最終章 さぁ、開店だ!

速習!起業リファレンス 外食.biz編集部篇

昨年の1月17日にスタートした 「 起業リファレンス 」 もこの第十一章でいよいよ最終章迎えることになりました。1年半に渡りご購読を頂きましたことを感謝いたします。これまで、飲食店舗の起業にあたってご参考にされたり、今まさに起業に向かってご参考にされている方も数多くいらっしゃると思います。この業界が活性化するには皆様のご活躍が非常に重要なことと考えております。大成功せずとも失敗のしないお店作りのためにお役に立てれば幸でございます。

第5回 営業日報と必要帳表


最終章 さぁ、開店だ!

 第5回
 営業日報と必要帳表

企業経営している店やチェーン店では、当たり前の帳表として 「 営業日報 」 を毎日書き、店舗に保管し、本部にも送られます。しかし、個人経営の店では書いていないところが多いようです。毎日の営業状況を振り返り、点検して、改善を繰り返すことによって初めてお客様に愛される店へと成長します。

営業日報は 「 日記 」 ではありませんので、単なる感想だけではなく、今日一日の営業状況が、ひと目で確認できるものでなくてはなりません。また、今後の店舗運営を健全化させていくための必要な情報も残しておかなくてはなりません。まず、必要な情報を洗い出し、フォーマット化して、毎日必ず記入し活用するようにしましょう。サンプルの 「 営業日報 」 をもとに、ポイントを確認していきましょう。

営業日報をダウンロード

 

売上高
店舗の売上には、「 飲食 」 の他に 「 テイクアウト 」 「 物販 」 「 サービス料 」 なども計上されます。これら明細別に金額を把握しておきましょう。さらに、売上はすべてが現金とは限りませんので、現金以外の会計での明細も把握しておきます。つまり、一口に 「 売上 」 といっても、「 (1)売上高(税抜・明細) 」 「 (2)税込売上高 」 「 (3)現金売上高 」 の3つは抑えておかなくてはなりません。

(4) ~ (13)は、現金の動きが分かるような項目になっています。店では会計時に必要な 「 釣銭 」 を一定額確保しておかなくてはなりません。確保する釣銭は、基本的には売上金から充当しますが、売上が上がる特定曜日とか、金融機関が休みとなる期間では、通常より多めの釣銭額が必要となります。その動きが分かるように (8) ~ (10) で確認します。

売上金は金融機関に預けます。その方法は、

 

1. 夜間金庫

2. 金融機関窓口に行って入金する

3. 現金回収会社へ依頼

などいろいろな手段がありますが、いずれにしても、日別に 「 (11)銀行入金額 」 を明確にしておく必要があります。計算方法は、【 (4) + (6) − (7) − (8) + (9) 】 で算出します。

さらに実際の現金売上高(レジで確定される現金売上高)と、現金在高での差 [ (13)現金過不足額 ] も明確にしておきましょう。過不足額が発生する原因は、“ 釣銭受け渡しミス ”、“ 計上されなかったお金の移動 ”、“ 不正 ” などがありますが、いずれも発生してはいけない事象ですので、過不足額の発生時には対策を講じておきましょう。

 

時間帯別営業状況の把握
サンプルの右上には、時間帯別の数値が記入できる欄を設けています。時間帯とは、一日の営業の中での、営業特性上の区分です。ここでは幅広く、「 モーニング 」 (通常7:00~11:00)、「 ランチ 」 (11:00~14:00)、「 アイドル 」 (14:00~18:00)、「 ディナー 」 (18:00~22:00)、「 深夜 」 (22:00以降)の4時間ずつ分けていますが、業態によって時間帯の考え方は差がありますので、実情に合う形で管理してください。

大切なのは、それぞれの時間帯ごとの営業状況 (売上・組数・客数・客単価・労働時間) を把握することで、メニュー構成、キャンペーンのやり方、販促、店舗の運営政策に活かすことです。一日のグロスの数字では見えてこない店の状況を、このような区分で確認しましょう。

