外食産業、ホテル、フードビジネスなど、「食」関連に特化した広告代理店の株式会社F&Rセールスプロモート。代表取締役社長の藤井俊之氏は、昭和40年(1965年)に創刊された「週刊ホテルレストラン HOTERES」の創刊メンバーである。以来40年以上の長きに渡って外食産業を見続けてきた”歴史の証人”ともいえる藤井社長の協力のもと、外食産業の歴史を深掘りして行きたいと思う。
なお、藤井社長には別の機会にあらためて、外食企業に対するセールス・プロモーションについてご登場いただく予定である。
創刊時の逸話と言えば、ある日突然、見知らぬ人が 「 ここがホテレスをやっている所か! 」 と訪ねてきたんですよ。 「 どんな奴がこの本を作っているのか見に来た 」 と言うんですよ。最初はなんかのクレームかなと思ったのですが、この方がロイヤル創業者の江頭匡一さんだったのです。
江頭さんいわく、「 僕は、日本でこういう雑誌を何故作らないのかと思っていた。自ら作ろうかと考えていたところなんだ。こんな良い雑誌をよく作ってくれた。だから作った人間の顔を見たくてやってきた。 」 と仰るんですよ。わざわざ九州の福岡からですよ。
あとは、企業ランキングですかね。いまでは、日経 MJとか各社から外食企業のランキングが毎年出ていますが、これを最初に始めたのもホテレスなのですよ。それが、昭和42年(1967年)のことだったかな。
ある時、米国の雑誌のフォーチュンだったかな、を見ると企業番付が載っているわけですよ。「 よし、ホテレスでもこれを “ 日本の外食企業の100 ” でやろう 」 とはじめることを決めたのですが、ここからが大変。集めようと思っても100社分も集まらない。何とか50社くらいのデータは集まったんだけど、それ以外のデータが全く集まらない。そりゃ公表していないから、どこにもデータなんて無いですよね。仕方がないから目ぼしい企業に電話で問い合わせをするんだけど、どこも教えてくれない。地方の新聞に載っている会社にも当たりをつけて電話をしたりするんだけど、なんかの売り込みと間違えられたりして教えてくれない。本当に大変でしたよ。
最後の100社目は友人に電話して、「 君のところはどのくらい売上を上げているんだ? 」 「 1億円くらいかな 」 「 よしわかった 」 と、それを載せたくらいですよ。確か1億1千万円くらいにして載せたのかな。今だから言えるけど、相当いい加減なランキングだったですよね。
この企業ランキングを載せた後が、これまた大変だったんですよ。バンバン会社の電話が鳴ってね。何の電話かって言うと、クレームの電話なんですよ。「 うちの会社は、この会社より売上が大きいぞ。何で載っていないんだ。 」 なんてね。電話で教えてくれなかったのに、いい加減なものですよね。でも翌年の掲載もあるから、「 はいはい、申し訳ございませんでした。ところでいくらの売上ですか 」 と聞き出しましたよ。そうしたら、翌年には100位が10億円くらいの会社になってしまって。友人の会社は1年間で吹っ飛んでしまいましたね(笑)。
それ以降、色々とデータが集まってきてかなり正確なランキングになってきましたね。
それと、今度は、感謝の電話がかかってくるようになったんです。『 従業員が 「 うちの会社はこんなに大きかったのか 」 「 もう少しがんばれば何位になれるぞ 」 などと言ってモチベーションが上がった。ありがとう 』 なんて言う内容の電話でしたね。
飲食業も今では、飲食産業、外食産業といわれるようになりましたが、実は、「 外食産業 」 と最初に主張したのは 「 ホテルレストラン 」 誌だったのですよ。まず思ったのが、大学を出て就職しても認められる業界にしたいと言うことなのです。当時は、飲食店で働いていると言うことを恥ずかしくていえないというような風潮がありましたから。だから、東大を出て飲食業に勤めるような人間が出て欲しいと心から願っていました。そのために自動車業や重工業などの製造業や他の産業と同等に社会的地位と知名度を認知してもらうには、飲食業も産業だと主張することが業界発展に繋がり、飲食業で働く人々の意識改革を促すことになると考えたからなのです。心底、その事を、誌面で主張したことを 40年経った今では、誇りに思えますね。
藤井 俊之
アパレル企業を経て、昭和40年(株)オータパブリケーションで、週刊ホテルレストラン(現)の創刊に携わる。その後、広告代理店の専務取締役を経て、昭和47年F&Rセールスプロモートを設立し、代表取締役就任。
現在は、社業の他、地元葛飾区で各種団体役員を務め、地域の活性化に力を入れる。
株式会社F&Rセールスプロモート
外食産業、ホテル、フードビジネスなど、「食」関連に特化した広告代理店。
「食」全般に渡り、お客様の効率的かつ効果的な販売促進をトータルにサポートしている。
文: 斉藤栄紀