インクジェットプリンターの「カラリオ」など、一般的にはコンシューマ製品のイメージが強いエプソンであるが、飲食業や流通小売向けプリンターなど業務用製品にも豊富な実績がある。POSに付属するレシートプリンター、オーダリングの一部であるキッチンプリンターにおいては、世界的な企業なのである。日本の飲食業における店舗システムがかかえる問題点を探りながら、エプソンの業務用プリンター事業に焦点をあててみる。
-貴社のプリンターは飲食店でどのように使われていたのですか?
国内の飲食企業様にも早くからお使いいただきました。TM-930が米国大手百貨店シアーズに採用された翌1993(平成5)年には初期のサーマルレシートプリンターのTM-T80がOEM(※1) で日本の大手FFチェーンにも採用されました。その後、レシートプリンター市場は大きく育つことになりますが、この背景としては電子ジャーナル化が進んできていたことがあげられます。ご承知の通り、以前はお客様用のレシートと店舗保存用ジャーナルをダブルで印刷する必要がありましたが、電子ジャーナルの普及によって店舗保存用ジャーナルは電子データとして保存し、お客様用レシートだけのシングルステーションでよくなったわけです。この時流に乗って、現在当社で一番売れている 「 TM-T88 」 シリーズが飲食店様に採用いただけるようになりました。
-レシート用プリンターが順調に販売されている時に、POS本体のビジネスを始められた経緯をお教えください。
時期的には1995(平成7)年で、国内ではまだ専用POSが主流でしたが、PC-POSの普及を目的にマイクロソフト社を中心としてOPOS(Open Point Of Sales)技術協議会が発足、POSの周辺機器やアプリケーションプログラムを簡単に繋げられるように標準化を進めました。いわゆるオープン化というものですね。当社も賛同して、その標準が使えるPCベースのPOSを普及させたいとの思いからPC-POSを世に送り出しました。これが 「 SASPORT 2000 」 という機種で、現在のSASPORT(サスポート)シリーズの最初になります。今となっては懐かしいWindows3.1と95の二つのバージョンがありました。
その際に 『 パソコンPOS宣言 』 をして、全国を回ってプライベート展示会を行ったり、リテールテック・ジャパンの前身であるSAショーで謳ったり、新聞にも告知広告を出したりして大々的にエプソンとしてPOS事業をやるという意思表示をしました。
-PC-POS普及のために、具体的にはどのような販売形態をとられたのですか?
PC-POSだけではなくプリンターに関しても同様ですが、当社だけの力ではなかなか市場が広がらないとの考えからSI(System Integrator)企業とパートナーシップを組むことによってビジネスを推進してまいりました。つまり、当社はハードウェアサプライヤーとしてPOSやプリンターをパートナーのSI企業に提供し、SI企業が独自のアプリケーションソフトあるいは外部のアプリケーションソフトを利用して、飲食業のお客様にソリューションを提供し、保守を行うという形です。
当社のグループ会社にも、SI機能を持った エプソンiソリューションズ株式会社があり、ソリューションのご提供をすることも可能です。当社自身はソリューションを持っていませんので、それを補完するのがエプソンiソリューションズというわけです。お店のシステム化で悩まれている飲食店のお客様がいらっしゃいましたら、是非エプソンiソリューションズにご相談いただければと思います (笑)。
※1 OEM(Original Equipment Manufacturer)は、他社ブランド製品の製造
エプソン販売株式会社
代表者 平野精一
本社 新宿区西新宿6丁目24番1号 西新宿三井ビル24階
設立 1983年5月20日
事業内容 情報関連機器卸売(プリンター、カラーイメージスキャナー、パーソナルコンピューター、液晶プロジェクター、パソコンPOSシステム、各種ミニプリンター等)
取材協力 BS・SD営業部 部長 細川雅弘氏
1962年生まれ。1988年エプソン販売に入社。
大手メーカーSierを担当する営業部門に所属し、アライアンスビジネスを構築する。現在、外食産業を含む特定業種に特化したビジネスを推進。業務用の小型プリンター(レシート・キッチンプリンター・ラベルプリンター)等の積極的な販売を促進している。