第3回
クレーム対応実例・商品関連編

ある大手チェーン店本部の 「 お客様対応窓口 」 では、ここ数年、カロリーや栄養成分をはじめ、食物アレルギーの問い合わせが急増しています。
食品衛生法では、加工食品について、「 卵 」 「 乳(牛乳) 」 「 小麦 」 「 そば 」 「 落花生 」 の5品目の表示が義務付けられています。この5品目は、発症した時の症状が重く、生命に関わるため、特に留意が必要なもの 【 そば・落花生 】 と、症例数が顕著に多いもの 【 卵・牛乳・小麦 】 を特定しています。また、「 あわび 」 「 いか 」 「 いくら 」 「 えび 」 「 オレンジ 」 「 かに 」 「 キウイフルーツ 」 「 牛肉 」 「 くるみ 」 「 さけ 」 「 さば 」 「 大豆 」 「 鶏肉 」 「 豚肉 」 「 まつたけ 」 「 もも 」 「 やまいも 」 「 りんご 」 「 ゼラチン 」 については可能な限り表示することが求められています(詳細は厚生労働省など関連HPで確認してください)。
飲食店については、現時点では法的な義務はありませんが、外食企業の多くは、ホームページで情報公開したり、店舗に必要なパンフレットを置いたり、社内教育の中で必要な知識を教えたりしています。中には、調理工程や製造工程の中で、微量ながら混入してしまう可能性があるものについても、情報開示しているケースもみられます。
ここで重要なのは、アレルゲン表示については “ 時代のニーズ ” であると理解することです。食の様々な問題が顕在化している昨今、その最前線にいる飲食店は、お客様の健康と安全性の確保について、社会的責任を負っているという使命感を持つべきでしょう。
異物混入とは、料理の中に食材以外のものが入ってしまうことをいいます。よくある例では、髪の毛・虫・プラスチックや金属片等が多く、店側はそれらが混入しない対策を事前に打っておくことが重要です。
【 対策例 】
髪の毛 :
・身だしなみのルールを決めて徹底させる。
・特に、女性の長い髪の毛は必ず束ねさせる。
・粘着テープの付いたローラー等で、ユニフォームに付いた髪の毛を取り除く。
虫:
・外気が直接入らない店舗構造にする。
・生鮮野菜類もしくは冷凍野菜は解凍後、必ず流水で洗う。
・厨房内は絶えず清潔な状態にしておく。
金属片等:
・ホチキスやクリップなど料理に必要ないものは厨房に持ち込まない。
異物混入のクレームが発生したら、必ず再発防止策を打つためにも 「 異物 」 を回収してください。お客様への対応については、お詫びした後、同じ料理を作り直すことを告げましょう。このことによって、もう食事をする気が無くなったと言われたら、その料理の代金は返却してください。何とか穏便に済ませようという気持ちから、必要以上の代金返却をする場合がありますが、これは慎んだ方が賢明です。また、明らかにお客様側の過失と思われる場合であっても、確たる証拠が無ければ追求は避けましょう。


商品のクレームの場合、体調が悪くなったなどの理由で、病院で診察を受けたいと望まれるお客様もいる。原則として、明らかに店側に落ち度がある場合は、診察代と病院への交通費は負担すべき。この種のクレームでは、「 仕事ができなくなった分の負担をしろ 」 とか 「 誠意を見せろ 」 という要求もよくある。しかし、休業分の保障は明らかに過剰な対応だろう。また、「 誠意 」 というのは、金品ではなく、心よりの謝罪と料理代金や診察代などの初期対応費用の負担、それと具体的な再発防止策を打つことである。お詫びの気持ちから、お客様のいいなりになってしまうケースがあるが、金銭的な補償は切り離して考えるべきだろう。
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