フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み ~電化厨房が変える作業環境

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境

現代フランス料理の祖、オーギュスト・エスコフィエ。彼の功績は料理の創作だけではなく、調理法の合理化、料理場の革新的な設計や衛生管理、料理人の労働環境改善と地位向上に尽くしたことなども挙げられる。
日本エスコフィエ協会も彼の遺志を継ぎ様々な取り組みを行っている。その中で一早く電化厨房の施設を取り入れその普及に取り組んでいる。今回は日本エスコフィエ協会の向佐勝シェフと伊藤彰彦事務局次長に話を伺った。

第6回 「TEPCO電化厨房エスコフィエ」から見える今後の厨房施設(2)

第6回 「TEPCO電化厨房エスコフィエ」から見える今後の厨房施設(2)

電化厨房を効果的に活用するためには、厨房機器と調理機器をバランスよく使用することが肝要であるというのが向佐勝シェフの言である。

電化厨房機器は日進月歩で進歩しているが、反面、調理機器はまだまだ改善の余地は大きいようである。最後に調理機器の現状と課題についてみていきたい。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 向佐シェフ 】 これ(写真1)がベルギー製の鍋です。今まで使った中ではずば抜けていますね。特長は7層でできているところですね。熱効率を上げるためにアルミ、銅といった金属を7層構造にしているのです。IH調理器は接地面だけに熱伝導するのですが、これは、その熱が周りにも効率的に伝わるので、煮物などをするのに最高ですね。しかも層が厚いから底が焦げにくいのです。ですからお菓子のソースやクリームソースなどを作るのも良いですよね。普通の薄い鍋だと、かき回していても焦げやすいですからね。

問題点は、コストですね。蓋つきで約4万円です。イニシャルコストがかかりますね。でも、業務用で10年間保証付きですし、使い方によってはそれ以上持ちますから長い目で見たら決して高くないと思いますよ。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境こっち(写真2)は、同じメーカーのフライパンです。この表面は、ダイヤモンド加工といって、金物を使っても殆ど問題ないのです。それに水も油も入れないで、いわゆる空焚きしても大丈夫なんです。普通のフッ素加工のフライパンで空焚き状態で豆を煎ったら煙が出ちゃいますけれど、これは全く平気なのです。あと、取っ手が非常に短いでしょう。それも金属のまま。こっちの鍋も同じですが、普通火にかけたら熱くてもてなくなってしまいますよね。これは1時間以上煮物をしていても全く熱くならないんですよ。

ベルギーやドイツはほとんど電気なんですよね。業務用も家庭用も。電気以外の厨房というのは本当に部分的なんですよね。そうすると調理器具もこのように進化したものがでてくるんですね。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境こっちのフライパン(写真3)は、日本製です。日本製の中では良くできている方なんです。角がこのようにアールになっているからかき混ぜやすいし、掃除もしやすい。この鍋(写真4)も同じメーカー製です。和食用なんですが、ステンレス-アルミ-ステンレスの3層でできています。外側のステンレスは熱効率が高い物を使っています。逆に内側は熱効率があまり良くない物を使っていますので冷めにくい。煮物に向いている鍋ですね。底に少し色が付いているでしょ。色が付いているということは、外側にゆがみが生じようとしているということなんです。この鍋は、いいステンレスを使っているからまだ何とかもっていますが、普通使われている薄い鍋だとゆがみが生じてしまいますね。鍋もフライパンも内側ではなく、熱に当たっている外側にゆがむという習性があるのです。外側にゆがんでしまうと、IH調理器の場合接地面が平らでなくなりますから熱効率が悪くなってしまうんですね。一方このベルギー製の鍋は全くゆがんできていません。このように調理器具の改善が日本では必要なのです。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境前回、ご紹介したとおり様々な料理に対応できる電化厨房機器がマーケットに出てきた理由の一つはオープンキッチンタイプの店舗が増えてきたからだという。今までのように室温の高い厨房と客席がオープンな空間で結ばれると熱気が客席側に流れてしまい快適な店舗環境を作ることができないからである。

また、食の安心・安全の観点からも電化厨房が期待されているという。昨今は、今まで以上に消費者の食に対する安全・安心に対する目線が厳しくなっている。そのような中、料理人の方々は、安全な料理を安心して食していただけるように様々な努力をしている。しかし作業状況によっては、冷蔵庫から出した物をすぐに調理できずに、常温どころか40℃の高温下の厨房内で、しばらく台の上においてから調理をせざるを得ないこともありうる。その点、25℃という快適な温度帯を維持することができ、清掃が楽で清潔な空間を維持できる電化厨房は期待に応えられる存在であろう。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境一方、日本エスコフィエ協会が目指す労働環境の改善という点では、今まで3K職場といわれてきた厨房であるが、電化厨房によって、3C(Cool,Clean,Control)といわれるまでになった。その後生産性の高さを示すP (Productive)を加えて、3C + P と認知されるようにまでなった。更に今では、Pの代わりに 「 Compact 」 「 Cost 」 の2つのCを加えて5Cとまでいわれているようである。

まさに電化厨房は、飲食店における “ ホスピタリティ ” を実現できる一つの大きな鍵になるであろう。

外食ドットビズでは、今後も様々な角度から電化厨房の将来性について考察と事実を皆様にお伝えして行きたいと考える。



日本エスコフィエ協会

日本エスコフィエ協会

http://www.escoffier.or.jp/

初代会長・故小野正吉(ホテルオークラ総料理長)が中心となり、日本の現代フランス料理の草分けともいえる25人の料理長が集まり1971年に創設。

近代フランス料理の祖オーギュスト・エスコフィエの弟子たちにより”エスコフィエが確立した近代料理術と伝統の継承と発展、調理技術の再教育などを目的としてフランスで設立されたエスコフィエ協会”の精神を基に、現在では、5代目の浅野和夫会長(マキシム・ド・パリ顧問)のもと、2007年9月に文部科学省から「社団法人日本エスコフィエ協会」の認可を受け、約1800名の会員の所属する協会として幅広い活動を行っている。

取材協力 担当シェフ 向佐勝氏(元ホテルオークラ、赤坂迎賓館総料理長)
事務局次長 伊藤彰彦氏

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