お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作り ~ベンダー&コンサルタントに学ぶシステム構築の近未来~

お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作り ベンダー&コンサルタントに学ぶシステム構築の近未来

エプソン販売株式会社主催のビジネスセミナー「第9回店舗経営戦略フォーラム」において、「お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作りとは…」と題したパネルディスカッションが行われました。外食コンサルタントで当サイト論説主幹でもある坂尻高志氏をコーディネーターに、情報システムベンダー企業の皆様をパネリストに迎え、売上確保から客数増大につなげるシステム構築について掘り下げたディスカッションの内容をエプソン販売株式会社様のご協力により公開いたします。

第3回 目標を達成するシステム構築の第一歩はすべてのギャップを取り払うこと

齋藤
システム構築の目標を外食企業とシステムベンダーが共有化すべきという意見が聞かれましたが、成功例や失敗例など体験談を交えて皆さまの意見をお聞かせください。

桜井
システムを導入するときに、お客様から RFP(提案依頼書)をいただくのですが、こういう機能がほしいと書かれていても、そもそもの目的がない場合があります。 導入すれば何が変わるのかという点、おそらく現在社内でもまれているような問題点が欠落しているのです。

機能を作れといわれれば、我々はベンダーですから作りますけど、何のためにそれが必要なのか分からないままSEが作ってしまうわけです。できあがってから、“そういう使われ方をするのなら、こういう風に作ればよかった”と判明してもどうしようもないでわけです。今回のシステム導入で何が変わるのかという社内議論を共有させていただき、一緒に作らせていただくことが非常に重要だと思います。

それから、目的意識が薄い場合は、システムを入れ替えるにあたっての現場の問題点や課題があまり整備されていない例が多いように思います。経営層の目的とのすり合わせができていない状態です。

あるお客様のシステム管理者から、店長の発注が適当過ぎるので、仕組みで発注予測を掛けて精度を上げたいといわれました。お菓子を発注するシステムですが、お店は多く誤発注すると捨てなければいけませんから、廃棄は減らせと指示されている。

ところが工場は、たくさん作れと言われているので、生産能力を目一杯使って作ります。そして、物流は、なるべく一回に効率よく運べと言われている。お店では38個しかいらないが、工場は100個作れる。物流はひとつのロットに60個入る。間を取って物流効率で60個にすると、お店で22個を捨てるわけですね。 これでは、生産と物流と店舗に出している目標感がバラバラです。

どれもやらなきゃいけないことですが、どれを重視するかというプライオリティを決めないでいるために、物流を優先したシステムにすると他の二者からクレームが来てしまうわけです。期待して導入したシステムがギャップになってはいけません。そういう目標をひとつずつ設定する必要が大前提だと思います。

坂尻
最終的に決めるのは、どこだったのですか?

桜井
結局、それを最後まで教えてもらえませんでした。システム担当が、ちゃんと理解してジャッジしないとシステムもおかしくなりますという話し合いで終ってしまいました。

齋藤
ということは、ここにいらっしゃる他の3社さんにも、その企業のシステムを獲得できるチャンスがあるというわけですね?

桜井
…はい、余計なことを言ってしまいましたね(笑)。

飯島
弊社のシステムを導入しながら上場していかれた企業が多数ございまして、その経験からお話をさせていただきます。当然ですが、上場を目標としてシステムを入れ替えるということと、老朽化したから入れ替えるという場合では、まったく最終目標が違います。

株式公開企業は、四半期ごとの業績開示、計画と予測の開示、予算対比といったものを義務づけられていますから、システムに求められる点で一番簡単なのは POSデータの活用です。

計画と予測の部分では、予算を元に店舗の損益、予算対比を速やかに開示する義務があります。店舗の店長など責任者の方がコストをコントロールしていただければいいのですが、現実には月末間近になって人件費の5%がおかしいと気付く。オーバーした5%を月末までに元の予算に戻せと言われても当然無理です。

大事なことは、日々の店舗損益、予算対比を求められる仕組みが存在することと、そのシステムを運用する人間がいることにあると思いますが、これは理想に過ぎません。本来であれば、店舗の経営者という意識を店長が持っていれば、店舗損益を日々気にかけていただけますが、現実はまったく気にしていません。

ですから、経営者の方が求められる店舗日々損益を達成することと、店長さんの意識にギャップが生じて、どうしてもシステムがうまく立ち回らないということになったのです。

速水
ベンダー、経営層、情報システム部門、店舗それぞれにもギャップがあります。例えば、本部で客層データを取りたいという目標があったとします。

私どもが何をするかというと、データが取れるように客層を必須入力にしましょうと提案します。入力しないと次に進めませんから必ず打ち込んでくれますが、お店で正確な客層を入れていない場合が非常に多いですね。

お店は忙しいですから、来店した方々をさばくことの方に集中します。客層を取ることが、どれだけ大事なのかということが分かっていないと正しく入力しないですよね。正しく入れたからといって、得をするわけでなはないという思いがあって、本部や経営者とのギャップになるのです。

それをどう埋めるかというと、例えば、本部から客層データをお店に戻すとか、こうすることによって確実に売上に効果が出る、といった目標と成果のフィードバックによる共有化で埋めていくのです。



  1. 司会 齋藤栄紀 「外食ドットビズ」編集長
  2. コーディネーター 坂尻高志氏 外食コンサルタント
  3. パネリスト
    飯島真一郎氏 株式会社ブレーン・カンパニー 営業部マネージャー
    桜井謙一郎氏 クオリカ株式会社 ソリューション事業部 セールスマネージャー
    速水桃子氏 株式会社メディアミックス マーケティンググループ マネージャー
    宮川充氏 日本リテイルシステム株式会社 飲食営業担当 課長
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