市場規模約24.5兆円、全従業員数約405万人という一大産業にもかかわらず、外食業は近年の縮小傾向が止まらない状況が続いております。
『外食.biz』では『よみがえれ外食産業!』というメインテーマのもと、新しい視点からこの業界の再活性化のための施策を探り、外食産業に関わる方々に有益な情報を提供していきたいと考えております。
今月は、English OK株式会社 代表取締役のデイブ森様をお迎えして、「日本と世界の外食文化論」「日本の外食産業への期待と提言」などをお話しいただきます。第1回は、English OK社についてご紹介いただきました。
「日経3世の立場で外国からのお客様に満足を提供する」
Q:まずは、自己紹介を兼ねて、森さんのご経歴を教えていただけますか?
「私は、日系3世のカナダ人です。カナダのブリティッシュコロンビア州で生まれ、バンクーバーから少し離れた小さな町で育ちました。バンクーバー島にあるロイヤルロード大学の起業マネジメントの商業学科を卒業した後、2年間オンラインによるヘルスケアの会社で働きました。4年前に日本に来たのですが、来日して3週間は、日本を知るために旅行を続けました」
「それから東京で大手英語スクールの講師として仕事を始めました。1年半講師を行った後に、義理の弟であるマーク・ビアズリーと、起業家支援を行うNPO法人「アントレプレナー・アソシエーション・オブ・東京(EA-Tokyo)」を設立しました。当時はNPO活動を行いながら、化粧品輸入会社のスタートアップを支援していました。2004年11月に、2人でイングリッシュオーケー株式会社(English OK KK)を設立しました。English OK社は、サービス業に特化して、外国からのお客様にご満足していただけるように、そのお店に合った英語のトレーニングを提供するという事業を行っています。また、それだけでなく外国人旅行客や在日外国人向けに、そのお店のプロモーションを行うために英語でサポートをするウエブサイトも立ち上げています」
「フレンドリーな日本人、閉鎖的な日本のショップ」
Q:English OK社の事業について詳しくお教えください
「基礎的な英語でお客様とコミュニケーションをとることが可能なショップには、当社のウエブサイトでそのショップ紹介を行い(ウエブ検索ディレクトリ)、メールマガジンやPRコンサルティングサービスなどを行っています。そして、英語を話すことができるショップの証明証「English OK!ステッカー」を入口などに貼っていただくことで、英語でコミュニケーションが取れるショップであるとお客様に簡単にわかっていただける仕組みを構築しています」
「マーク・ビアズリーと私は、2002年秋にリサーチを開始し、「English OK」のコンセプトを計画し始めました。私たちは、日本をもっと外国人にとってフレンドリーな国にして、訪問しやすい環境にする必要があるのではないかと痛感しました。皆さんもご存知と思いますが、2003年には国土交通省が中心となって「ようこそジャパンキャンペーン」も開始され、外国人マーケットが日本にとって大きなビジネスの場となりつつあることが伺えます。訪問しやすい環境にする必要があるのではないかと痛感しました」
「当社の設立は、2002年の秋にマークが家を探したことがきっかけになります。
彼は、東京の中央線沿線で物件を探すために15軒もの不動産店を回ったのですが、部屋が決まるまで困難を極めました。部屋を探す以前に、不動産店のスタッフとコミュニケーションをとることに四苦八苦したのです。もちろん日本とカナダの不動産業界の違いは知っていたのですが、予想以上のギャップがあったそうです。不動産店の中には、「外国人はちょっと困ります」とまでいう店もあったそうです」
「私たちの生まれ故郷であるバンクーバーは、とても国際的な街で、高校では40%以上の生徒がアジア系の生徒でしたが、何の違和感もなく接していました。また、彼は、ヨーロッパやアジアを渡り歩いたり、タイに在住した経験もありましたが、外国人を理由に断られることは無かったのです。彼も日本の血を引いていたので、非常にショックを受けたそうです」
「彼も私も、素晴らしい日本人をたくさん知っています。日本人の親戚だけでなく日本の友人もたくさんいて、多くの日本人はとてもフレンドリーで寛容であることは知っています。しかし、海外から来た人が生活をしようとすると苦い現実がある。
その経験から当社が生まれたわけです。お客様である外国人に苦い経験をさせないよう、私たちはトレーニングやマニュアルを通じて、外国人に対する対応の仕方を多くのショップにお伝えできればと考えています」
「コミュニケーションで大切なことは、言葉よりもサービスする気持ち」
Q:英語でコミュニケーションを取るコツはあるのですか?
「残念なことに、外国人に対する日本のサービス業のホスピタリティーは他の諸外国と比べると低いと感じています。その理由は、外国語に対する自信のなさにあるようです。これは、ある外国人の経験なのですが、彼が日本語で話しているにもかかわらず、外国人とはコミュニケーションが取れないと決めつけてしまった日本人もいたそうです」
「私たち外国人は、コミュニケーションで大切なことは、言葉で話せるかどうかということよりもむしろ、相手にサービスをしようという気持ちを持てるかということが重要だと思っています。だから、当社では、単に英語が話せるようになるというだけではなく、どうしたらサービス向上につながるコミュニケーションを構築できるかという視点でトレーニングをしています。英会話学校で働いていたときのノウハウも取り入れて、オリジナリティーのある内容のトレーニング方法を考案しました」
「内容としては主に、基本となる文章のエッセンスをもとに、生徒自身があたかも映画スターになってセリフを覚え、そして役を演じるように文章を学んでいただいています。これにより、自信を持って外国人に対応することができるようになるのです」
「私たちの教育方針に合った、それぞれのサービス業向けの基本的なマニュアルがなかったので、私たちは独自にマニュアルを作成してきました。最初のうちは、トレーニングをする際に現地でインタビューを行い、必要のある文章や会話を録音しながら、マニュアルを作成していきました。できあがったマニュアルは、「お客様を迎えるときの対応方法」や「サービスを提供する時の対応」「支払いの対応」など必要なことを網羅しています」
「マニュアル作成当初は、お客様であるショップに対して、協力を理解していただくだけではなく、多大なるご迷惑をお掛けするだろうと心配していましたが、予想とは裏腹に、ショップのスタッフの方々は非常に協力的で、とても喜んでいただきました。これによりそのショップに合ったマニュアルができあがっただけではなく、当社のコンセプトである「英語アレルギーの克服」につなげることができたと思っています」
「当社のノウハウや知識が増えるにしたがって、私たちは、日本にはとても多くのビジネスの可能性が眠っていることに気がつきました。今後は、日本のもっと多くのショップが英語アレルギーを克服し、外国人に対してサービスをしようという気持ちを持ってコミュニケーションが取れるようにしていきたいと思っています。そして外国人観光客に対して、日本はとても国際的な国であることをプロモーションして、彼らが訪問しやすくしていきたいと思っております」