厳しい経営環境にさらされている外食産業で、“店舗運営をより良い方向に導く羅針盤(コンパス)”というコンセプトで開発されたPOSパッケージソフトウェアが、東芝テック の「FScompass(エフエスコンパス)」である。新GUI(グラフィカルユーザインターフェイス)の採用によるレジオペレーションの改善、新プラットフォームの採用によるクラウド環境への対応、シームレスで統一されたマスタ管理運用をはじめ新機軸となる機能を搭載。効率化や人材育成、消費者ニーズへの対応など今後の外食店に求められる、さまざまな課題解決へ指針を示す製品として期待されている。今回は、開発陣自ら「エフエスコンパス」の特長とその革新性を語っていただき、POS製品のトップシェアを誇る東芝テックの開発姿勢に迫ってみたい。
- 「 エフエスコンパス 」 開発に際して、それぞれのお立場で苦労されたことや達成感を得たことがあればお話ししていただけますか。
【 三部 】 まだ続いていますが、苦労したのはパフォーマンスのチューニングですね。限られた機能のハードウェアで、これだけの高機能のアプリケーションを動かすのはやはり難しいことですから。こういうアプリケーションを実現するために要素技術を積み上げてきたので、この製品を実現できたことが一番の達成感かもしれないですね。
【 野沢 】 これまでのアプリケーションは、建築に例えるとフルオーダーで建てていたようなものです。それをユニット工法に変えたのが 「 エフエスコンパス 」 です。ひとつひとつユニットを作り込んでいけば、それを積み重ねると質がいいものができる。その開発手法を確立できたことが要素技術部にとっての達成でしょうね。
- 素人考えかもしれませんが、そういう作り方ならば、大きな拡張性があるのではないかと思います。
【 野沢 】 ひとつの開発をしながら、次世代の製品を考え、他業種向けの製品に使えるような部材が出てくる可能性は高いでしょう。当社としての成長にもつながるのではないかと思います。
- では、野沢プロジェクトマネージャーがご苦労されたところは?
【 野沢 】 これだけの開発規模なので、ビジネスパートナーさんもたくさん関わっています。“ お客さまに満足していただけるものを作りあげる ” という意識を末端まで浸透させるのが一番苦労するところです。
- そのために、コミュニケーションで工夫されたことはありますか?
【 野沢 】 「 エフエスコンパス 」 の開発コードネームは 「 エフエスエヴァ 」 だったのです。エヴァンジェリスト=伝道師、探究者といった意味です。将来のための技術を集めて東芝テックの新たなスタンダードを作る、その意識をコードネームに込めました。市場で受け入れられるか、勝負はこれからですが、今までに無いものができたのは確かだと思っています。
- 最後に、牧山さんのお話をお願いします。
【 牧山 】 やりたいことはもっとありましたが、限られた時間やリソースの中で実現できることには限界がありました。とは言いながらも、飲食店の皆様の羅針盤として使っていただけるものでなければいけません。そこでの取捨選択に最も苦労をしたように思います。逆の見方をすると、新しい技術はいろいろなところに転がっていますが、それらをお客さまの目から見たときに、どう使えばメリットとして生きるのかが重要です。技術に合わせて機能を作っても意味がありません。お客さまのメリットがなければ、その技術は何の役にも立たないのですから。
- という意味でも、達成感のある製品が完成したわけですね?
【 牧山 】 うーん、製品としては船出したばかりですからね…。まずは、目指すべき方角に向かって進ませるというのが私の仕事です。POSというのは、全体の仕組みの中の一部にしか過ぎません。東芝テックにはいろいろなリソースがあり、顧客管理や決済のシステムなど、飲食店で使える新しい技術もたくさんあります。その中で、もっと 「 エフエスコンパス 」 を活かせるような仕組みを考えていかなければならないと思っています。周囲とのつながりを作ることを次のステップとして考えているところです。
- 「 エフエスコンパス 」 は今後も更に、羅針盤としての機能が今後充実していくわけですね。
【 牧山 】 はい。世の中はどんどん変わっていますから、それに合わせてスピーディーに必要な機能を追加していきたい。「 エフエスコンパス 」 は、それができるプラットフォームであることを飲食店の皆さんにご理解いただければ幸いです。