このお客さんはとりあえず、「DM打つんだー!」から始まった。
2000年から営業のアプローチをさせてもらって、当社のシステムを2003年に導入した。2004年には、5、000通ものDMを一気に出し、そのDM効果分析を私どもでやってみた。
効果測定を行うに当たり、次の項目に着目した。
①上位の顧客について
5月に来店したお客さんが68%来ている。4月はDMなしで70%だった。上位のお客さんは、DM効果ではなく、いつも来ていることが分かった。
アドバイス→上位の顧客の顔は分かっているから、ちょっと小皿をサービスすると喜ぶ。ただ、工夫は当然必要です。わざとらしく、「いつも来てくれるから・・・」などは面白くない。「今日ちょっと切り身が余ったので、2切れだけど食べますか?」なんて言われるのはうれしいかも。
②4ヶ月以上来ていない顧客について
17.8%の顧客が来て、266万円使っていることが分かる。
実はこの17.8%の人たちは、また来るかもしれません。多分、50%の人は再来店の確率大です。そうすると、会話の仕方も変わるはずです。
効果もこういう風にセグメントでの分析をされてみてはいかがでしょうか?それと、こんなことも分かりました。DMを積極的に出している店舗と出していない店舗では、売上UPが違います。積極的な店舗は、やはりモチベーションが高く、入会促進も積極的に行います。それで、売上上昇率や顧客の固定化にも有効になっています。
DMに消極的な店舗は、常連さんが多く、出しても無駄だろうと考えているから淡々と仕事をしています。すると、何が起こるかというと新規客が来ない。所謂、売上が下がる傾向にあります。このお店の顧客一覧で、上位を見てみると、単身赴任者が多いそうです。だから、時間が経過するとまた転勤になります。要はその間に関係を作り(これは出来ていました)、そこから新規が生まれる仕組みが必要なのでしょう。手段としてDMや会話なのです。それが分かってくると積極的になるのでしょうが、人間なかなか今やっていることに負荷が増えるのは、嫌がる傾向にあります。
面倒なことでも少しずつ行っていく、それが売上につながってくるのではないかと考えます。自分が面倒だからではなく、お客さんにどうしたら喜んでもらえるか?そんなことを考えて、実行する店が生き残っていくのだと思います。
私は学者でも研究者でもありませんが、私がお客さんの立場の視点から、各業界で感じることがあります。所謂「顧客心理」です。それを次の章で話をしましょう。
私は、仕事柄、極力お客さんと食事をしに行くし、家族で行くことも多いのです。先日のことですが、あるレストランで「お客様の声」というアンケートがありました。私はこのレストランを年3回くらい利用しています。
味・接客・待ち時間など通り一遍のアンケートがあり、意見という欄があったので、書いてみました。「クレジットカードが使えるようになりませんか?」「ポイントカードサービスはしないのですか?」これは仕事柄ですが。この2つを書き、店員に渡しました。
いろんなお店で、よくアンケートを書くのですが、DMが来るのは3割程度だと思います。それ以外は多分倉庫の箱の中に詰まっているのでしょう。
1週間位経ってDMが来ました。内容は、「ご意見ありがとうございました。また、スタッフ一同ご来店をお待ちしています。」この文面に、スタッフの写真が印刷されていました。スタッフの顔が見えるのは、とても良いと思いますが、私の意見の答えは載っていないのです。
例えば、「お客様からクレジットカードを使用出来ないかとの意見がいくつかありました。検討していますが、導入までには至っていません。ご不便お掛けしますが、導入は未定になっています。ご了承下さい」など、意見に対する答えを、採否にかかわらず回答したほうがいいと思うのです。
顧客心理として考えて見ましょう。
ある時、「皆で食事に行きましょう」となったとき、私は人数や料金などのバランスに合ったお店を、今までに行ったお店を思い浮かべて、その中から選びます。新規の店を携帯で探す場合もありますが、なかなか探しにくいので、既存の店が多い気がします。
では、ついて来る人達にとって、その店はどうなのでしょうか?新規の方が多いのでは?
その人達は、さて2回目に来るでしょうか?何を基準に来ると思いますか?これは、さっきの“今まで行ったお店を思い浮かべる”中に含まれているのです。そのお店のイメージが良いか/悪いか、味は美味しいか/まずいか、判断基準は皆さんそれぞれに違うとは思いますが、いかがでしょうか?
