アトランタでの2日間の展示会視察を行ったのだが、実は、この視察の前に、ネバダ州南部、ラスベガスに立ち寄り、店舗視察を敢行した。
またもや珍道中であったが、途中、ファーストフード店舗の集中視察を行い、おりしも FS/TEC The NAFEM SHOW 2007 で FF(QS)業態に関わる革新技術をおさらいするような流れとなった。
店舗視察の模様は 別の記事(福本龍太郎の米国店舗視察 ラスベガス発 ~成長する砂漠のホスピタリティ~)で行っているので、ついでに読んでいただければ幸いである。
以下、レポートの総括というか、感じたことのみつらつらと述べる。
今回は、 FS/TEC (Food Service Technology) という、どちらかといえばITに特化した情報源を取材したのであるが、「食」トレンドや概論よりも、明確な近未来を想像する展示会であった。
主なスポンサー企業の一社であるEPSON社には、特別に現地法人の方のご説明をいただきました。ここでもRadiant社との提携が話題になっている。
EPSON社のサーマルプリンタ。内蔵したKIOSK端末のデモも。そのシェアは驚異的だ。
非常に親切に話してくれたんですけど・・ここでもろくに会話に参加できず・・。無念。
写真右は YOSHINOYA で実際に運用されている POS/オーダーエントリシステム。
正直な印象であるが、「 FS/TEC 」 の部分については、共同開催の NAFEM SHOW と比べた展示会場の大小のせいか、テクノロジーイベントとしても、通常のマッチングイベントとしても、中途半端なイメージがあった。あくまでも私見だが。
先進的なテクノロジーイベントは、WEB 、インターネット、次世代通信が主役となり、業種別に開催される業務アプリケーションや自動認識ソリューションなどの専門業界イベント自体が影を潜めているのは、日本でも同じ状況だろう。
ただし、これは当然といえば当然のことで、インターネットによる情報の世界化という現象は、テクノロジーの先端分野から起こる。
プラチナスポンサーのMICROS社ブース。珍しくハンドヘルドターミナル展示。OESでなく、ページャーのオプションである。
本稿のなかで紹介した一連のテクノロジーについては、ファストフード(QS)向けに適用されがちな「 自動化・合理化 」 という側面が強かったと思う。
テクノロジーベンダー側から見れば、完全な無人化という究極の目的があるかぎり、むしろ機械化の余地を必死に探る段階に来ているのかもしれない。
だが、「 外食 」 全体が完全な無人化を求めているわけではないことはすでに述べた。
断定はできないが、カジュアルレストランなどのフル・サービス業態にとって、サービス分野を機械化することの意味は、もうほとんど見つけられないだろう。
このように述べると勘違いされるかもしれないが、 HOSTEC ブランドとして各地で開催される本イベントが、メディアを巻き込んだ強力なイベント・ショウであることは間違いない。
各種インターフェースの標準化や、無線機器の極小化、大規模ストレージの安価な流通が、ファストフード(またはファストカジュアル)という位置づけで、ITを含む技術革新をさらに発展させるであろうことが実感できた。
話しが飛ぶ。
法人監査の間で主流になっているのかどうかわからないが、
「 100店舗前後の外食企業で、ITそのものの有用性は、その企業のあらゆる生産性において、数パーセントのコストメリットしか寄与しない 」
という意見を聞いたことがある。
このことは、あたりまえのことで、しかも外食産業全体で捉えてうのみにしてはいけないということを、改めて認識できた。
また登場しますが、McDonald's社 の Erick Krueger氏。ファーストフード(QS)は、むしろ製造業に近いモデル。今後は企業防衛の観点からも、ロボティクスとIT投資が加速するであろう。
イベントの中で気づいた点というか、雑感だが、「 ASP(Application Service Provider) 」という事業モデルについての動向は、雑誌などでうかがうような活発な気配は感じられなかった。
すべてのセッションを紹介したわけではないので勘違いかも知れないが。
多くのオンライン記事で、アメリカではプロダクトの ASP化や、SaaS(software as a service : サース : ソフトウェアデリバリモデルの一種)化について、積極的な印象を受けているが、本イベントではそこに特化したような表現は見当たらなかった。
