ある食材にダイエット効果があるとテレビが伝えれば、翌日にはその食材が店頭から消えてしまうほど、現代社会は“健康志向”へと向かっています。外食産業においても、この消費者行動を看過することはできませんが、どのように実践すればよいのでしょうか。インターネットを通じてダイエットプログラムを提供する「eBalanceDiet」の運営や外食店舗向け健康メニューのプロデュースを手がける、株式会社アグライアCEOの高木鈴子氏にお話を伺いました。
いまの時代、まるで健康のことを考えていない消費者はいないはずです。反対に、食を提供する外食企業側の方とお話をさせていただくと、そこへ意識があっても行動に移せていないと感じることが多くあります。小規模な店舗ですと、割とフットワーク軽く、いろいろなことにトライできるようなのですが、大きくチェーン展開している企業になると、流通や仕入れの関係で、メニュー変更や調整に対するハードルが高くなって、それが理由でなかなか実現しないというのはあるようです。また、健康的なメニューにするには、どうすればいいのか、その方法がわからない傾向もあるようですね。この食材をこれに変えると、バランスがどうなるといった具体的な方法についてはほとんどご存知ないという印象を持ちました。
ヘルシーな食事にしてしまうと、味も薄くなって、ボリュームもなくなってしまうと思われている方も多いですね。確かに、バターをたくさん使ったフレンチのソースは美味しいですが、以前タイアップしたレストランでは、管理栄養士のアドバイスとシェフのご協力で、低カロリーでも美味しいソースにすることができました。フレンチならフレンチの良さ、そのシェフの良さを崩さずに、カロリーを抑えたり、栄養バランスを整えたりという方法はあるんですよ。なかには、メニューにカロリーを載せてしまうと、高カロリーのメニューを食べなくなるのではないか?、と心配される外食企業の方もいらっしゃいましたが、そのようなこともないですよね。高カロリーでもいいから、霜降りの肉を食べたいという方はいるはずですし、健康に気を使っている人でも、そういうものを食べたいと思うときもあるのです。ユーザーそれぞれの好みや気分があるので、あまり考えすぎなくてもいいと思います。こってりしたものが食べたい人にはこれ、健康的な物が食べたいならこれ、と、消費者の層を細分化して考えればよいと思います。
昨年あたりからメタボリックシンドロームが騒がれていますが、このような国が主導する啓蒙活動は、今後活発化される傾向にあります。この社会現象の波に上手に乗って、「時代の流れにマッチした活動を起こしている企業」という姿勢をアピールしていくんです。「食を通じて人の幸せを生む」といった理念を掲げていらっしゃる外食企業は多いでしょう。志は非常に高いのですから、それを実際に消費者にわかるよう、具体的な行動を起こすことが、一番重要なのではないでしょうか。外食産業は、もはや日本人の食生活に欠かせない存在ですから、もっと消費者の健康への意識を高めていただくことを希望します。消費者は健康についてもっと真剣に考え、食事を提供する側は、消費者のその時の満足感だけではなく、人生の満足感まで考えて商品開発をしていただけるとうれしいですね。
今後、私共は、外食産業と健康をつなげるサービスをもっと提供していきたいと考えています。例えば、ファミリーレストランのメニューのヘルシー部門での開発・監修をお手伝いさせていただき、プログラムに取り込むというようなタイアップもやってみたいですね。妊婦さんや、健康診断の数値が思わしくなかった方、これから先も、健康なカラダで過ごしたい方など、誰もがカラダにいい食事をしたいと望む時代ですから、それぞれのニーズに応じたスタイルの食ツールを、今後も提供していきたいと思っています。
高木鈴子
国内航空会社及びイギリス・ヴァージン アトランティック航空等に勤務の後、ダイエット食品販売のサニーヘルス株式会社へ。目に見えないものを扱うサービス業の経歴とダイエットや健康の知識をもとに、2006年3月にダイエットプログラム提供サイト「eBalanceDiet」を事業の柱とする株式会社アグライアを立ち上げる。個人向けの食事プログラムのほか、外食企業に向けた健康メニューのプロデュースも数多く手がけている。