第2回
申請手続きの流れを理解しよう (2) その他の申請
「 営業許可 」 の取得とともに、必要な申請も多々あります。特に、初めて起業される方は、次の申請手続きについて理解しておきましょう。
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食品衛生法では、各店に 1人の「食品衛生責任者」を設置することが義務付けられています。食品衛生責任者には、栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士、食品衛生管理者等の公的資格者であれば自動的になれますが、これらの資格を有していなければ、所轄保健所が開催する「食品衛生責任者講習会」を受講して取得しなくてはなりません。
受講資格者は 17才以上(高校生除く)、講習内容は「衛生法規」「公衆衛生学」「食品衛生学」から成り立っています。講習の最後にテストがあり、それに合格すれば、「食品衛生責任者」に認定されます。講習内容は地域によって異なりますが、月に数回ほど開催されますので、早めに取得しておきましょう。ただし、この資格は、各都道府県単位のみ有効です。東京で取得した資格は、埼玉では使えません。出店地以外の都道府県で資格取得をした場合は、改めて出店地の資格を取得しなくてはなりません。
飲食店営業許可申請の時に、食品衛生責任者設置届をします。営業許可が下りたら、「食品衛生責任者 ○○○○」と書かれたプレートが交付されます。営業許可書とともに店内に掲出することが義務付けされています。
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店舗・事務所・マンションなど、一定数以上の人が入る建物には、「防火管理者」の選任が必要です。防火管理者とは、火災の防止と火災発生時の人命の安全について、その対策を打つ責任者のことで、必ず 1名を選任します。
飲食店の場合は、「避難経路を熟知していない不特定多数の人が出入りする建物」であり、「特定防火対象物」という扱いになります。収容人員が 30人未満の場合は不要ですが、30人以上になると、防火管理者の設置が必要となります。なお、この場合の「収容人数」とは、従業員およびお客様の総計という意味です。
防火管理者には「甲種」と「乙種」の 2種類があり、どちらを適用させるかは、店舗延べ面積で決まります。300㎡以上の時は「甲種」、300㎡未満は「乙種」となり、いずれも所轄の消防署が主催する「防火管理者講習」を受講して資格を得ます。
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個人事業主であれば、事業を開始した日から1ヶ月以内に、住所または事業所の管轄税務署へ届出ます。
個人事業の場合の「開業届」は、義務ではありません。届出をすると翌年から「確定申告書」が税務署から送付されます。また、開業届とは別に、「青色申告」をする場合、事業開始から 2ヶ月以内に、「青色申告承認申告書」を税務署に提出します。これも義務ではありませんが、青色申告は税務上の特典を受けられますから、利用された方がいいでしょう。
法人の場合は、設立後 2ヶ月以内に、「法人設立届出書」「定款のコピー」「登記簿謄本」「株主等出資者の名簿」「設立時の貸借対照表」等の関連書類を提出することが義務付けられています。詳細については、管轄の税務署で確認して下さい。
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法人の場合は、従業員を 1人でも雇用している事業所については、「健康保険」「厚生年金保険」は強制加入となります。社長もしくは役員であっても、法人に使用されているという意味で従業員扱いです。
個人事業については、飲食店の場合は任意加入となります。詳細は所轄の「社会保険事務所」で確認して下さい。
また、「雇用保険」「労災保険」については、法人・個人とも、常時 1人以上の従業員を雇用している場合は加入しなければなりません。
「雇用保険」についてはハローワークで、「労災保険」については労働基準監督署で詳細を確認してください。
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以上が、飲食店開業における「申請業務」の概要です。慣れないと少し面倒かも知れませんが、いずれも重要な手続きです。所轄の関連機関とよく相談をしながら進めるようにしましょう。
開業時の申請業務は、とても大変に思えるだろう。しかし、いずれの届出も、来店されるお客様の安全と安心を保障するものであり、また、一緒に働いてくれる従業員の仲間に対しての安心にもつながる。誰もが安心できる環境を提供することは、起業家にとって最も重要な仕事のひとつである。
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