市場規模約24.5兆円、全従業員数約405万人という一大産業にもかかわらず、外食業は近年の縮小傾向が止まらない状況が続いております。
『外食.biz』では『よみがえれ外食産業!』というメインテーマのもと、新しい視点からこの業界の再活性化のための施策を探り、外食産業に関わる方々に有益な情報を提供していきたいと考えております。
今月は、English OK株式会社 代表取締役のデイブ森様をお迎えして、「日本と世界の外食文化論」「日本の外食産業への期待と提言」などをお話しいただきます。第1回は、English OK社についてご紹介いただきました。
「ハンバーグのデニーズは朝食やお酒を飲みに行った後に」
Q:チェーンレストランという観点から森さんが良く行かれるお店はありますか?
「チェーンレストランですか。私は「笑笑」「和民」「鳥良」など非常に多くの居酒屋チェーン店によく行きますね。「デニーズ」「すかいらーく」「ジョナサン」といった、いわゆるファミリーレストランにも行きますが、主にミーティングする際に利用しています」
「「デニーズ」の話が出ましたが、日本とバンクーバーでは、ちょっと違うのです。日本では普通のレストランとして利用しますが、バンクーバーでは、朝食やお酒を飲みに行った後に行くお店という位置付けなのです。朝食では ”Grand Slum” というメニューがありますが、これはブランドとして確立しているくらい有名なものなのです。日本のメニューには ”グランドスラム” というメニューはないですよね。また日本では飲みに行った時に、最後はよくラーメンで締めますよね。バンクーバーでは、飲みに行った後に最後は「デニーズ」で締めるというような使い方をします。私もよく夜中の3時とか4時に行っていました」
「あと、バンクーバーでは「アローズ」と言うチェーンレストランに行っていました。この店は少しグレードが高く、非常にスタイリッシュで、インテリアも凝っているのです。さらにスタッフの女性は美しく、男性は格好の良い人たちを人選しています。「フーターズ」ですか?残念ながら私はフーターズには一度も行った事がありません」
「素晴らしいと感じるサービスも必要である」
Q:森さんからみて日本のチェーンレストランなどの外食店舗のサービス、いわば顧客満足度はいかがですか?
「そうですね、まずバンクーバーのレストランのサービスと比べてみましょう。
向こうでは、ご承知の通り、チップをたくさんもらおうという気持ちが強いので一生懸命サービスを行っています。レストランに行くとスタッフの方が、「How are you doing ?」 「Did you go shopping ?」 「Enjoy ?」 とか 「Nice to see you again Mr. Mori」 などと話しかけてきてお客様と一生懸命リレーションシップを取ろうとしています。それによってお客様の気持ちがぐっと盛り上がってきて、「それではチップをたくさんあげようか」となるのです」
「それに対して、日本の多くのレストランでは、注文を取る時は、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と言うくらいで、会話もなくただ注文を聞いてハンディターミナルでピッピッとオーダーをしたり、せかせかと機械的に料理を持ってきて、機械的に空いたお皿を下げるという様に会話を殆どしません。単純なサービスという観点では何ら不満はありませんが、これでは心に響きません。ですからまた来ようという気持ちにもなりません」
「日本におけるお客様に対する対応は、早さの面ではとても素晴らしい対応をしていると思います。そして、とても丁寧できっちりとお客様のニーズに対応しているとも思います。日本において最高のサービスでおもてなしをしているお店も私はたくさん知っています。しかし、より効果的な顧客サービスをするために、いくつかの点で気になるところがありますのでそれについて話をします」
「1点目は、日本のレストランでは、オーダーをする時に、お客様が「すいません」とか「よろしいですか」などと言ってから初めてスタッフが注文を取りに来るという場面が多く見受けられます。これは外国人にとっては少々気になります。お客様の状況を見はからいながらスタッフの方が対応していただけると「とてもサービスが良い」という印象を持つことができます」
「2点目は、メインディッシュなどを食事している際に、一人のお客様が終了すると、すぐに順番にお皿をさげていってしまうお店がありますが、このオペレーションは多くの外国人にとって非常に気になります。まだ食事をしている方にとっては、せかされているような気持ちになってしまいます。できる限り皿をさげる際には一緒にさげて欲しいと感じる時があります」
「3点目は、2点目とも関連してきますが、お皿をさげるタイミングをもう少しゆっくりとしていただき、お客様の会話を楽しませていただいたあとに次の皿に進むことができると、よりうれしく感じます。なぜなら外国人の方が、日本人に比べて食事中に会話を楽しむ時間が長いからです」
「日本の料理はすべて美味しいです 。あとは、素晴しいと感じるサービスも必要ではないでしょうか?お客様にとっては、そのお店に来て非常に良い気持ちになれたり、受けたサービスが心に響くことによって、またそのお店に来ようとなるのです」
「外国人に対しては、確かに言葉の壁はあると思います。しかし私もそうですが、日本にきたら日本語にトライしてみようと思っています。ですから積極的に話しかけて来て、コミュニケーションをたくさんとるようにして欲しいと思います」
「グローバル観光戦略」
Q:最近は外国人のお客様が増えてきたように思いますが、「Yokoso JAPAN」キャンペーンについてお伺いしたいと思います
「「Yokoso JAPAN」はキャンペーンの名前ではなく、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の外国人向けのいわば標語なのです。
それでは、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の実施の経緯についてお話いたします。
ここにも、書いてあります通り 2002 年 6 月 25 日に閣議決定された「 経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2002 」に基づいて国土交通省が、外国人旅行者の訪日を推進する「グローバル観光戦略」を関係府省と協力して策定しました。この戦略については、 2002 年 12 月 24 日の閣僚懇談会において国土交通大臣が発表しました」
「この戦略の背景には、当時日本人の海外旅行者が年間約 1,600 万人もいるのに、日本を訪れる外国人旅行者はその 3 分の 1 にも満たない年間約 500 万人に過ぎない事から、その格差をできるだけ早く縮めようと言う考えがあります。
そのため、この「グローバル観光戦略」の中の一つに挙げられている「外国人旅行者訪日促進戦略」の一環としてビジット・ジャパン・キャンペーンの実施が決定されたのです。それにともなって、日本の政府においては関係府省及び自治体、民間企業等が官民一体となって推進する母体「グローバル観光戦略を推進する会」を 2003 年 3 月 26 日に開催し、ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部が立ち上げられました。これを受けて 2003 年 4 月 1 日に実施本部事務局が開設されて、「 2010 年までに 1,000 万人の訪日外国人誘致」を実現するための活動を開始しました」
「去年までの 2 年間は、主に海外向けに広報活動を行ってきました。小泉首相もディストリビューターとなって推進に一役買っていました。今年からは、日本国内向けに広報活動を行っていきます。これは日本のお店に対して、どのように対応したらよいのかを説明していくことです。具体的な活動としては、日本各地に出向いて、その説明のための研修会を開いています。
先日は、このキャンペーンの一環として浅草という外国人にとって日本有数の観光地を抱える台東区で「外国人接遇研修会」があったのですが、私もこの研修会に呼んでいただき、外国人の立場から、このようなサービスを受けるとハッピーな気持ちになれるということをショップのオーナーの方々にお伝えするために講演を行ってきました」
「当社 (ENGLSH OK 株式会社) も、このキャンペーンのサポート企業として活動の支援を行っています。まだまだ、一般的とは言いがたいですが、私たちはこの活動を通して「Yokoso JAPAN 」を広げて行きたいと考えております」