厳しい経営環境にさらされている外食産業で、“店舗運営をより良い方向に導く羅針盤(コンパス)”というコンセプトで開発されたPOSパッケージソフトウェアが、東芝テック の「FScompass(エフエスコンパス)」である。新GUI(グラフィカルユーザインターフェイス)の採用によるレジオペレーションの改善、新プラットフォームの採用によるクラウド環境への対応、シームレスで統一されたマスタ管理運用をはじめ新機軸となる機能を搭載。効率化や人材育成、消費者ニーズへの対応など今後の外食店に求められる、さまざまな課題解決へ指針を示す製品として期待されている。今回は、開発陣自ら「エフエスコンパス」の特長とその革新性を語っていただき、POS製品のトップシェアを誇る東芝テックの開発姿勢に迫ってみたい。
- 新製品の 「 エフエスコンパス 」 は、パッケージソフトウェアですが、どのようなハードに搭載できるのですか?
【 野沢 】 2010年1月に発売した 「 ウィルポス・タッチ QT-10 」 というPOSに搭載できます。私はハードウェア部門も見ていますが、最近はハードでの差別化が難しくなっています。使い勝手や利便性といったソフトウェアで差別化するコンセプトで作られたのが 「 エフエスコンパス 」 なのです。
- 新しい機能が追加されて、現行ハードで動かすのは動作が遅くなるのでは?
【 三部 】 …分かってらっしゃいますね(笑)。そこが開発の最重要課題です。
【 牧山 】 POSのハードウェアというのは、パソコンのようにCPUをボンボンと上げるわけにはいきません。やはり、ひとつの製品を長く供給しなければいけないですから。また、飲食店という特殊な場所に置くものですから、ファンを付けてはいけないとか、小型でなければいけないといった制約があるのです。どうしても限られた性能しか実現できず、その中で凝ったソフトを動かすには高いハードルがあるのです。
【 野沢 】 そのため、開発の最初のステップから段階的にパフォーマンスのチューニングをするプロセスが組み込まれていました。
- 「 ウィルポス・タッチ QT-10 」 導入店舗であれば、ソフト単体で購入できるのですか?
【 牧山 】 条件はありますが、もちろん大丈夫です。定価29万円で販売いたします。
- 「 エフエスコンパス 」 の技術のなかで、特長的なものをお教えいただけますか?
【 牧山 】 まずは、スライドスケーラブルUIという特長です。画面の構成要素として、商品リストやメニューカテゴリーを切り替えるボタンがいろいろ出てくるのですが、それらをドラッグ&ドロップで操作できるのです。また、ボタンの枠を広げたり、ボタン数を増やしたり、リスト部分だけを広げるといった新しい技術を採用しています。これは、ユーザー様が直接変えるのではなく、当社のSEがご要望に応じて画面構成を調整いたします。
【 三部 】 今までは、A社に納めるときには 「 レイアウトをこうして、ボタンの数はこう 」 など対応カスタマイズの開発が発生していましたが、ドラッグ&ドロップにより簡単に短時間で可能になりました。
【 牧山 】 また、レジ操作に不慣れな方々のために、操作支援機能としてスライドインヘルプ機能も搭載しました。
【三部】今までは、ヘルプボタンを押すと全画面に出てきてしまって、ヘルプを見ながら作業ができませんでした。すぐにヘルプの内容を忘れてしまって、再度ヘルプを呼び出すというような煩わしさがありました。「 エフエスコンパス 」 は、ヘルプが左側にスライドインしてきて、操作中の画面等がすべて縮まるという見せ方になっています。
【 野沢 】 ある製品を開発すると、リリース後に別途費用が発生するカスタマイズ作業というものが必ずあります。これは、お客さまの要望するものに対して、我々の製品がマッチしていないという意味でもあります。そのような改善すべき課題に対して、デフォルトの機能として、ある程度のカスタマイズが最初からできるようにしたかったのです。
【 三部 】 それから、心地よく操作できるような、見た目に関する機能も充実しています。女性がターゲットのお店ならば 「 スウィート 」 タイプを選ぶ。というようにお店のコンセプトに合わせて、背景デザイン( スキン )を変更できるようになっています。
【 牧山 】 最近の飲食店は、レジを置く場所が変わってきています。例えば、フロアの真ん中にあって、お客さまからPOSが見えるようなケースがあります。見られながらオーダー入力をしたり、お客さまの情報を確認したりする場面も出てきています。お店の雰囲気とはまったくマッチしない画面がポンと出てきては興ざめですから、店舗にとけ込めるようにしたのです。
【 野沢 】 ユニバーサルデザインという観点もふまえています。当社には、「 見やすいデザインとは何か 」 を研究する専門グループがあって、そこで最初に基本となるデザインを決めています。イメージだけで、こういう色合いにしたのではなく、あらゆる人が見やすいような配色やボタン操作を考えています。
【 牧山 】 例えば、色弱の方というのは2つの色が同じに見えることがありますが、レジ操作ではそういうことがあってはいけません。色弱の方でもはっきりと色の違いが分かるような配色で設計してあるのです。
【 三部 】 あとは、POS画面に表示している文字に特長があって、POS専用のフォントを独自に開発しています。パソコンの文字だと圧迫感を感じるという方が多いのですが、これはゴシックベースですが、奥行きがあって見やすくなっています。
【 牧山 】 アイコンを多用しているのも特長ですね。例えば、外国の方がボタンを探すときに、従来は文字を読まなければいけなかったのですが、今回はアイコンを覚えて記号で辿れば見つかるように工夫してあります。極端な言い方をすれば、漢字が読めなくてもオペレーションできることを目指しました。