外食産業で本格普及期を迎えた電子マネーの課題と展望 ~FeliCa営業担当が語る電子マネーの今~

外食産業で本格普及期を迎えた電子マネーの課題と展望

飲食企業・情報システムベンダーおよび関連企業が協働し、飲食企業にとって導入効果の高いシステムの構築を目指すOFSC(オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム)研究会で実施された特別講演の模様をお送りします。外食産業の特性に則して電子マネーの現状や見通しに振れるなど、導入に際しての参考となる講演でしたので、OFSC研究会様、ソニー株式会社様のご協力により、当サイトにて特別に公開させていただきます。※本文中、敬称略とさせて頂きました。

第6回 外食産業における電子マネー導入にあたっての課題と検討(3)

【 4.決済端末の導入 】
4.決済端末の導入

端末導入のポイントを 6 点挙げてみました。ポイント1で共用端末を選択する場合は、対応する電子マネーが複数あるということですので、前回述べましたように、一体どのサービスをお店で利用するのかという判断に関係してきます。ポイント 4 は、 POS でのオペレーションと端末がうまくつながっているかを精査する必要があるということです。ポイント 5 は、機能の拡張性について確認するという意味です。現在は、例えば、 iDEdy でサービスを始めておいて、後から Suica にも対応するというのが技術的に可能になっています。ですから、導入時点ですべてを決定しておく必要はありません。各サービス事業者と手数料等の交渉を続けながら、決まったところから導入していくことも可能ですので、拡張性を検討する必要があるのです。ポイント 6 は、電子マネーを共用端末で使った場合、いずれにしても最終的には店舗の売上データを各マネー業者のサーバーに上げなければいけませんので、さまざまな種類がある接続方法を検討するということです。

【 サーバーとの接続について 】
サーバーとの接続について

チェーン展開されている店舗における代表的なサーバーとの接続例を挙げてみました。 POS 連動型の場合には、各店舗のストアコンピューターから中継用サーバーにつないで、その上で各電子マネー業者のサーバーに接続し、売上データを渡すという上りのパスを確保する必要があります。先程、後から Suica サービスを追加利用できるといいましたが、その際には、端末側に Suica にアクセスする情報を持たせる必要があり、これを下りのルートで実現します。オンラインでサーバーから店側に情報をダウンロードさせます。

このサーバーは、日本全国で統一されたサーバーがあるというわけではありません。大手コンビニなどでは、ある SI'er (システムインテグレータ)にサーバーを持ってもらい、そこを利用するといった形にしています。このサーバーは、他の加盟店も使えるため、プラットホームのような使い方をされますが、サーバー自体に統一の仕様がありませんので、いろいろなサーバーが複数並んでいるのが現状です。 NTT ドコモJR 東日本は、 iD と Suica の組み合わせによる加盟店開拓をされていますが、この場合の接続サーバーは、 JR東日本とNTTドコモが共同で設立するLLP(有限責任事業組合)が運営するものになりますので、 、そのシステムへの対応が必要になります。それぞれの利用形態に応じて、各企業がサーバー接続を検討する必要があるのです。

【 7.オペレーションの統一 】
7.オペレーションの統一

複数サービスを運用するときには、店舗でのオペレーションにも多くの課題が出てきます。サービスによって決済できる上限額が違うことからも問題が発生するでしょう。仮に、食事に 1 万 5000 円掛かった場合、 NTT ドコモのサービスである iD の「 DCMXmini 」は月額 1 万円ですから、決済できないということになります。お店のオペレーターは、どの決済方式なら対応できるかを予め理解をしておくか、少なくとも画面で確認できるようにしておかなければ、お客さまもオペレーターも混乱すると思います。

通称 MOPPA といわれている業界団体・モバイル決算推進協議会では、 POS レジ画面の階層構造などオペレーションの統一を図ろうとしています。他にも、特定のサービスが優先的に決済されるのは好ましくないということで、カードをかざしたときに決済できるサービスが一覧表示されて、その上でお客さまにどれで決済するのかを聞くような形にしようといった端末の標準仕様も定めています。また、レシートへ決済サービス方式を明記するといったガイドライン的なものも検討されています。しかし、残念ながら、 MOPPA に加盟していない決済サービス事業者もありますので、完全に日本全国共通の仕様ではありません。こういった点を考えると、実際の店舗におけるいろいろなケースを想定して、運用手順書のようなものに落とし込むといったことが、どうしても必要になるのではないかと思います。



渡辺 圭一

渡辺 圭一

http://www.sony.co.jp/Products/felica/

ソニー株式会社 FeliCa 事業部門 営業部 統括部長

1981 株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル(株))入社
研究開発部、時計設計部を経て外食産業向けオーダーエントリーシステムのSE業務等を担当。

1991 ソニー株式会社 入社
自社製業務用機器(コンピュータおよびAV機器)の法人向けシステム・セールス、営業推進を担当。

1997 非接触ICカード技術 FeliCa関連製品のセールスに携わり、現在に至る。

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