失敗を学びに変える飲食店経営学 どん底を経験したから今がある ~プロレスラーを経験した経営者 株式会社ワールド・ワン 河野圭一氏

失敗を学びに変える飲食店経営学 どん底を経験したから今がある プロレスラーを経験した経営者 株式会社ワールド・ワン 河野圭一氏

『失敗は成功のもと』という言葉があるが、まさにその言葉を実体験した経営者が株式会社ワールド・ワンの河野圭一社長である。飲食店で起業するも数年で儚くも撤退、その後プロレスラーという異色の経歴を経て、再度飲食店の経営に乗り出し、いまでは神戸三宮地区に11店舗(内1店舗は大阪・京橋)を構えるまでになった。今回は河野社長に失敗から学ぶ飲食店経営についてお話をお伺いした。

第4回 メンバーとつくりあげた理念だからこそ共有できる

第4回 メンバーとつくりあげた理念だからこそ共有できる

琉球料理とあぐーの店 卑弥呼- 他店舗化へ道のりでご苦労されたことをお聞かせ下さい。

2002(平成14)年に “ modern食堂 金魚 本店 ” をオープンしてから、同年9月には ” 琉球料理とあぐーの店 卑弥呼 ” 、翌2003年に ” 炭旬鮮市場 からす ” を三宮にオープンしました。順調に見えますが、3店目を出した頃からまた壁に突き当たりました。店にはお客様が来てくれはるんやけど、何かしっくりこないんです。お店が増えると当たり前ですが人も増えてきます。そうすると色々な人が増えて来るんです。その中にはプライドだけが高い職人気質の料理人さんなんかもいるわけですよ。そういう人たちは 「 俺は何でもできるんや 」 「 俺はやってやってるんや 」 という態度なんです。ホールの子もキッチンの子も、社員もアルバイトも何とか一生懸命頑張ってくれてるんですけれど、そういう人がいると 「 ホールがちゃんとしないから料理が駄目なんや評価されへんのや 」 とか 「 キッチンが駄目だからアカンのや 」 とかお互いが内々で摩擦を起こし、みんなばらばらになってしまい、お客様が不在の状態になってしまったんです。

確かに僕自身もまだまだだらしなくて、サンダルに短パンでアロハシャツを着て金髪でやっていました。「 これはいかんな 」 「 自分自身が変わらなアカンな 」 と思い、ある日突然スーツカンパニーで10000円のスーツセットを買って、ネクタイを締めて、黒髪に染めて行ったんですよ。ホンマ恥ずかしかったんですけど、「 おはよう!」 と元気良く店に行ったんです。案の定、みんなからは大笑いされました、「 審判みたいや 」 などと(笑)。

株式会社ワールド・ワン 経営理念 (会社案内より)その時にちゃんとした挨拶をしよう、「 ちーっす 」 とか聞いていないふりとかはせずに、上下も関係なく会うた瞬間にちゃんとした挨拶をしようと提案しました。職人気質のおっさんの中には、「 挨拶して売上が上がるんかいな 」 とか 「 挨拶なんかやっておれるかい 」 などと斜に構えた人もいましたが、自分自身率先して挨拶を励行していくことにしました。また、この時に ” こういう会社をつくりたい ” ということを漠然と書いてプリントに刷ってみんなに配ったんです。恥ずかしかったんで 「 笑いたい奴は笑ろうてくれ 」 「 馬鹿にする奴は馬鹿にしてくれ 」 と言いながら。これが今の経営理念の原型にあたるものです。

炭旬鮮市場 からす何人かの人は 「 やっとれるかい 」 と辞めていってしまったのですが、残ったメンバー全員で経営理念を理解しようということで、3店舗とも3日間閉めて、六甲山の山奥の施設を借りて合宿をしました。ホンマ中身の濃い合宿でした。最終日には物凄くいい空間ができて、今まで反抗的だったおっさんが涙を流してくれたり、若手メンバーからは 「 これからは僕らが絶対にやって行きます 」 と立ち上がってくれたりと、最後はみんなで固い握手を交わしながら終えることができました。

最初は自分の思いを印刷して配っただけでしたが、合宿などを通じて立ち上がってくれた若手たち、彼らが今の幹部となっているんです、が物凄く強い思いを持って(明文化された)経営理念を下の子達に伝えてくれるようになりました。今では老若男女、国籍を問わずこれを暗記して、大きな声で暗誦してくれるようになりました。職人のおっさんも、週3回しか入らない中国人アルバイトも片言で暗誦してくれるんです。ホンマみんなで一つの目標に向かって、同じベクトルで、各々が各々の役割をきちんとやって行くという流れができましたね。



河野圭一氏

株式会社ワールド・ワン

http://www.world-one-group.co.jp/

みんなが世界に向けて一つになって、世界でたった一つの、そして世界で一番のチームをつくりたいとの想いから名付けられた。

代表取締役 社長 河野圭一氏
1971年 兵庫県神戸市出身
1996年 株式会社ワールド・ワン設立
自動車整備士、プロレスラーという異色の経歴を持ちながらも2002年神戸三宮に沖縄郷土料理店「modern食堂 金魚 本店」を出店。その後ほぼ年間1店舗の出店を重ね現在三宮に10店、京橋に1店の計11店舗を展開中。

文:齋藤栄紀
ページのトップへ戻る