自分が、いつの間にか人に連れて行ってもらったお店の常連になっていることはありませんか?このようなことが顧客の心理としてあるのです。
ただ、こんなこともあります。
私も20代前半は、安い店をと思い、チェーン店の居酒屋に行っていました。しかし、20代後半からちょっと洒落た居酒屋に行き、30代前半には小料理屋さんに行くようになる。これは、人間として年をとっていく上で、食べる内容や雰囲気などを要求するようになって来たからでしょう。このように、顧客の嗜好には寿命があるということです。
今来ているお客さんから、次に繋げていくプロモーションを考えないといけません。それは何かというと、一緒に来ているお客さんも大切にすることです。「常連さんだから」ではなく、すべてのお客さんが大切なのです。
では臨機応変に対応出来るか?これが実に難しいですよね。
以前うちのスタッフと一緒に言ったお店でのことです。マニュアル化されているお店で、私とスタッフが楽しく飲んで食べて話が盛り上がっている時に、「失礼します。お皿下げます」と、堂々と下げていく。一瞬何の話をしていたか分からなくなり、別の話をする。また盛り上がってくると、「失礼します。空いているグラスを下げます。何かお飲み物は...?」
一見普通に見えるかもしれませんが、客を見ていれば、中に入るタイミングはあると思います。
多少不満が残るサービスだなと思いつつ、レジへ向かうと何人か並んでいました。
「次のお客様。」
私の前のお客さんの精算が始まりました。
「ポイントカードはお持ちですか?」
「ないです。」
「では、お作りになりませんか?」
みたいなことをしていました。さて、私の番です。
「○○○○円です。」
「領収書ください。」
「はい。」
「・・・。」
「ありがとうございました!」
と、ポイントカードも言ってくれない。そんなものなのかな?
今はもうあの店に行っていません。
また、以前ある焼肉屋さんでこんなことがありました。ポイントカードもやっていて、お店もなかなか美味しかったので、子供とよく行っていました。アンケートに答えると4回に一度は3000円の食事券が来る。
ある日のことです。お店に行くとリニューアルされていて、メニューも一掃していました。アンケートに早速記入。“いつも利用しているのですが、ファミリーセットを復活してもらえませんか?子供も大好きで、食べ盛りなので、よろしくお願いします”と書いて、さらにこう付加えた。“セットがないと目安がないので、今後復活しないのであれば、もう来ません。”そして最後に名前、住所、メールアドレスまで書きました。
この店からは何の返事もなく、言うまでもなく、もう行っていません。とてももったいない気がします。「顧客は突然いなくなる」で書いているのですが、私みたいに意見やクレームを言う客は50%です。逆に2人に1人は何も言わないということですから、これが命取りにならないようにしないといけません。お断りの返事でもいいと思います。
何らかの返事をすることが大切で、店頭に告知することも大切なのでは?それが、お客さんがお客さんを呼ぶ行為につながると思うのですが・・・。
中洲のお寿司屋さんのことです。夫婦2人でやっていて、いつも愛嬌たっぷりで接客をしてくれます。「ビール」と言うと、「麦茶」とオーダーをする。一つのパフォーマンス。
「青物ください」「鯖があるよ」と刺身を作ってくれる。その瞬間、何か緑のものが飛んでくる。そう山葵である。
10年位通っているが、飽きなくて面白い。大将も話題が多い。私が連れて行った人も常連になっているそうだ。私もそういえば、最初は別の人に連れて行ってもらった。
もうひとつ、ワインのお店がある。ここはVIPルームがあり、一緒に来ていた人がVIPだと、必ずそのルームに案内される。優越感をくすぐる。オーナーに聞いてみると、「いつも来て頂いている方が込んでいて入れないようでは困るので、必ずご利用頂けるようにしています」とのこと。最近は、私もその部屋に入れるようになった。一つのサービスの仕方だと思うのです。
洋服はセンスや趣味に合わせて購入することが多いが、最近は、お店でお客の後に付いて、「試着どうぞ」、「着てみて下さい」などの声掛けだけのことが多いのだが、どうも違う気がする。
客には気に入ったお店があり、そのお店でコーディネートしてもらいたいと望む方もいらっしゃるはず。お店の店員さんはコーディネーターのはずなのだが、物売りの感じがしてならない。私自身買いに来ているのに、なかなか買いそうにないと、次第に相手にされなくなる。一度買ったお客さんの情報はどうしているのだろうか?
シアトルのある百貨店は、顧客情報を元にサービスの違いがあるのだそうだ。前回のアメリカ研修で、現地のバスの運転手さん(専務さんらしい)は、何度も来ていて、ズボン(半年前に買ったもの)がほつれていたので、それを持ってきた。「これほつれています」「いつもありがとうございます。無料で交換します。」だそうだ。
私は一回目の訪米で、しかも英語が分からないので、そこまでのサービスを見ることは出来なかった。
お客さんは何を考えているのか?男性は比較的女性に見立ててもらうことが多く、結婚なんかしていると、通販か量販店でしか買ってもらえない。しかし、稼いでいる人はブランドショップに行って、固定客になっているケースが多い気がする。こだわりがあるのか?そんなことはないと思う。コーディネートしてもらっていると、そこでしか買わなくなるのだ。それは私だけだろうか?昔、ブランド物を少し安くする店があり、その店でよく買っていた。しかし、そのコーディネートしてもらっていた店員さんがいつの間にか店を辞めていた。すると私は、別の店に行くようになった。やがていつの日か忘れているころにDMが来た。ちょっと寄ってみようかなと思い、寄ってみた。そうすると、店員さんが売り込みになっていた。今は言うまでもなく、離脱したお店だ。再来店の時にチャンスはいくらでもあるはずなのに、お客さんを失っていることが多い。一流ブランド店だってそうなのです。
ポイントは、お客さんを気持ちよくする。「お客さんのことを知って、この人は私の着せ替え人形(大げさですが)」とまで思わないといけないのではないでしょうか?そして、再来店させるチャンスを与え、それを逃さないように、スタッフが行動することが、一番なのではないでしょうか。
最近、福岡でも複合施設がどんどん出来ています。本当にこんなに出来て儲かるのだろうか?皆さんはどう思いますか?
