飲食業界での起業を考える皆さんを応援する 「 起業家の道 」 。起業に向けて実際に行動を起こしている方の考えや活動内容をお伝えするとともに、その開店までを応援していくというコンテンツです。
記念すべき第1回の “ 起業家のタマゴ ” として登場していただいた柳生久輝さんは、2007年の開業を予定されていましたが、勤務する会社の都合で1年間カナダの店舗で働くことになりました。帰国後に再開された起業活動の状況と、海外勤務の経験を自分の店舗にどう活かそうとしているのか伺ってきました。
- カナダ店では、それまでの店長という立場から1スタッフになられたわけですが、改めて気付いたことはありましたか?
料理の味も大切ですが、店の雰囲気作りが店長の重要な仕事だということです。いくら売上が良くてもスタッフがいやいや働いていたら、長続きはしないだろうと改めて感じましたね。自分だったら、こうするだろうと思うこともなくはなかったですね。それが正解なのかどうかは分からないですが、僕が店長だったら、日本を意識させるというコンセプトをもっと強くしたと思います。ただ、起業を前にしたこの時期に、上に立つということを客観的に見られたのは意味があったと思います。自分がスタッフとして働いて店長に対して不満に感じたことは反面教師にできるし、いいことは吸収してすぐに活かそうと思います。
- 率直な質問ですが、自己資金は貯まる環境だったのですか?
チップがあるので、それを貯めると大きいですよ。ただ、それで旅行をしてしまったので残ってないですが(笑)。ヨーロッパ各国の観光地に行って、いろいろ食べて、お土産を買ったら、 1ヶ月で100万円近くを使っていました。せっかく旅行するんですから、観光や料理にお金を惜しみたくなかったもので。カナダで貯めようと思った金額は給料でキープできたので、チップはプラスαの収入として使いきりました。そうやって遊ばないと、勉強もできないですから。帰ってきてカードの請求を見た時は驚きました…。
- 現在の出店スケジュールはどうなっているのですか?
2009年春にオープンというスケジュールです。帰国してからも居酒屋で働いていますが、年明けに辞めさせてもらおうと思っています。自己資金も自分の目標の8割に到達しています。ただ、場所や物件によるので、どうなるか分からないですが、これ位あればいいかなという金額になっています。
- 渡航前にいくつか物件をご覧になっていましたが、物件探しはどういう状況ですか?
今は、具体的な物件よりも、自分が出したい街を探している感じです。そこから絞っていかないと、物件情報だけでは決められません。西東京で出したいという考えは変わっていませんが、それほどまでに強いこだわりがあるわけではないです。東東京の下町も面白そう。働きつつ、自分が気に入る街を探している状況です。
- 業態も含めた店舗イメージを頭に描いておられましたが、何か変化はありました?
旅行したスペインにちょっと影響されています。スペインには、タパス料理というおつまみの小皿料理みたいなものがあって、頼むとすぐに出てくるスピード感が印象的でした。マッシュルームの陶板焼きやジャガイモのオムレツといったものが、小皿でたくさん並んでいて、注文するとすぐに出てくるんです。それを取り入れるのも面白いかなと思っています。お通しとは違って、お客さんが選んだものがすぐに出てくるのはいいですよね。カナダにあったメキシコ料理の店で、マルガリータやいろいろなフルーツのカクテルをピッチャーで出すところがあって新鮮に感じました。それを外のテラスで飲むと気持ちいいんですよ。日本人なので、味付けは東京が一番ですが、各国各地でいろいろなアイデアを体験できました。いろいろな国を見てきましたが、冷静に考えると、東京で出店するのが一番難しそうですね(笑)。最もハイレベルな都市ですから。だからこそ面白いのかもしれないですが。
- 今回の海外勤務と旅行は、どのようなメリットがありましたか?
数えきれないですね。いろいろなものを見て刺激になりましたし、アイデアも広がりました。それに、お客さんとの会話のネタにできるのは大きいですね。独立に向けて、足踏みしたとはまったく思っていません。僕の独立を見越して経験を積ませようとしたのか、ただ人が足らずに海外勤務をさせたのか、社長の真意はわかりませんが(笑)、本当に貴重な時間を過ごさせてもらったと思います。
柳生さんのカナダでの日々や、ヨーロッパ旅行、日本に戻ってきてからの活動は、ブログで紹介されています。▽
柳生久輝
1977年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。美大生時代に居酒屋でアルバイトを経験。卒業後某酒造メーカーへ広告製作のデザイナーとして就職するも、居酒屋経営の夢強まり転職。元いた居酒屋グループの正社員へ。30才での起業に向けて修行中の29才。