フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み ~電化厨房が変える作業環境

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境

現代フランス料理の祖、オーギュスト・エスコフィエ。彼の功績は料理の創作だけではなく、調理法の合理化、料理場の革新的な設計や衛生管理、料理人の労働環境改善と地位向上に尽くしたことなども挙げられる。
日本エスコフィエ協会も彼の遺志を継ぎ様々な取り組みを行っている。その中で一早く電化厨房の施設を取り入れその普及に取り組んでいる。今回は日本エスコフィエ協会の向佐勝シェフと伊藤彰彦事務局次長に話を伺った。

第3回 日本エスコフィエ協会の取組み~職場環境の改善(2)

第3回 日本エスコフィエ協会の取組み 職場環境の改善2

清掃のしやすさという点も電化厨房の優れた点であろう。機器の掃除の手間がかからないだけではなく、油煙や煤といった壁や床を汚す物質の排出もほとんど無いといった特性を持っているためである。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 伊藤氏 】 燃焼式のレンジの場合、煮こぼしたりするとパーツをはずしてふき取ったり洗ったり、穴詰まりをしたら先のとがった物で異物を取り外したりと掃除の手間隙がかなりかかるのですが、IH調理器の場合は布でさっとふき取るだけなんですね。この差は大きいですね。

以前、ファーストフードのチェーン店を経営されている方がここにへ来られたことがあるのですが、掃除の一点だけでも相当感心されていました。やはり経営者だけあって、すぐに時間給換算をされていました(笑)。年間換算をしたら相当コストダウンがはかれると仰られていました。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 向佐シェフ 】 働く側の人間にとっても掃除の時間が短いというのはありがたいことなんです。仕事が終わったらすぐに帰れますからね。大体閉店30分前にラストオーダーを取りますよね。その30分間というのはぱっと料理を作って、厨房内の掃除をする時間なのです。でも閉店時間までに掃除まで終わらせるというのはほとんど難しいですよね。お客様によってはラストオーダーで手のかかる料理を頼まれる人もいます(笑)。そうなったらほとんど閉店時間から掃除を始めることになりますから。

それに比べたら、IH調理器の後片付け時間なんてほとんど0に近いですよね。さっと拭き取るだけなんですから。

もう一つ大きいのが、床が汚れないことですね。空気中に油や煤が散っちゃうとそれが床や壁にくっ付いてしまいます。床の汚れは全然違いますね。それと料理人の作業服の汚れも全然違いますね。IH調理器を使っているところは洗濯代も結構違うんじゃないかな(笑)。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境電化厨房は直火を使わないため炎の立ち消えや不完全燃焼の心配がない。つまり爆発や一酸化炭素中毒などの事故が起こりにくく、安全で快適な作業環境が実現できる設備といえる。

直近でも6月に青森県の飲食店でプロパンガスが原因と思われるガス爆発が、7月には福岡市の飲食店でやはりプロパンガスの不完全燃焼が原因と思われる一酸化炭素(CO)中毒事故が発生している。不特定多数のお客様が訪れる飲食店においては安全で快適な環境の提供が必須である。

【 向佐シェフ 】 飲食店においては、リスク管理ということが非常に重要になってきます。飲食店で事故が起こると人的・物的損害だけでは無く、ブランドイメージが傷ついて経営自体に影響が及んでしまいます。

これだけ長い間この世界に身を置いているので、色々な事故を見聞きしてきました。ガス爆発や火災といった事故です。こういったリスクをヘッジするといったことは経営者にとって必要なことですね。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境昔、私は、スープ関係の職場にいたのですが、夜中に火をつけっぱなしで帰ったことがよくありました。伝統的なコンソメの味を出すには17時間コトコトと煮てダシをとらないといけなかったんですね。午後3時に作り始めても出来上がるのが翌朝の8時ですよ。そうなると火をつけっぱなしにせざるを得ない。さすがに一晩中その前で見ているわけにも行きません。どうしたのかというと、保安の方に何時と何時に見てくださいと頼むわけです。火が消えていたらつけておいていただく。火は消えちゃう方が怖いですからね。爆発の危険性がありますから。今考えると恐ろしいことをやっていましたよね(笑)。当時電化厨房があったら楽だったなぁ、特に精神的に、と今更ながらに思いますね。

フランス料理の一流シェフたちも認める現代型厨房施設 日本エスコフィエ協会の取り組み 電化厨房が変える作業環境【 伊藤氏 】 確かに今ならリスク管理の観点から火をつけっぱなしで帰ることなんか出来ないでしょうね。その点電化厨房なら夜中に仕込んでそのまま帰ることが出来ますから効率的な仕事ができるといえますね。

床が油分や煤で汚れないことは、清掃面だけではなく、料理人の安全面にも寄与している。油分や煤が床にこびりつくことによって滑りやすくなるからである。特に繁忙時には狭い厨房を走り回ったりして滑って転んでしまったら自らに被害が及ぶだけではなく、他の人間にも被害が及ぶ危険性があるからである。

ここまで、電化厨房の利点をお伺いしてきたが、何かしらの欠点もあると思われるので、次回はその点について考察していきたい。



日本エスコフィエ協会

日本エスコフィエ協会

http://www.escoffier.or.jp/

初代会長・故小野正吉(ホテルオークラ総料理長)が中心となり、日本の現代フランス料理の草分けともいえる25人の料理長が集まり1971年に創設。

近代フランス料理の祖オーギュスト・エスコフィエの弟子たちにより”エスコフィエが確立した近代料理術と伝統の継承と発展、調理技術の再教育などを目的としてフランスで設立されたエスコフィエ協会”の精神を基に、現在では、5代目の浅野和夫会長(マキシム・ド・パリ顧問)のもと、2007年9月に文部科学省から「社団法人日本エスコフィエ協会」の認可を受け、約1800名の会員の所属する協会として幅広い活動を行っている。

取材協力 担当シェフ 向佐勝氏(元ホテルオークラ、赤坂迎賓館総料理長)
事務局次長 伊藤彰彦氏

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