お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作り ~ベンダー&コンサルタントに学ぶシステム構築の近未来~

お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作り ベンダー&コンサルタントに学ぶシステム構築の近未来

エプソン販売株式会社主催のビジネスセミナー「第9回店舗経営戦略フォーラム」において、「お客さまに真の楽しさ・豊かさを提供しつづけるためのシステム作りとは…」と題したパネルディスカッションが行われました。外食コンサルタントで当サイト論説主幹でもある坂尻高志氏をコーディネーターに、情報システムベンダー企業の皆様をパネリストに迎え、売上確保から客数増大につなげるシステム構築について掘り下げたディスカッションの内容をエプソン販売株式会社様のご協力により公開いたします。

第2回 企業が今果たすべき課題や目標を達成するのが本当のシステム構築

齋藤
最初の議題は、『経営課題を見据えたシステム構築』についてですが、外食企業ごとに課題は異なると思いますので、今回は企業規模という尺度で皆様の経験談をお聞かせください。

宮川
1店舗から200縲鰀300店舗まで、いろいろなお客様のお相手をさせていただいていますが、規模に応じて、求められるものは変わってきます。私見ですが、1縲鰀5店舗の場合は、飲食業界が多様化しているからといって他に合わせるのではなく、「うちはこれでやっていく」というものを決めていただく時期かと思います。

30店舗クラスになってきますと、店長さん独自の考えなどのブレが生じて、本部システムを導入すべきだろうと思います。このクラスになりますと、自社でシステム部を持つことができる企業規模になってきていると思います。外食企業においては、それ位の規模でも経理担当者が集計を取っているところがあるようですが、ここを境に人件費や原価率の管理システムをしっかりと持つべきではないでしょうか。

100店舗に行くまでの間にしっかりシステム化できればいいと思います。100店舗になれば、ターゲット層に力を入れて儲けていく、セントラルキッチンを作って物流をうまく回すなど企業の目標に応じて、他社とは一線を画した仕組みを作っていくしかないと思います。

飯島
私どもは、 POSは単なる電卓、本部はあくまでも集計機という考えを持っています。POSを導入して売上の集計をするという点においては、店舗数はまったく関係ありません。ASPを中心にシステム提供する側の意見ですが、規模に応じたシステムという意識はありません。

ただし、人件費を取り上げてみますと、1店舗でパート・アルバイトが20名の企業と2000名の大企業を比較すると、管理方法は当然違います。ここは、どうにかしてシステム化しないと本部のコストが増大してしまいます。

例えば、給与明細書をPOSのレシートプリンターから出して、印刷費の高い袋とじ明細書を削減するということも必要でしょう。このような工夫を取り入れないと、大規模店になるにつれてコストが増大してしまうのではないかと思います。

桜井
10店舗の規模ですでにPOSを導入しているお客様がいて、POSの活用ができないということで、本部の仕組みを導入されました。ひと通り売上も見られて、発注もできるようになったのですが、そこの社長が「システム導入が早すぎた」と言っていました。最初に、どこまでシステムを入れて、何を改善するのかという目標がはっきりしておらず、こういうのが見られるのはいい、店も楽になるとったノリで導入してしまったことが原因です。我々も、最初の導入段階で、何を変えるのか明確にして共有しなければいけないと痛感しました。

速水
よくある話ですが、 5縲鰀10店舗位だと各店舗からいろいろ要望が出てまいりまして、カスタマイズしてしまうことがよくあります。そうすると、各店舗のオペレーションに合わせたそれぞれのバージョンのPOSができあがってしまいます。お店としては、便利になるでしょうが、今度は店舗数が増えてくると、本部で取りまとめるのが難しくなったり、ヘルプで他のスタッフが店舗に入ったりした時にPOSのオペレーションが全然違っているといった運用の問題が出てきます。

多店舗展開する段階では、企業としてのスタンダードを決めていくことが必要になります。その中で、各店舗のニーズを吸収できる遊びのようなものも用意して、個別の要求に対応していく仕組みにすることが大事ではないかと思います。

本部システムでは、ASPか買い取りにするかで悩まれる例が多いです。長期的に見てどちらが安いかというところですが、以前は、小規模ならASP、100店舗を超えると買い取りという意見が多くありましたが、最近は変わってきています。

例えば、500店舗で一気に棚卸しをすると、サーバーに同時にアクセスが集中します。それに耐えうるサーバーやネットワーク環境を自社内で維持されるのは大変になってしまうので、店舗数が大きく拡大するにつれて、ASPに戻って来られるお客様もいらっしゃいます。

坂尻
店舗の要望、本部の要望も関係してきます。私がシステム責任者だったときには、店のアンケートを取ったり、店長会議に参加して意見を収集したりしましたが、ほとんど店の要望は聞かなかったですね(笑)。私のやり方がそうだったというだけで、オススメはできないですが、例えばどういうものがほしいかと店長に聞くと、「インターネットにつなげて情報収集したい」「表計算ソフトやワープロソフトなどがほしい」という意見が多かった。あれば便利だねと言いつつ、ひとつも実現しなかったですね。

要するに、店でやりたいこと、本当にその企業が今やらなければいけないことを、システム責任者がしっかりと把握しておく必要があるのだと思います。表計算ソフトやワープロでやりたいということって、店長の仕事ではない場合が多いです。表計算ソフトで分析したいというなら、そういう道具を用意してあげればいい。店長が自らデータを活用して数表を作ったり、並べ替えたりということは必要ないわけです。店独自のチラシを作りたいなら手書きで十分。どうしてもパソコンを使いたかったら自分の物を持ってくればいいわけです。

店長自身がインターネットで情報を取らなきゃいけないことも、当時の私には何も思い浮かばなかった。地域の問題ならエリアマネージャーから情報提供できるでしょうし、店舗間や本部と店舗のコミュニケーションというのであれば、そういうツールを用意しておけばいい。逆に言うと、そういった装備が店長の足かせになったり、ネットによって危険な状況になったりすることを恐れたので、融通の利かないシステムを提供したのです。

今の時代は変わってきているかもしれませんが、店がやりたいことと本当に企業がやらなきゃいけないことがイコールにならないケースが多かったのです。そこを見極めないと、違和感があるシステムになってしまうような感じがします。



  1. 司会 齋藤栄紀 「外食ドットビズ」編集長
  2. コーディネーター 坂尻高志氏 外食コンサルタント
  3. パネリスト
    飯島真一郎氏 株式会社ブレーン・カンパニー 営業部マネージャー
    桜井謙一郎氏 クオリカ株式会社 ソリューション事業部 セールスマネージャー
    速水桃子氏 株式会社メディアミックス マーケティンググループ マネージャー
    宮川充氏 日本リテイルシステム株式会社 飲食営業担当 課長
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