第2回
主軸商品の販売構成比とその戦略
第5章の1回目で、「強い店の原理原則は、“強い商品を持っている”こと」と書きました。メニューにはそれぞれ明確な役割があり、「販売数も利益も多いメニュー」「販売数は多いが利益が少ないメニュー」「販売数は少ないけど利益の取れるメニュー」に区分けされます。この区分けで言えば、「販売数が少なくて儲けも少ないメニュー」もありますが、これは言語道断です。
しかし、さまざまな企業のABC分析をしてみると、「販売数が少なくて儲けも少ないメニュー」が驚くほど存在しています。一度メニュー化すると、心情的に改廃する勇気が持てない。しかし、売上をアップさせたいので、新メニューが次々に投入される…。最終的に、何の店だか分からなくなり、客数が減りつづけるという悪循環に多くの飲食店が陥っています。
強い商品というのは、言うまでもなく「販売数も利益も多いメニュー」です。このメニューの構成比と認知レベルを大まかに捉えると次のようになります。
販売構成比 50%以上
飲食の専門店に見られる数値で、実質的な独占状態です。しかし、この構成比は多くの問題も持っています。いわゆる看板商品ですから、絶えず質のレベルアップをしていかないと、商品が硬直化してしまい、店自体の存在も危うくなってきます。同一カテゴリーで、次の主役を育てていかなくてはなりません。
構成比 30%~50%
販売構成比が 30%を超えたあたりから、お客様は、「商品と店舗の存在価値」を認識しはじめます。多少値段が高くても、商品価値がそれを上回ると判断して、確実にその商品を目当てに来店してくれます。この構成比を獲得できれば、「強い商品」作りがひとまず達成されたと言えるでしょう。次のステップとして、その商品の上位メニューを作ると、売上は確実にアップしていきます。ただし、上記のような過半数超えになると、危険もはらんできますので、地域の特質やトレンドを睨んだメニュー作りも必要になります。
構成比 10%~30%
10%超えは、主軸商品作りの最初のステップです。20%近くになると、「この店には、この商品がある」というお客様の認知が確実に高まります。従って、この商品を軸に販促やキャンペーンを打つと効果が大いに期待できます。この商品を目当てに来店されるお客様が圧倒的に多くなりますので、商品のさらなるブラッシュアップは必須です。これを怠ると客数に影響してきます。
構成比1ケタ
7%前後が限界点でしょう。この段階なら、まだまだメニューとしての役割を果たす可能性がありますが、7%以下になると完全な“死に筋”です。メニューから撤去した方が無難でしょう。
この数値はひとつの目安でしかありませんが、主軸商品のターゲットを明確にし、商品のブラッシュアップと営業力によって、販売構成比をさらに高めていくことが初期段階では重要なポイントです。営業力とは、おすすめ商品としてスタッフ全員に徹底させること、差込メニューとして目立たせることなどです。さらに、店頭のポップやチラシ等による販促も有効でしょう。


さて、問題です。日本で一番人口の多い都市はどこでしょうか?
答えはもちろん東京。ほとんどの人が正解できるだろうが、では、二番目に多い都市は?三番目は?となると、急に正解率が低くなるだろう。これは、狭い商圏にたくさんの競合がある飲食店も同じこと。誰もが思い浮かべるのは、やはり第一位のお店だけなのである。目指すべきは地域一番店。強い商品作りのみがそれを実現させてくれるのだ。
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