特別企画 海外外食マーケット座談会 ~拡大を続ける東アジアの国々~

特別企画 海外外食マーケット座談会 拡大を続ける東アジアの国々

いままで外食ドットビズでは、アメリカの外食店舗に関する情報はお伝えしてきましたが、その他の国々については触れていませんでした。昨年末を中心に偶然にも当サイトのメンバー3人が、中国・韓国・台湾へプライベートで渡航する機会を得たので、一旅行者としての視点で各国の情報を座談会形式にてお届けいたします。
参加者は、論説主幹である坂尻高志、当サイトを運営する株式会社フォアサイトの酒美保夫、コンテンツ制作を努める有限会社ノーデックス福本龍太郎で、編集長の齋藤栄紀が司会を務めます。なお、コメント内容については、旅行者としての個人的な感想を含んでいることを予めご了承ください。

第3回 中国・韓国における日本企業の現状と課題

柿安ダイニング酒美● 上海では、「柿安ダイニング」にも行ってきました。形態は、日本と一緒で、中華、日本料理、西洋料理のビュッフェ。ビールやハウスワインの飲み放題も含めて 150 元、 2400 ~ 2500 円といったところ。一般的な中国の基準からすると、飛び抜けた価格ですが、若い世代の富裕層を中心にヒットしている。

齋藤● 日本企業の店舗としては、大健闘しているわけですね。

柿安ダイニング酒美● 現地で柿安の取締役と総料理長に話を伺う機会に恵まれたのですが、出店当初は客が1日 20 ~ 30 人という状況が続いて苦労されたそうです。現地に合わせるローカライズが大変だったようです。今は平日でもほぼ満席で、 1 日の売上が 150 万円位という話でしたね。 6 対 4 の割合で中国人・日本人という客層。柿安としては、海外進出の第一歩にしたいという考えだそうです。それから、料理長が現地で雇った従業員には、日本の昔の若者みたいな素直さがあると褒めていました。まじめに勉強して、料理もアグレッシブに吸収している。

上海坂尻● 半年程前に上海で外食ビジネスをやっている日系中国人の方がいっていましたが、いま一番の問題は人材だというんです。外食で働いてみたいという人たちが、柿安をはじめ海外資本の格好いいところに流れているそうです。外資系は全体のマーケットからするとごく一部ですから、上海にある現地資本の店舗には、まったく人がいなくてどうしようもない状態らしい。日本と同じように、海外の労働力に頼らざるを得ない難しい局面に来ているといっていました。

酒美保夫(株式会社フォアサイト)酒美● 経済全体に勢いがあるから外食産業が大きくなっている側面が強い。いずれ淘汰される時代が来るのでしょうが、今はまだまだ店が足らないのかもしれないですね。

坂尻● 日本の外食産業では、上位 100 社が全体に占める売上の占有率は 18 %ですが、中国は 7 %程度です。数字だけで見れば、日本と違って裾野が広いと感じますが、 5 ~ 6 年前だとわずか 4 %なんですよ。ここ数年で跳ね上がっているのは、ある種のチェーン化が進んだり、そういった形態の企業が増えたり集中傾向が始まったからです。 2010 年に行われる上海万博に向けて拡大する一方で、様変わりの契機になるかもしれません。

齋藤● 韓国における日本企業の状況はどのようなものでしたか?

すかいらーく坂尻● 90 年前後には、「 COCO'S 」や「すかいらーく」が出店していましたが、あまりないというのが現状ですね。提携先の相手企業がつぶれて撤退せざるをえなかったりして、残念ながら閉鎖の方向に向かっている。

齋藤● なぜうまくいっていないのでしょう?

坂尻● 中途半端だったからですね。価格は高いのに日常食を追及しているから、客にしてみると「高いのにハンバーグなの?」という感覚になってしまう。同じ値段で、もっと良い店で上等な焼肉が食べられるんですね。

齋藤● 日本の価格設定で進出していたということ?

すかいらーく メニュー坂尻● 下手をすると日本の価格より少し高めだったかもしれない。でも、作りは皆さんが頭に描いているファミリーレストラン。そこが受けなかった理由かもしれませんね。なぜかというと、同じ時期に「 T.G.I. FRIDAY'S 」が進出して、バカ売れしているんですよ。あれは完全に非日常の世界。値段は高いが、楽しませるサービスをするし、料理的にも珍しくて感動する。ソウルオリンピックの時に進出して、そこから韓国の外食産業にひとつの流れができました。

もうひとつ特徴だったのは、韓国の若い経営者たちが、アメリカや日本などに行っていろいろと経営の勉強をしていることです。自然と食文化も影響を受けるから、これから受け入れられる市場が拡大してくるのではないでしょうか。これから日本企業が韓国に出ようとするのであれば、大型の商業施設の開発がめじろ押しですから、その中に出るというのも成功のひとつの道筋かもしれないです。



参加者

  1. 坂尻高志(論説主幹)
  2. 酒美保夫(株式会社フォアサイト)
  3. 福本龍太郎(有限会社ノーデックス)
  4. 齋藤栄紀(外食ドットビズ編集長)
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