市場規模約24.5兆円、全従業員数約405万人という一大産業にもかかわらず、外食業は近年の縮小傾向が止まらない状況が続いております。
『外食.biz』では『よみがえれ外食産業!』というメインテーマのもと、新しい視点からこの業界の再活性化のための施策を探り、外食産業に関わる方々に有益な情報を提供していきたいと考えております。
今月は、English OK株式会社 代表取締役のデイブ森様をお迎えして、「日本と世界の外食文化論」「日本の外食産業への期待と提言」などをお話しいただきます。第1回は、English OK社についてご紹介いただきました。
「もっともっと日本のことを知りたかった」
Q:日本で起業された理由を教えていただけますか?
「日本で仕事をしようと思ったのは、ヘルスケアの会社を退職した後にそろそろ日本に行く時期が来たのでは、と感じたからです」
「一つ目の理由として、自分のルーツを知りたかったことです。私の祖父母は鹿児島県の枕崎の出身ですので、私も実際に日本に来てもっともっと日本のことを知りたかったのです」
「二つ目に、柔道をしたかったのです。私の父は柔道の先生で、母がその生徒という柔道一家に育ちましたので、 2 歳頃から柔道に触れ、 8 歳から本格的に柔道を始めました。カナダの場合、段は色分けされていて、「白、黄、橙、緑、青、茶、黒」の 7 段階にわかれています。私は、茶まで言ったのですが、黒を取る前に肩を骨折してしまい断念しました。カナダ国内ではナショナルチームの直前までいきました。夢はオリンピックに出ることでしたが、残念ながら夢は叶いませんでした。ですから柔道発祥の地である日本で柔道をやってみたかったのです」
「そして最後の理由が、日本料理をたくさんたくさん食べたかったということです。私が育ったバンクーバーという町は、さまざまな国の人たちが集まりさまざまな文化が融合した町で、食文化も中華、インド、ギリシャ、メキシカン、などとさまざまでした。もちろんいろいろな美味しい日本料理も食べることができました。特にすしや刺身はとても新鮮で、とても美味しく食べられる町でした。ですから是非本場の日本料理というものを食してみたいと思ったのです。実際に日本に来てみて、その種類の多さ、美味しさにはびっくりしました。すき焼き、しゃぶしゃぶと言った鍋類、お好み焼き、もんじゃ焼き、たこ焼きなどはバンクーバーにはなかったので、日本で食べることができてとても幸せでした。ラーメンはバンクーバーにもあるのですが、バンクーバーで食べた時は美味しいとはまったく感じませんでした。日本のラーメンは世界一の美味しさだと思います」
「ビジネスタイムは騒がしくないコミュニケーションの取りやすいお店」
Q:日本に来られてから、普段はどの様な外食をされているのですか?
「そうですねランチタイムには、そば屋、ラーメン屋、大戸屋のような定食屋にもよく行きます。一般的な日本のビジネスマンの方と大差ないと思います。でもよく利用するのは実は西荻窪のお弁当屋さんです。このお店のおじさんは英語をほとんどしゃべれないのですが、とてもフレンドリーで、「 Welcome ! Welcome! 」と言ってくれます。私にとっては非常にサービスがいいと感じます」
「ちなみにバンクーバー時代のランチタイムには、よくお寿司屋さんに行っていました。日本と比べるととても大きな器にたくさんのお寿司が入っているのです。それにもかかわらず、確か700円くらいだったと思いますが、ものすごく安く食べることができるのです。そういえばバンクーバーには回転寿司屋もありますね」
「ディナータイムは、ビジネスとプライベートでは全く考え方が違います。例えばビジネスタイムでは、日本料理、韓国料理、中華料理、イタリアン、フレンチと色々なお店に行きますね。ただ、私の店選びの基準としてはトラディショナルなお店を選びます。まず、お客様に“変なところ” と思われたくないからです。そしてビジネスミーティングが主目的ですので騒がしくないコミュニケーションの取りやすいお店を選びます。そういうことで言いますとやはり日本料理のお店がいいですね。また少し騒がしいですが、韓国料理である焼肉屋さんは、和気あいあいとした雰囲気にしてくれるので好きです。一方プライベートタイムには面白く、楽しいお店を選びます。私の妻が好きということもあるのですが、焼き鳥、お好み焼き、しゃぶしゃぶといったところによく行きます」
「食のオーダーメイド(カスタマイズ)」
Q:日本と北米の外食文化の違いについてはどの様に感じられていますか?
「う~ん、日本と北米の外食文化の違いですか。これはとても難しい質問ですね。外食文化というものは、国ごとだけではなく住んでいる地域によっても大きく異なっているものですからね。ここでは、私のホームタウンのバンクーバーと東京の外食文化の違いについてお話をします」
「大きな違いの一つは、食のオーダーメイドに関することです。私たちはカスタマイズと呼んでいます。 バンクーバーで流行しているのが、低炭水化物ダイエットです。バンクーバーのレストランではどこでもこのダイエットに対応しています。たとえばお客様が、バンズ(パン)あるいはソース抜きのチーズバーガーをオーダーすることはごくごく普通に行われています。それらのオーダーに対して、バンクーバーのレストランでは快く対応してくれるのです」
「皆さんには信じられないかもしれませんが、特にスターバックスはカスタマイズのプロなのです。私の妻がバンクーバーのスターバックスにいきますと「ショート、ノンファット、ダブルショット、エクストラホット、泡なしのラテ」を必ずオーダーします。するとお店ではそのラテを何の問題も無く提供してくれるのです」
「それに対して日本の外食店舗では、どこもカスタマイズをとても頼みづらい環境にあります。カスタマイズというのは、宗教上の問題に対応する際にも役に立ちます。宗教上食することを禁止されているものが多々あるのですが、バンクーバーの外食店舗ではそれらに対応してくれるのです。また、アレルギーに関する対応にも役立ちます。私はトマトアレルギーなので、トマト抜きにしていただくようにいつもお願いしていました」
「バンクーバーには、数多くのレストランがあります。先ほどもお話したように、この地域は、他国籍の文化が混合している地域で、一直線に並んだレストラン街にも様々な影響を及ぼしています。もう一つ日本と北米のレストランの外食店舗の違いとしては、スペースと席の違いが挙げられると思います。日本の外食店舗は、限られた空間の中でレイアウトを考えていますので、とても独創的な配置になっているお店をよく拝見します。北米においては、特別な高級店を除いては、とてもお店全体が非常に広いレイアウトになっていて、特に待合ルームを広く取っているのが特徴と言えます」