第5回
スタッフの募集 ~ 面接から採用まで(2) ~

飲食店にとって、パート/アルバイトは重要な戦力です。飲食店の経営構造では、食材原価と人件費がコストの大部分を占めます。一般的な企業の会計原則では、人件費は 「 固定費 」 科目であるのに対して、飲食店では 「 変動費 」 で計上します。つまり、売上(客数)の変動に対して、人件費もコントロールしていかなくてはなりません。これを達成するには 「 ワークスケジューリング(次章で解説) 」 という、店長の重要なマネジメント技術が必要となります。
飲食店では、季節・曜日・天候、もしくは一日の時間帯によって大きく客数が変動します。お客様の多い時には、多くのスタッフによって対応しなくてはなりませんが、少ない時はスタッフの人数も減らさなくてはなりません。スタッフが正社員ばかりでは、それぞれの勤務時間が長いため、お客様が少ない時でも無駄な人件費が発生してしまいます。その無駄をコントロールするために、パート/アルバイトを活用して、お客様の来店動向に合わせたスケジューリングをする必要があるのです。
忘れてはならないのは、このパート/アルバイトの作業レベルが、そのままお店の評価になるということです。店長の教育・訓練スキルが重要なのはいうまでもありませんが、パート/アルバイトの方たちの資質やモチベーションも店の運営を大きく左右します。
採用をする前に、以上の事を再確認してから面接に臨みましょう。ただ残念なことに、飲食店の経営者は、「 10人採用すれば3人位は残ってくれる 」 「 ダメだったら切ってしまえばいい 」 と考えている人が多いようです。これは大手チェーンストアも同様です。いつまでも、このような考えをしていると、多額な費用をかけて募集しても人が集まらず、店舗運営そのものに支障が出てきます。
人が集まらないからといって、採用の妥協点を落とすこともしてはなりません。パート/アルバイトであっても、あなたと共にお客様に接していくのですから 「 共同経営者 」 を採用するつもりで面接しましょう。
面接時のポイントは次の通りです。

この面接表は履歴書代わりに使います。仮に不採用であっても一年間は保存すること。
雛形:面接表

基本的な要件は、「 飲食店ビジネスに興味があること 」 「 仕事を覚えようとする意欲があること 」 「 指示に従ってもらうこと 」 の3つ。

基準を外れた身だしなみについては直すことが条件で、普通の挨拶ができないような人の採用は難しいでしょう。店の運営はチームワークですから、勝手な行動は、全体の秩序を乱すことになります。「 電車の事故で勤務時間に間に合わない。あなたはどうしますか? 」 「 お客様側の不注意で料理を床にこぼしました。どうしますか? 」 といった質問を投げかけてみるのも有効な方法。

応募者は緊張しているので、普段の顔が見えづらいもの。「 趣味 」 等の会話の中で、個性を引き出しましょう。特に 「 笑顔 」 は重要です。敬語を使えるかも要チェック。
面接表に書いてもらった曜日別の勤務可能時間は、スケジューリングする時に守らなくてはなりませんが、すべてを保証するものでは無いことを予め伝えておきましょう。スケジュールは、2~3週間前には提示することを約束し、売上によって勤務時間も変動することを伝えます。多く働きたかったら、早く自分の右腕になってくれる努力をしてもらいましょう。
前述した通り、応募状況が悪くてもあなたの基準を下回る人の採用は厳禁です。また、どのような状況であっても、「 主・従 」 の関係をはっきりさせておきましょう。飲食店の主は当然 “ お客様 ” ですが、店舗運営組織の観点で見れば “ 店長 ” です。優秀なアルバイトでも、年上のスタッフであっても、店長を主とした組織構造を崩してはなりません。


パート/アルバイトに応募してくる方は、飲食店の仕事が好きだという方が大半だが、基本的には 「 お金を稼ぎたい人々 」 。面接にありがちだが、「 給料はいくらぐらい期待しますか? 」 「 最低何時間働きたいですか? 」 といった質問はタブー。あらぬ期待を抱かせることになり、後々トラブルになることが多いのである。
|