開催地である Georgia World Congress Center は、市街地のど真ん中で、空港からもアクセスが非常に良い。
アトランタ国際空港は、シカゴ・オヘア空港とならぶ乗降客で、アメリカで一番忙しい空港だそうな。
のちに、アトランタ国際空港では、非常に印象に残る出来事が起こったのだが、それはまた後日エピローグとして書ければと思っている。
空港から市街地まではタクシーで10~15分ほどか。運転手さん無口。
1996年に開催されたアトランタオリンピックの競技場であったジョージアドーム(現在は球場として改装・アトランタ・ブレーブスの本拠地)を中心として、広大な敷地の中に、会議場がある。
市の歴史も古く、南北戦争の舞台や、本社が所在するコカ・コーラや、球場の名前にもなっているテッド・ターナー(CNN創業者)など、観光案内的にはものすごく書くことが多く、すべて割愛するのには文句が出そうだが、全く問題無しとする。
会場周辺。オリンピックパークのど真ん中。ちなみにCNN本社もコカ・コーラ博物館もすぐ近くにある。
われわれが泊まったホテルからは徒歩で行き来できる距離であったが、かつて凶悪犯罪発生率No.1の街は、夜出歩くには勇気がいる。
(暗くて本当に怖いのです。)
私のホテルは皆さんと別棟で、帰りにタクシーに一人で乗ったのだが、緊張のあまりチップの計算を間違ったりしました。
(運転手さんは明るい方で、喜んでいましたが・・。)
2日目、気を取り直して取材である。
前後してしまうが、実は2日目は朝からOFSCの協力により、カンファレンスに参加した。掲載と取材調査の都合上、展示ブース概観から紹介する。
展示そのものや FS/TEC の趣旨は、徹底した合理化・自動化を促すものが多かった。サブタイトルにも “ Networking for Profits ” とある。
しかしながら、あくまでも最新技術の展示ということであり、すべてアメリカのレストランチェーンが合理化、省力化に成功しているわけではない。
展示会場の実例はやはりIT・設備の授恵を多く受けるQS(クイックサービス:日本ではFF:ファーストフード)向けのソリューション・製品が主流ではある。
各メディアでも取り上げられているかも知れないが、 KIOSK 端末の用途進化 (あえて用途進化と呼ぶ) には目を見張るものがある。
アメリカの有力なQSで実験的に採用されているセルフオーダープラットフォームを提供する EMN8社のデモを見てきた。
近年、この手の展示会でKIOSK端末が目立つ。
単純にロボティクスの自慢というわけでは無く、「 サービスの自動化 」 に本腰を入れているように感じた。
ブースは xpient 社。 EMN8 社がソフトウェアプラットフォームを提供している。
オーダー開始から決済までおよそ2分(デモの兄さんの操作も早いが・・)メイン・サイドオーダーまで細かく、かつすばやく動作する。音声が選択可能で、基本的な構想では多言語応答が可能である。(日本語は無かった・・・)
想像よりも、動作や注文手順、手戻りに無理がなく、「 いけますね 」 と感じたのだが、この製品の完成度には後ほど述べるがわけがある。
「 実験的に 」 と述べたが、少なくともQSに限っていえば、数箇所導入店舗を見かけており、今後急速に普及する可能性を感じる。
後日紹介する店舗視察でもほとんどそうだったが、どのような小額課金(コーヒー一杯)でも、アメリカではクレジットカードによる決済が可能だ。このことも普及を予感させる一因である。
小額課金のカード利用については、日本のカード業界(電子マネーを含む)も追随する傾向がある。
このことはレポートを通じて主題からあえてはずすが、この消費者の気分が非常に重要な気がする。
会場売店のレジもカード決済可・・・ほんとかよ!
どれも一品$5前後の料理とペプシまで。
デモで取り上げた EMN8社は、ご存知の方が多いと思う。
同社の強みは、当初からオープンプラットフォーム仕様を提唱し、アプリケーション層に JAVA 、制御モジュールに C++ を採用したマルチベンダ前提のコアコンポーネント(高精度なグラフィックチップと、一部の部品が含まれる)いわゆるエンジン部分のみを提供し、 OEM 相手先への組込み一切をサポートする立場を取っていることだろう。
実際に店舗で運用されているかどうかは確かめることができなかったが、デモに組み込まれている企業名は、Arby's 、 carl's 、Hardee's 、Jack in the Box 、Taco Bell 、変わったところでは Disney World があげられる。
デモは Carl's Jr でした。「デザート聞いてくるよ」と喜ぶ編集長。
・・クロスセル、アップセルがどうとか言ってるお兄さんを完全無視。
並べられている企業についての導入経緯や、同社の沿革は、調査不足もあって詳しく報じられないのが申し訳ないが、あらためてアメリカの特定業界のありかたというものを認識した。
すでにこの分野(セルフオーダー)では、 IBM 、 Per 、 NCR 、 Radiant 、上記ブース紹介の xpient 社がストラテジックパートナーとして採用している。
(上記実例企業はパートナーのものか)
前述したが、遷移の設計、構成には安定感があるというか、完成度が高い。
※表面から見ただけですけど。
共感すべきは、自社開発を捨てるわけではなく、良いものは積極的にアライアンスするという姿勢のことである。
業界全体で、サービスの標準化(ひいては無人化?)を推進しているような印象さえある
KIOSK 端末の導入により、店舗のフロントエリアは自動販売機化するのであるが、それがつまらないと感じる消費者もいるだろう。
しかし同社の独自調査によると60%近い水準で、消費者には好評価だったらしい。
「 食事体験よりも速さと正確さ、なにより自分の時間 」 など、「 トレードオフ 」 が必要なフォーマットも存在するのは確かだ。
ENM8社 : http://www.emn8.com/ ←上記のデモが見れます。
接客の自動化は、おそらくは最後のシステム化要件ではないかと感じるが、それもいざ導入となると、業態という意味で限定される。
ディナーレストラン、カジュアルレストランでは、接客の自動化そのものが意味を成さない。
私も最近まで勘違いしていたが、カジュアルレストラン、ファストカジュアルというものが注目されるたびに、他の業態とのその違いを素材や店作り、味という点に言及していたのだが、実際の捉え方はそうではなく、「サービス」および「トレードオフ」という点で、FR(ファミリーレストラン:米国ではコーヒーショップ)業態との明確な違いを見出すべきではないだろうか。
KIOSK 端末、または卓上のオーダーシステムがサービスの自動化を担うものであれば、上記のような仮説を持ち、自社業態のきわどさを点検する必要があるだろう。
KIOSK 端末の導入、またはサービスの自動化が求められ、またその普及を予感させることについては、いくつか背景がある。
ひとつは、安直な見方かも知れないが、人手不足である。未曾有の労働力不足といわれる近年のアメリカの産業界だが、現政権が唱える移民規制強化策とも無関係ではないだろう。
ただし、不思議と失業率について騒がれていない。日本と同様に、潜在的な失業率という見方があり、急激にフロントの無人化が進むかどうかは推測の範囲である。
もう一点、各企業における更なる効率化要素である。
店舗、メニューを通じて、いじるところはもう何も無いというほど高度に設計されているQS業態の利益の伸びしろは、既存店にしかないであろう。無人化については、大規模に着手する企業が現れても不思議ではないという見方は存在する。
この項は1回で終わらせるはずであったが、 KIOSK 端末だけ終わっては寂しいので・・・。次回も展示ブースからお届けします。
乞うご期待!
福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。
有限会社ノーデックス 代表取締役
文: 福本龍太郎