新宿駅東口改札のほど近くに小さなカフェがある。実質15坪ほどのスモールな店舗であるが、年商が約2億円というビッグな飲食店である。新宿で創業40年を迎えた同店の店舗運営の考え方などを副店長の迫川尚子氏に話を伺った。
-BERGの歴史をお教え下さい。
BERGは、1970年に純喫茶として創業しました。もともとは先代が音楽喫茶にしようと考え、オーストリアの作曲家 “Arnold Schönberg” から店名にしたのです。初期は、昔ながらの純喫茶と同様、コーヒーにサンドイッチなどの軽食を提供しました。手作りピザを30分ほどかけて提供するなどの料理へのこだわりは、現在にもDNAが引き継がれています(笑)。
代替わりに当たり、1990年に大改装の上、業態変更を行いました。当時、私も飲食店の基礎を身に付けるために喫茶学校に通っていたのですが、そこの先生にコンサルティングを受けての業態変更でした。“ Beer & Cafe ” にしたのは、新宿駅という場所柄、様々な方が行き来しますので、コーヒーに加えてビール類を朝から提供することが、お客様のニーズにお応えできると考えたからです。
コーヒーにホットドックやサンドイッチ、ビールにおつまみといったメニューは、増えてはいますが、業態変更当初から基本的には変っていません。値段も変っていませんが(笑)・・・。ただ、当店も最初から順調にいっていた訳ではなく、昼間の時間帯が弱かったので、ちょうど10年目の2000年の時に大改革を行い、その際にランチメニューを投入しました。
- BERGの特長をお教え下さい。
職人さんのネットワークを活用した食材へのこだわり、料理へのこだわりです。現在では、コーヒー、パン、ソーセージ職人さんを “ 3大職人 ” と言った呼び方をしていますが、これも最初にコーヒー職人の久野富雄氏に出会ったのが大きいですね。
久野さんとは、運命的と言うか、偶然の出会いでした。コーヒーマシンを探しに晴海で行われていた展示会に行ったとき、いくつも回ったブースの中で、飛び抜けて美味しいコーヒーがあったのです。これは機械だけでの理由ではないと思い、そのメーカーさんに豆のことをお聞きしたところご紹介して頂いたのが久野さんだったのです。久野さんのコーヒーに対する情熱は物凄くて、ご自分でブラジルなどの産地まで出向いて探してこられるだけではなく、店舗への導入後も単に納入するだけではないのです。例えば、BERGのコーヒーは、4種類のブレンドなのですが、コーヒー豆は農作物なので季節によって味の変化があるんですね。そこで季節ごとに最適な豆を選定して常に一番良い状態にブレンドして納入して下さるのです。
久野さんとの出会いが物凄く大きく、それにより私たちの意識がどんどん変わってきました。それからメインの商品の一つであるホットドックに使用するパンを高橋康弘氏、ソーセージを河野仲友氏という職人さんにお作り頂いています。
当店では、いち早く職人さん達の顔写真を店内外に掲示させて頂き、皆様から 「 BERGは早くからトレーサビリティを取り入れているね 」 と言われるのですが、実は “ 顔が見える食材 ” ということではなく、「 こんな人がこれを作っています 」 というのを見せたくて出しただけなのです(笑)。BEER & CAFE BERG(ベルク)
運営 晴山(せいざん)商事株式会社
代表 代表取締役 井野朋也氏
所在地 東京都新宿区新宿3-38-1 ルミネエストB1
取材協力 取締役 副店長 迫川尚子氏
迫川尚子氏プロフィール
調理師。きき酒師。写真家
女子美術短期大学卒業。現代写真研究所卒業。
写真集に「日計り」。著書に「食の職」。共著に「新宿駅最後の小さなお店ベルク」
迫川尚子フォトムービー・サイト「写真とベルクの間で」 http://berg.s1.bindsite.jp/