外食ドットビズで紹介するイベントとしてはおなじみになったFS/TECイベントの取材を行った。前回のレポート同様、NAFEMとの共同開催である。
本サイトのパートナーであるOFSC:オープンフードサービスシステムコンソーシアム(千代田区・事務局は、株式会社フォアサイト)の協力を得て、米国外食産業の技術的なトピックを一部でもお伝えできればと、また必死な私である。
不勉強な私は、前回の取材でようやくおぼろげながらFS/TECやNAFEMの活動を知ると共に、国内の外食産業IT化・標準化に取り組む企業の現状を知りえた。
本稿にて余裕があれば、インターフェース標準化をはじめ、その後着々と成果を出し続けているOFSCの活動についても、後ほど触れさせていただければと思う。
ちょうどこの記事が掲載されるころは情勢も変わっているとは思うが、 FS/TECH The NAFEM SHOW 2009 は、「 オバマのアメリカ 」 の空気の中で開催されている。
当の私もこの取材の2週間くらい前だろうか、深夜のテレビ放送で、200万人を超す聴衆を集めた大統領就任演説を見ていた。
よくよく考えれば日本に住む私にとって、アメリカの大統領が誰になるかはあまり関係ないことだと思うのだが、ほかの人に聞くと結構、そのために頑張って起きて、リアルタイムで見ていた人が多かった。
ある種の異様な雰囲気ではあるが、私の周囲では誰もがオバマ大統領を好意的な目線で見ていたと思うし、私も例外では無く好意的な目で、「 歴史的なイベント 」 程度の感覚で、新しい大統領のスピーチを眺めていたのだろう。
他の国の大統領がだれであるかは多少気にはなるが、今回のような関心の持ち方は過去には無かったと思う。
アメリカという国が、日本にとって特別な国であると思う人はどれくらいいるのだろうか。
さて、 FS/TECH 会場から。
併設されている NAFEM SHOW2009 へ足を延ばしてみる。
※ 厨房機器好きには堪えられない面白さ・・。
NAFEM SHOW 2007 をきっかけに少し勉強した NAFEM Data Protocol (以下 NDP )について、もう少し関心を持ってみようと思いたった。
おさらいになるが、NDPは厨房機器を既存のネットワークに接続するための規約である。
もともとコントロールのための電子機器やネットワーク機能を持つ厨房機器も多くあるが、異なる厨房機器メーカー同士でも、スムーズに接続できるように、通信の規約を制定する必要がある。
アメリカの大手外食チェーンを巻きこみつつ、NAFEMが下記の項目をゆるやかに規定した通信プロトコルであり、各厨房機器メーカーによって拡張されながら現在に至る。
●NDP(NAFEM Data Protocol)が定める主な規約項目
現在では、エコ・プロダクトなどへの応用、拡張も盛んに行われ、その活動は随時NAFEMによってドキュメンテーションされ、公開されている。
各メーカーは非常に意欲的にとりくんでいるように思える。
食肉調理へのHACCP義務化とほぼ足並みをそろえる形で、NEFEMを中心とした研究開発は10年目を迎えるが、その成果(HACCPの定着)に大きな影響を及ぼしたことはいうまでも無い。
きっかけは別だが、今日では「効率化」「利益の最大化」という意味でも厨房機器の情報集約が進んでいる。
「X-Green」システムというものが目についた。
「洗う」という行為にも技術の光が当たっているようだ。
要約しすぎると文句を言われそうだが、野菜を洗って見た目を最大限きれいにする大がかりな装置である。
生野菜にどのくらい「危害要因」があるかまったく分からないが、この装置にもデータログと通信機能がついている。
本質的には、トレーサビリティを途切れさせないということが重要なポイントかと思うが、生産情報を受け取り、誰が何分間洗浄したという記録が出力され、ラベル印字され、消費者の目線にも対応するしくみだ。
※ 「 人体に無害な薬剤でペーハー(ph)を調整し、冷たい水でパリパリにします! 」 とある。
・・・・いいのかな。・。
温熱調理以外のスタイルが勃興すれば、やはり業界が一体となって対応する。
すでに標準化されたしくみがそこにあることの強みである。
結果からいうと、前回( NAFEM SHOW2007 )から急速に、このデータプロトコル多方面へ応用されているという現象は、この場では確認できなかった。
しかし本質は、「標準化」という活動が継続していることである。
この活動自体はそうそう急速に進むことは無いと思う。
標準化を推進するメンバーは、活動を「食の安全」を維持するための行為として位置付けており、「効率化」への適用は別のドライブだと言い切る。
アメリカでは食品医薬品局( FDA : Food and Drug Administration )という組織が、食品・医薬品などに関連する行政機関(日本の厚生労働省のようなものか)として、広い範囲にわたって大きな影響力を持っていることが知られている。
食の安全という側面では、その圧倒的な予算と影響力で、 HACCP の義務化を多方面で推進してきた。
FDA については、日本と比較しようが無いほど強大な予算や、その特殊な権力など、興味を引くことが多いが、それはまた別の機会に述べようと思う。
アメリカ農務省がその意思をついで、およそ10年前、食肉調理にHACCPを義務付けた。FDAと、行政機関としては別だが、ここでは管轄の違いからそうなったのであろう。
NDPという標準化行為は、膨大な労力を必要とするHACCPの適用と共に試行錯誤され、 NAFEM メンバーによって推進されてきた。
日本でも食の安全、安心というテーマはあらゆるものを優先して関心が高いが、アメリカのメディアやNAFEMのような業界団体は、その本質を正しく伝え、いまでは小人数の企業でも、無理なくHACCPを実践している。
前の稿で、多少脱線しつつアメリカの特殊な文化について考えを述べさせていただいたが、ここでも感じるのは「危機意識」の違いである。
グローバリゼーションは他国(外部)との緊張を前提とする。
文化が文明を生み出すというか、常に外部を見て適応しようとするものだけが、文明を作り出し、生き残るのではないかと、考えた。
次回、必死にまとめてみようと思う。
乞うご期待。
福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。
有限会社ノーデックス 代表取締役
福本龍太郎の米国店舗視察 ラスベガス発 ~成長する砂漠のホスピタリティ~
福本龍太郎の速報!FS/TEC・The NAFEM SHOW2007
文: 福本龍太郎