長い低迷期にあるといわれている外食産業界。バブル経済崩壊後の不況が大きな要因となっていることは確かですが、外食産業特有の課題もその裏には隠されています。外食産業および関連産業の産業構造・経営動向等に関する調査や財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)主任研究員である堀田宗徳氏に、数々の数値データをもとに外食産業が抱える課題と展望を語っていただきました。
第一部
平成17年の外食産業市場規模は、 24 兆 2,781 億円と前年より 0.8 %減少し、平成 10 年から 8 年連続の減少となっています。しかし、「飲食店」に限ると、平成 17 年は前年より 0.1 %減少と底打ちの兆しが見えてきているようにも思われます。
経営面をみますと、株式公開企業の売上高は前年を上回っておりますが、利益面では減少している企業が多く見受けられます。企業の中には、収益を改善するために既存店の活性化策やコスト削減策などを積極的に実施し、その成果を出しているところもあります。既存店活性化策への着手が、企業間格差につながっているようです。
前述したように、マーケットは底打ち感が見え始めていますが、縮小していることに変わりはなく、依然として商圏内では店舗過剰状態(オーバーストア)が続いています。商圏内での自社競合緩和策として、多業種・多業態化を推進している企業が引き続き多く見られます。この多業種・多業態化の推進策として、ここ数年、新業態開発のリスクを回避するため M&A (企業の合併・買収)の実施が注目されています。同じく、外食マーケットが縮小していることで、国内での店舗展開には限界があるとして、海外進出を行っている企業も多くみられます。 食材関連では、平成 17 年末、 BSE が発生した米国産牛肉の輸入が 2 年ぶりに解禁となり、牛肉主体の飲食店では明るい話題となりましたが、平成 18 年 1 月、輸入の前提条件であった危険部位除去が守られず、脊柱の付いた米国産牛肉の輸入が発見されたことで、再び輸入禁止となり混乱を招きましたが、 7 月 27 日に改めて輸入再開が決定され、吉野家が 9 月 18 日に牛丼の販売を再開したことは記憶に新しいことです。しかし、消費者の中には、米国産牛肉の安全性への不信感を抱いている人もあり、消費者の判断には少し時間がかかるように思われます。 中食については、外食マーケットが前年実績を下回っている中、依然堅調に推移しています。外食からの中食参入は思ったほどでもないように思われますが、消費者の中食支持は拡大傾向にあります。
以上の様なことを踏まえながら、最近の外食・中食産業の動向をみていくことにしましょう。
堀田 宗徳
1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である財団法人 外食産業総合調査研究センター(外食総研)に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。