業界としてまだこれからの兆候なのか、イベントのカラーなのかどうかは、わからない。
関係ないかもしれないが、アメリカの人たちは意外と「他の同業との違い」を鮮明にする場合が多いときく。
日本では、
「よく考えたら結局考えは同じだよね、となる(したがる)」が、
アメリカでは
「 いろいろ考えたけど君と僕は違う。でもそれは当たり前だ。 」
となるらしい。コストのかけ方も、同調・和集合より、格差・その組織固有のケイパビリティへの投資が好まれるようだ。
テクノロジーベンダー間のパートナーシップの前提も、根底から違う。
今後多種多様なデリバリモデルが派生するだろうが、もしかすると ASP、SaaS という形態は、日本のほうが定着しやすいのかもしれない。
現在は、「資本の自由化」に沸きかえった時代から、はるかに長い時間を経ている。
かつての時代においても、企業家たちはチェーン理論の生みの親、アメリカの各地に降り立って、具体的な数年後の自分たちの姿を垣間見たろうと思う。
日本での(近代的な)外食産業勃興の時代、米国で表現されていた輝かしい未来の姿(きれいな店舗、どの店でも同じオペレーションで同じ味・・というソフトウェアと、 テクノロジーを含む)を、いまではほぼ、どの企業も、自分のものにしているだろう。
ものすごくオーソドックスな言い方で申し訳ないが、見る-百聞は一見にしかず-ということが重要であると。
最終日の午後は会食と外食企業テクノロジー部門のアワード発表。有料のセッションであるが、ただ食いしてしまったかも。事情は後で述べる。
アワードは有力企業の持ち回りの感があるというが、受賞者はビジョンをしっかりと述べていた。ベンダーとの共同開発やパートナーシップが大きくクローズアップされている。
NRNはメディア本来の仕事をしていると思う。
このような海外イベントに参加(視察)するメリットは、トレンドの理解も大事ではあるが、テクノロジーベンダー側であっても、外食のプレイヤーであっても、「違いを認識する」ことができる点ではないだろうか。
ここでいう違いは、自分の想像や知識との、実感としての違いである。
自身の反省点を強調するが、私は特にそうなのだが、「わかった気になって」いることがやたら多い。
別編で記載させていただいている店舗視察でもそうだが、いまや、ネットワークによって一瞬で手に入る情報も、現地の空気に触れ、そのプレゼンテーションに触れながら、さらにアウトプットすることによって、「そうだったのか」と実感する部分がある。
また話が飛ぶが、外食ドットビズ編 ≪起業のすゝめ≫ でも、起業家たちの周到さには驚いてしまう。
起業するまでの綿密な計画、市場に対する嗅覚、危機管理という反射神経、それぞれ言葉に表れないが、起業家個人の計り知れないポテンシャルと日々の努力が背景にあるのを感じる。こんなに周到な活動を日々営んでいるにも関わらず、「わかった気になって」いる起業家は一人もいない。
繰り返し反省をこめて言うが、「わかった気になる」ということがとても危ないことであるということを気づかされる。
個人的には、上記の雑感レベルでしか現地の空気をお届けできないという反省点があるが、外食ドットビズとして、本イベントが今後も強力な情報源であることに変わりは無い。
NAFEM SHOW との共同開催がコミットされていることも、イベント発展に大きな期待が寄せられるが、カンファレンス中心の ( 私は半分も聞き取れなかったが ) より専門的な分科も期待したいところである。
次回は、テキサス州ダラスでの開催である。
FS/TEC 本体の WEBサイト も存在しているが、機会を見て継続的に情報をお届けできればと思う。
FS/TEC WEB サイト : http://www.fstec.com/home.cfm
今回は、論説主幹である坂尻氏の同行なしに行われた取材行であった。
前回(NRASHOW2006)との主観的な比較になっている視点が多く、レポートとしては貧弱かも知れないが、自分なりに新しい角度での、ものの見方ができたとは感じている。
次回、どうしても載せたい、どうでも良いエピローグを掲載する予定である。気がついたら、読んでもらえればありがたい。
福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。
有限会社ノーデックス 代表取締役
文: 福本龍太郎