新宿駅東口改札のほど近くに小さなカフェがある。実質15坪ほどのスモールな店舗であるが、年商が約2億円というビッグな飲食店である。新宿で創業40年を迎えた同店の店舗運営の考え方などを副店長の迫川尚子氏に話を伺った。
-貴店の現状についてお教え下さい。
昨年は、年商が約2億円でした。当初の目標以上で、ここまでいくとは思ってもいませんでした。開業当初は本当にがらがらで、1年間はテーブル拭きを一生懸命やっていたほどですから(笑)。でもこれで満足していてはいけないと思います。もっと儲けたいという事ではなく、お客様にもっと満足していただけるような面白いことができると考えているからです。
フードコストの面からは、物によったら50%を超えてしまっています。平均でも45%程度と高めなので、頭が痛いです(笑)。食材がこの20年でだいぶ上がったのですが、値上げをせずに来ていますので結果的に・・・。まわりからも 「 これはおかしいですよね 」 と言われるんですけれど、お客様に喜んでいただいているから 「 まあ、良いか 」 と。経営者としては拙いんですけれど、それでも家賃を払って、給料を払って、何とか暮らしていけますから(笑)。私どもの考えは、値段を上げるよりもお客様の数を増やしていくことに注力しています。お客様の数が増えれば、その分が利益として返って来るとの考えです。そのための施策は色々と考えています。例えば、ビールフェア、スペシャルサンドフェアとか、大吟醸祭などです。こういったフェアをやると普段日本酒を飲まないお客様が注文されたりと、楽しんでいただけるのです。このように楽しんでいただきながら、客数が増えていくのが良い方法だと思います。
-成功の理由についてお聞かせ下さい。
、良い店にしたいとか目的も漠然としていて・・・、正直具体的にどうしようとやって来たわけではないんですよね(笑)。ただ、素晴らしい出会いがあって、それを活かしてきた面はありますね。例えば、コーヒー職人の久野さんと出会ったことで、その後の職人さん達や業者さん達とのネットワーク作りができたこととか。店長の存在も大きいと思います。割と直感的なのですが、ちゃんと先を読めている。それをお題として私に落とし込んでくるんですが、最後まで私を信じてやらせてもらえる。この役割分担も良いのかもしれませんね。ただ二人とも行け行けどんどんで、問題が起こったらその時に考えれば良いやというタイプなので、突っ走りすぎちゃうことも多々ありますけれどね(笑)。そこは社員にビシッと助けられています。
それとお客様に恵まれたことも上げられます。混んでいる時にスペースを空けていただける話はしましたが、その他にも賃借契約で大変だった時にも心温まる応援を頂いたりと、ありがたかったですね。心から感謝するという事を本当に教わりました。
-今後の展望についてお聞かせ下さい。
目標としては、山手線の各駅、せめてターミナルビルに店舗展開をして行きたいと考えていましたが、定期借家契約ができたので難しいなと思っています。とはいえども、BERGは小さな店ですが、信頼できる10名の社員がいます。彼らの将来を考えると、何とか暖簾分けして店を拡げて行きたいと考えています。
まずその前に、このBERGでももっとやれることが沢山ありますので、まず、できることをもっと伸ばして行かないといけないですね。お客様に楽しんでいただける、満足していただける店づくりをして行きたいと考えています。それが、お客様とともに育ってきたBERGの、お客様に対する恩返しだと思いますので。
BEER & CAFE BERG(ベルク)
運営 晴山(せいざん)商事株式会社
代表 代表取締役 井野朋也氏
所在地 東京都新宿区新宿3-38-1 ルミネエストB1
取材協力 取締役 副店長 迫川尚子氏
迫川尚子氏プロフィール
調理師。きき酒師。写真家
女子美術短期大学卒業。現代写真研究所卒業。
写真集に「日計り」。著書に「食の職」。共著に「新宿駅最後の小さなお店ベルク」
迫川尚子フォトムービー・サイト「写真とベルクの間で」 http://berg.s1.bindsite.jp/