外食ドットビズは、2006年にサイトオープンして以来、4月16日に2周年を迎えることができました。その記念と致しまして、いつもの特集とは趣向を変えて、サイトメンバーによる座談会をお伝えしたいと思います。設立時からのテーマである“よみがえれ!外食産業”の一環として、外食ドットビズがこの業界に果すべき役割について、突き詰めていきたいと思います。
【斎藤】 最後のテーマとして、3年目以降の課題として、外食ドットビズの外食産業における役割とは何か、これからやっていきたいことを語ってもらいたいと思います。
【前城】 自分が外食産業にいる時には、インターネットというアイテムがありませんでした。会議で他の店長の話を聞くとか、管理者養成セミナーを受ける程度しか情報を取る手段がなかったんです。今でも取材でいろいろな方のお話を聞くと、とても面白いですし、外食業界で働いている時に聞ければ良かったなと感じています。成功した人の自慢話かもしれないですが、何かどこかで今後の自分の人生にも活用できるだろうと思っています。サイトを見ている皆さんが、そういう目線をもってくれる場所にしたいと思います。
【斎藤】 それに向けて、自分がしようと思っていることは何でしょうか?
【前城】 飲食店は、人に一番近い産業ですよね。働いている側としても、人として接する部分が面白いし、お客さんがまた自分の店を選んでくれる要因にもなる。働く側の人間性を上げるという面で、何かしら吸収できるサイトにしていきたいと思います。賛否両論あっても、いろいろな話を発信していきたいと思います。どんな情報でも、誰かのメリットになる情報だと思って発信したいです。例えば、坂尻さんをキャラクター化したイラストも、誰かが笑ってくれて、元気になってくれるかもしれないと信じています。
【貝田】 僕も同じ意見ですね。勝手な思い込みかもしれませんが、“ お金をもらってコンサルタントをしているわけではないサイト ” と開き直って文章を書いています。だから、正答を出すことよりも、解答案や解答例を数多く出していくことが必要ではないかなと思っています。店によって問題点は違うわけですから、正答は出せないのが現実じゃないのかなと感じるんです。解答例をたくさん出すことで、働く人々がヒントになるものを得てもらえるようにしたいと思っています。
【斎藤】 では、カメラマンの豊崎さんどうぞ。
【豊崎】 カメラマンにとっては、難しい話の流れになっていますね…。優等生的な答えかもしれませんが、成功した人の話を聞いていると、楽しいことをやってきたから成功したんだなと思うんですよね。自慢話じゃなく、憧れの人として見てもらえるような写真を撮れればいいなと思います。
【斎藤】 皆さん、嫌な顔ひとつせずに話をしてくれますよね。
【貝田】 無償でお願いしているのに、楽しそうに話してくれるって凄いことですよね。何のメリットも無いのに後輩のために依頼を受けてくれている。それが接客業の基礎なのかなと思いますね。
【豊崎】 これから店をやろうとしている人にとっての 「 憧れ 」 という形でたくさんの先輩を見せていきたいですね。
【斎藤】 サイトを見ている人がそれを感じ取ってくれたら嬉しいですね。
【永江】 私は、サイトを大きくしたいです。大きくなるといろいろなユーザーさんが出てきて、その中には、運営側の立場ではない人たち、バイトで働いている人たちも出てくると思います。そういう人に向け、そこで何かを得る、学べる情報があるサイトになれればいいですね。店のレベルは上がっているという話が前に出ましたが、それはマニュアルのレベルが上がっていることだろうと思います。でも、実践するのは人間ですから、バイトの意識が高くなることが大事です。店長が理想を掲げてもバイトが実践できなければ、お客さんにとっていいことはないですよね。外食でお客さんに最も近いところで働く人々を底上げできるようなサイトになったらいいですね。
【斎藤】 さすが、ロッテリアで 8年も働いて店長よりも偉くなった経験の持ち主ですね。では、そのためにはどうすればいいですかね。
【永江】 もう少し、コミュニティーサイトが…(笑)。
【貝田】 記事としては、「 これから外食産業でバイトを始める方へ 」 というコンテンツもありかもしれないですね。マニュアルではなく、常識の部分というか…。起業する人だけではなく、バイト向けのアドバイスもあれば底上げになるかもしれないですね。
【永江】 やっぱり、外食店で心に残る出来事というのは、マニュアルにはないことが多いです。自分のことを覚えてくれていて、あ・うんの呼吸で料理が出てくるとか。私がバイトをしている時も、「 あのお客さんはコーヒーにシュガー1本とミルク2つを出すんだ 」 という情報を共有していました。挨拶をした方がいいお客さんとか、黙ってミルクだけを出す方がいいとか。これはマニュアルではないですよね。
【坂尻】 そういう議論がアルバイト同士でできるというのは、すばらしいサービスの質ができている店だと思います。
【福本】 個人的な感想ですが、あらゆる意味で外食産業は 「 専門家 」 人口が減っているという気がしています。間口は広くないかもしれませんが、情報提供・交換を通じて、「 専門家 」 の育成に役立つサイトにしていきたいと考えています。
【斎藤】 具体的には、どういったことをやっていきたいとお考えですか?
【福本】 いろいろな形があって、まだはっきりとしていない部分も多いのですが、私の勝手な考えでは、「 専門性 」 を際立たせる情報の中身を充実させていきたいです。経営、開発、管理、営業、テクニカルそれぞれの分野で中身を濃くしていくこと、洗練された意見交換が実現して、サイト構築とコミュニティーが好循環すればいいなと考えています。方向性を決める題材としては、例えば各種の専門家集団と企業家を結びつける仕掛けや、最終的にはビジネスマッチングになるのかもしれませんが、そのような仕組みづくりも必要かなと感じています。あとは、やりたいことですが、 SaaS (Software as a Service) のような形でも、ダウンロードでもなんでも良いのですが、外食企業・飲食店の計数管理や販促・マーケティングに役立つ便利なツールを、あらゆる企業から登録可能にして募り、一般提供することが実現すれば、われわれの実ビジネスとしても展望が開ける可能性があると思っています。そんなに都合よく進まないと思いますが、いつか実現したいです。オープンサイトとしてやりきれていない部分もたくさんあり、まだまだ検討を重ねている段階です。
参加者(外食ドットビズ編集部)
前列(右より) 外食ドットビズ編集長・斎藤栄紀(40代中盤)/外食ドットビズ運営会社社長・酒美保夫(50代中盤)/論説主幹・坂尻高志(50代後半)
後列(右より) カメラマン・豊崎淳(30代前半)/ライター・貝田知明(30代中盤)/システム作成兼特派員・福本龍太郎(30代中盤)/デザイン担当・前城幸代(30代中盤)/「食のコミュニティサイト」担当・永江慶太(30代中盤)
文: 貝田知明 写真:トヨサキジュン