 

経営指標等の管理項目
サンプル右中は、「 労働時間 」 「 人件費 」 「 総客単価 」 「 原価率 」 「 人時生産性 」 と、この日の特記事項が書ける欄を用意しています。「 労働時間 」 と 「 人件費 」 の数字は日々管理しておきましょう。「 原価率 」 については、「 メニュー別販売数 」 と 「 メニュー別原価率 」 で理論上の原価率が計算できます。理論上の原価率が解れば、「 人時生産性 」 は、【 粗利益(売上−原価) ÷ 労働時間 】 で計算できます。「 人時生産性 」 は飲食・小売系業種の最も重要な生産性指標のひとつです。労働時間1時間でいくらの粗利を稼いでいるかを見る指標で、飲食業種では5000円を目指しましょう。少ない時は 「 無駄な 」 労働時間が発生している事になり、「 店舗作業の見直し 」 「 人員配置計画 」 「 教育/訓練 」 「 原価構成 」 の改善をする事で、「 人時生産性 」 はアップします。

「 総客単価 」 は 「 飲食売上 ÷ 客数 」 で求める方法と、「 売上全体 ÷ 客数 」 で求める方法があります。管理指標には決まり切った公式はありませんので、自分達の政策課題がより見える算出法で行うのがいいでしょう。この例では、前者はメニュー開発のベース数値になり、また、居酒屋業態等では営業中でのドリンクや商品の販促効果を見るには最適でしょう。後者は、飲食以外の要素を入れることで、店全値の営業形態の改善に役立てられます。

「 天候概要 」 「 イベント特記事項 」 については、主に 「 売上 」 を上下させた要因を書いておきます。一般的な日報では、温度とか天気を記載する項目はありますが、それだけでは売上に影響した要因が見えません。例えば、“朝から激しい雨だったが、12時前からは晴れた” “○○公会堂でコンサートがあり、21時以降の入店者が多かった” など具体的な記述があれば、後の営業政策に役立てることができます。

 

その他帳表
サンプルとして 「 時間別実績表 」 「 営業管理表 」 を用意しました。「 時間別実績表 」 は、一時間ごとの実績が 「 曜日別傾向 」 で見られるフォーマットになっています。ワークスケジュールや食材発注での基本数値となります。また、「 営業管理表 」 は予算と実績が確認できるフォーマットです。実績が積みあがってくれば、「 昨年対比 」 という項目を増やして前年との比較もしていきましょう。

時間別実績表をダウンロード

営業管理表をダウンロード

日報上の数値や各種帳表は、EXCELを活用する事で簡単に作成できます。また、飲食店用のPOSを使えば、基本数値は把握出来ますので、営業準備の段階で検討していきましょう。

さぁ、営業開始!でも、本当の努力と苦労はここから始まるのです!

 

 


 
 
外食ドットビズ 論説主幹・坂尻高志
外食ドットビズ編集部

外食大手のすかいらーくに20年以上勤務した後に外食経営コンサルタントとして起業した論説主幹・坂尻高志。
外食向けオーダーエントリーシステム(OES)を日本で初めて世の中に出し、現セイコーインスツルをOES大手に育て上げた後やはり外食経営コンサルタントとして起業をした主幹・酒美保夫。
外食ドットビズに携わる多彩な起業家経験者が、外食産業で起業を目指す皆様に起業家マニュアルをお届けいたします。
 

第一章 起業をめざして… 心構えはOK?
第二章 店舗コンセプトの決定 ~そもそも、何がやりたいのか?~
第三章 出店地と物件の決定 ~まずは足で探そう!~
第四章 店舗設計と各種申請手続き ~イメージを具体化しよう!~
第五章 メニューをつくろう Part1
第六章 メニューをつくろう Part2
第七章 飲食店のサービスとは Part1
第八章 飲食店のサービスとは Part2
第九章 店舗運営ノウハウ Part1
第十章 店舗運営ノウハウ Part2

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