上高は、ほぼ客数の動きと同じ動きになっており、売上高を増加させるためには、客数の増加が必要なことがわかります。
また、大きな流れとして、既存店売上高の動向は、平成 17 年年央あたりから減少率が徐々に縮小していることがわかります。
資料:(財)外食産業総合調査研究センターの推計
堀田 宗徳
1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。