フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み ~電化厨房が変える作業環境

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境

現代フランス料理の祖、オーギュスト・エスコフィエ。彼の功績は料理の創作だけではなく、調理法の合理化、料理場の革新的な設計や衛生管理、料理人の労働環境改善と地位向上に尽くしたことなども挙げられる。
日本エスコフィエ協会も彼の遺志を継ぎ様々な取り組みを行っている。その中で一早く電化厨房の施設を取り入れその普及に取り組んでいる。今回は日本エスコフィエ協会の向佐勝シェフと伊藤彰彦事務局次長に話を伺った。

第2回 日本エスコフィエ協会の取組み ~職場環境の改善(1)

第2回 日本エスコフィエ協会の取組み ~職場環境の改善(1)

日本エスコフィエ協会 ホームページ1971年に発足した日本エスコフィエ協会日本支部には、小野正吉会長の他、故村上信夫 元帝国ホテル総料理長など25名の料理長が参集した。食材も道具も今のように揃わない時代であったが、個々の利害を超えて一致協力し、勉強会の開催、フランスへの料理視察研修の実施など日本における正統なフランス料理の普及と発展に尽くしていった。そして、いまや1,900人近くの会員を擁するまでになった。

エスコフィエの遺志に沿った活動を行っている日本エスコフィエ協会は、2005年に画期的な取り組みを始めた。電化厨房の普及と発展のための活動である。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 向佐シェフ 】 協会が電化厨房の施設を取り入れ、その普及に力を入れているのは、まさにエスコフィエの考え方と合致しています。当時は石炭やガスといった燃焼式厨房の時代でした。「 料理は時代とともに変化する 」 というのは有名なエスコフィエの言葉ですが、まさにこのことなんですね。世界中が温暖化という大きな問題が出てきて、CO2の削減などに取り組んでいるじゃないですか。では、我々料理人がそれに対して何ができるのか?と考えると自分たちが働いている職場を変えていくことが一番の近道だと考えました。燃焼式中心の厨房施設から電気中心の厨房施設に変えていくこと。そうすることによって環境問題に対応して行く。これに対して私たちが声を出していかなければならないと言うのが基本的な考えでした。

電化厨房は、厨房内の室温を快適な温度に保つことができる。一般的に燃焼式調理器を使った厨房内の室温は体温を超えるような環境となり、料理人の疲労感も高いものになりがちである。それに対して、電化厨房を使った厨房内の室温は、厚生労働省が推奨する室温25℃、湿度80%以下の確保が容易と言われている。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 向佐シェフ 】 エスコフィエの取り組んできたことの一つに “ 労働環境の改善 ” があります。電化厨房はまさにこれができる設備なのです。具体的に申上げますと一つが ” 暑さ ” 対策ですね。ご承知の通りレストランの厨房内は、物凄く暑いのです。室温が40℃を超えるのは当たり前ですね(笑)。特に繁忙時間帯は40℃どころではないですよね。

中軽井沢にあるホテルに毎年夏になると数名がヘルプとしていきます。一般的には猛暑を避けて避暑地で働けるなんて羨ましいと思われるでしょうが、とんでもないんです。厨房内は物凄く暑くて、汗がぽたぽたと流れ落ちて、水分と塩分が不足してしまうくらいなのです。私たちは独自のドリンク、水と塩と蜂蜜やレモン入りの、今で言うスポーツドリンクみたいな物を作って飲みながら仕事をしたものです。それくらい環境が悪かったですね。

今では笑い話ですが、夜汗だくで仕事が終わった後に仕事場を出ると今度は涼しいんですよ。涼しいどころか寒くて、シャワーにも入れないくらいなんです。この時に 「 あぁ軽井沢に来ているんだ 」 と実感しましたね(笑)。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境さらに、電化厨房は、油煙や煤(すす)といった労働者の健康に害を及ぼす物質をほとんど排出しない。つまり綺麗な空気といった清潔な環境下で作業を行うことができるのである。

【 向佐シェフ 】 私は15年前に気管支炎になったのですが、調理人の多くは気管支炎や鼻炎を患った経験があると思います。煤だけでは無く、目に見えにくい油などが混じった汚い空気をダクトの強い風が、かき回してしまい調理場全体に回ってしまうんです。そういう空気を長い間、特に疲れている時に吸ってしまうと、気管支炎や鼻炎になってしまうのです。季節や陽気の変わり目になると鼻をずるずるやっている人が結構いますよ。



日本エスコフィエ協会

日本エスコフィエ協会

http://www.escoffier.or.jp/

初代会長・故小野正吉(ホテルオークラ総料理長)が中心となり、日本の現代フランス料理の草分けともいえる25人の料理長が集まり1971年に創設。

近代フランス料理の祖オーギュスト・エスコフィエの弟子たちにより”エスコフィエが確立した近代料理術と伝統の継承と発展、調理技術の再教育などを目的としてフランスで設立されたエスコフィエ協会”の精神を基に、現在では、5代目の浅野和夫会長(マキシム・ド・パリ顧問)のもと、2007年9月に文部科学省から「社団法人日本エスコフィエ協会」の認可を受け、約1800名の会員の所属する協会として幅広い活動を行っている。

取材協力 担当シェフ 向佐勝氏(元ホテルオークラ、赤坂迎賓館総料理長)
事務局次長 伊藤彰彦氏

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