私は近くのお店やモール自身が無くなっていくのではと危惧しています。スクラップアンドビルドを続けて行けば良いと考えている全国版の店が地方に来て、荒らされたあげくに撤退されたら、まったくもって街の構図が変わってしまう。確かに刺激にはなると思うのですが、今、回りの人達はどう感じているのでしょうか?
福岡にはショップモールがダイヤモンドシティ糟屋・ゆめタウン博多・ジャスコ香椎浜・キャナルシティ・天神地下街・マリノアシティなどを始め、まだまだあります。
先日、平日にマリノアシティに行ってみました。ガラガラです。多分、ショップモールは、土日や祭日に売上が上がり、平日はだめと割り切っているのでしょう。
ショップモールや商店街は何が目的かと言うと、集合集客が出来ることだと思います。それで、みんな潤うかもしれないと言うことで出店してくるはずですが、どうも違うような気がしています。最近では、潤っている店とそうでない店があり、売上が上がっていない店は、事務局の怠慢だといって怒っているのです。
商店街も頑張っているところもあれば、「今の代まで、何とか飯が食えたからもういい」と諦めているところも多い。
CRMはリーダーシップが大切なのですが、こういう場合は空洞化してくるのを待って、他のショップモールに移転するしか方法がなくなってしまいます。
実際のところ、反対派が多く何も出来ない商店街などが、その域に入って来ています。何のために商店街はあるのでしょう?かつてはコミュニケーションがあるイメージがありましたが、今は何もないように思えます。
「絶対にショップモールに勝つ」、そんな意気込みでやってもらえるなら、再生の可能性はなくはない。活性化資金なんかもあるが、うまく使えずに、無駄金になっていることが多い。
では、何をしたらよいのでしょうか?
まず、ショップモールや商店街は、元々なんであったのか?原点を考えて見ましょう。元々の原点は、商店街は人が集まるところに、店が集合化してコミュニケーションのエリアになっていた。ポイントカードは手段であって、それで売上が上がることはない。
「何をしたら良いのか?」、あなたがその商店街のお客さんだったら行きますか?ある店には行くけど、他の店には寄らない。そんな感じではないでしょうか?毎年同じイベントではなく、店同士が協力し合い、新しいものを考えたり、古いものを持ってきたり、イベントにも変化が必要だと思います。
お客さんは今飽きています。ショップモールだっていつかは飽きるんです。だから、状況を把握し、コミュニケーションをよくし、モチベーションを常に保っていれば、何らかのアイデアが出ます。それを実行して、反省し、そしてまたチャレンジする。それの繰り返しが必要なのです。データを見て、店作りをし、どの客層を呼び込まなくてはいけないのかを考えるのです。
?
売上報告などのための理事会なんて要らないと思います。これから何をするかを真剣に議論して、意外性のあるものをやらないといけません。それは知恵なんです。ショッピングモールも、我が店と競合にならないところと一緒にコラボレーションし、誘導させることをお勧めします。せっかく来てもらったなら、お金を落としてもらうことを考えないといけません。
これからの集合施設は、店単独では難しくなってきます。店同士が一緒に考え、お客様とコミュニケーションできるアイデアを出し、お金を落としてもらい、店が潤う。そんな企画を立ててみませんか?
まずは、腹を割った意見交換をしてみて下さい。するとそこにいい意見が見つかるのではないでしょうか?必ず、どこに行っても言われるのは、否定論です。低コストで低リスクな案を、何でも考えて実行してみれば、すべて答えが出てきます。それからでも遅くはないのです。仮説を立て、スピーディに実行して、修正し、検証することです。
世の中のコンサルティング会社は、それ自身が売上を上げてはくれません。皆が独り立ちするのを支援するだけなのです。ただ外部に委託し、成功するのを任せるのではなく、これらのことを理解して、一緒に売上につなげる工夫をすることが大事なのです。
成功は、誰も持って来てくれません。自らやってみるリーダーシップが大切なのです。
大井 啓伊
株式会社ミリオネット
福岡市博多区博多駅前4-8-15
代表取締役 大井啓伊
TEL092-441-5183
FAX092-441-5182
http://www.millionet.co.jp/
株式会社INFO NAO‘S
代表取締役 大井啓伊
TEL 092-451-0913
FAX 092-441-5182
http://www.e-0913.com/