第1回
クレーム(苦情)について
「 飲食店にはクレームがつきものです 」 と書くと誤解を招くかもしれませんが、自分たちが良かれと思ってしたことが、お客様を傷つけてしまうこともあれば、同じ料理でも美味しいと感じる人・不味いと感じる人が出てくることもあります。当然、クレームは発生させないに越したことはないのですが、100%全てにおいて完璧に対応するのは、まず不可能といえます。クレームは発生するものだと言う前提に立ち、その対処の仕方や心構えについて考えてみましょう。
大きく分けてクレームには、「 商品クレーム 」 「 サービスクレーム 」 「 雰囲気その他のクレーム 」 の3つに大別されます。それぞれ件数の多い代表的な事例と原因を掲げてみます。

(1) 髪の毛や虫などの異物混入
(2) 食器やグラス類の汚れ、チップ(欠け)
(3) 濃過ぎる、甘過ぎる、塩辛いなど味に関するもの
商品に関するクレームは、お客様の健康や安全確保に直結する極めて重要な問題です。原因の多くは厨房作業の中から発生します。厨房担当者の身だしなみの徹底や手洗い等の基本的な衛生管理を再確認しましょう。また、定位置管理が乱れている時も発生しやすくなります。必要なものが決められた場所に置かれているという、当たり前の管理を徹底してください。
味については、クレームが発生した商品を必ず食べて原因を追求しましょう。また、ソース類やスープの様な料理のベースとなるものについては、複数の人が「味見」をする習慣をつけましょう。

(1) 言葉づかいや態度が悪い
(2) 注文したものと違っている
(3) 服を汚された
サービスに関するクレームは、その店の評価を決定付けます。前章で述べた通り、個々の仕事については、それぞれ重要なポイントがあります。お客様から指摘されたことについては、その担当者へ直ちに教育/訓練を施さなくてはなりません。正しいサービスができるまでは、接客担当から外す勇気も大切です。サービスレベルの質を高める為には、 OFF-JT(業務を離れてトレーニングすること)も重要です。スタッフがそれぞれ接客係とお客様になって、お互いのサービスや言葉づかいをチェックしあいましょう。普段の何気ないクセや動作が、意外とお客様の立場になってみると不快に感じるという発見もあるかもしれません。

(1) 店が汚い、トイレが汚い、床が汚れている
(2) オシボリ、トイレなどで異臭がする
(3)空調不備、 BGMがうるさい
お客様が雰囲気や店舗の状況に不満を持つと、来店の動機を失います。従って、客数は減少し続けます。食事には直接関係ない些細なことが、大切なお客様を失う結果になってしまうのです。店の隅々まで目を行き届かせ、絶えずお客様の視点で見つめましょう。
このように、クレームと言いうのはあらゆる原因から発生します。このリファレンスでも何度か書いてきましたが、店舗の QSCのレベルが、お客様の期待を大きく上回った時に感動を与え、下回った時には不満を生じさせてしまうのです。その不満が具体的な形で表現されたものがクレームです。
お客様は、食事を楽しむために店に来店されているのですから、多少嫌なことがあっても、雰囲気を壊さないために我慢をしてしまうケースが多いものです。従って、クレームが発生するというのは、今までいくつかあった不満が爆発したものかもしれません。
クレーム対応の基本は、次の通りです。
1. ご迷惑をお掛けした事についてお詫びをする(謝る)
2. お客様の言い分をきちんと聞く(店側の話はしない、聞き上手になる)
3. すぐに対策を講じる
4. 指摘して頂いたことに感謝する
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クレームは対応の仕方によって、そのお客様をファンにする可能性もある。店を良くするご指摘を頂いたと理解して、感謝の気持ちを忘れてはいけないのである。だから、お客様への対応は、責任者である店長が自ら行わなくてはならないのだ。一番怖いお客様は、不満を感じながらも、店にはひとことも言わず、二度と来ない方だと理解しておこう。
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