飲食店に求められるものは味だけではありません。レジで混まないスピーディーな会計、小銭のいらない利便性など、新時代の顧客満足を探るために「電子マネー」を学んでみたいと思います。
近頃、よく見かけるようになったこんな光景、
~カードや携帯電話をかざすだけで、駅の改札をスムーズに通過。
カードや携帯電話をかざすだけでコンビニエンスストアでの支払いがあっという間に完了~
このような“かざす”というアクションだけで認証や決済を行うことができ、様々な分野で新しいライフスタイルを生み出しているのは、「 FeliCa (フェリカ) 」と呼ばれる非接触 IC カードの技術方式です。
第1回目は、この「 FeliCa 」についてご説明しましょう。
FeliCa とは、「 Felicity (至福)」を語源とする造語で、エスペラント語で「幸せな」という意味もあります。ソニー株式会社が 1988 年より開発を開始しました。
国内では既に、JR 東日本の交通乗車券「 Suica (スイカ)」、JR 西日本の「 ICOCA (イコカ)」や電子マネーサービス「Edy (エディ)」などで採用されています。一方、日本以外でも香港、シンガポール、中国・シンセン、タイ・バンコク、インド・ニューデリーなどで交通乗車券や電子マネーとして利用が進んでいます。 カードや携帯電話に搭載されている FeliCa IC チップの出荷累計は、約 1 億 4000 万個に到達しました。( 2006 年 7 月時点)
FeliCa 技術がこのように、人口が密集したアジアの都市において採用が拡大しているのは、下記のような理由があります。
● かざすだけの利便性
非接触の IC カードは、読み取り機への抜き差しが不要で、かざすだけで瞬時にデータを読みとり処理することが可能です。カードと読み取り機の処理は、約 0.1 秒という短時間で完了します。その為、混雑の激しい大都市での交通乗車券や、スピーディな処理が必要なコンビニエンスストアやファーストフード店等での決済に非常に適しています。また、繰り返し利用することができるので、環境にも優しいシステムです。
● 高いセキュリティー
昨今、磁気カードの不正利用や偽造、変造が社会問題化しています。 FeliCa カード上の IC チップには、演算処理ができる CPU (中央処理装置)とメモリなどが搭載されており、偽造・変造を防ぐ仕組みを備えています。さらに、カードと読み取り機との情報のやり取りでは暗号技術が用いられ、厳重な方法でデータの安全性を向上させていますので、信頼性の要求されるさまざまな用途に利用することができます。
● 多機能化
電子マネー、ポイント、社員証などの複数の機能を 1 枚のカードで利用することが可能であることも大きな特長の一つです。例えば、電子マネーの利用に応じてポイントを加算するなど、カード内の別のアプリケーションと連携することもできます。
交通乗車券、電子マネーとしての利用が先行し拡大してきましたが、このほかにも会員証、ポイントカード、社員証、学生証、マンションの鍵などの多様なサービスにも展開されています。
また、カードの他にも FeliCa の IC チップを搭載した「おサイフケータイ」の登場が、話題を集めています。
第2回目では、おサイフケータイとその広がりについてご紹介いたします。
ソニー株式会社 コアコンポーネント事業グループ FeliCaビジネスセンター
http://www.sony.co.jp/Products/felica/
ソニーの取り組みとFeliCaの利用拡大
1988 宅配便の物流用タグとして開発をスタート
1989 鉄道総合技術研究所と一年間の電車乗車券共同研究
1997 香港オクトパスカードサービス開始
2001 ビットワレット電子マネーEdy 本格稼動
2001 JR東日本 Suica開始
2003 JR西日本ICOCA開始
2004 NTTドコモ おサイフケータイ発売
2005 KDDI, ボーダフォン おサイフケータイ発売
2005 FeliCaチップの出荷が累計1億個を突破
2006 郵便貯金カードにFeliCa採用