カリスマ親父社長の“だから飲食店はおもしろい” 楽コーポレーション 宇野隆史氏

カリスマ親父社長の だから飲食店はおもしろい

大皿惣菜料理の草分けといわれる居酒屋「汁べゑ」の創業者であり、「くいものや楽」を中心とする多数のグループ店舗を手掛けている宇野氏。居酒屋経営者としての顔のほか、グループ店舗で社員を育て、独立開業まで導く「宇野道場」の“オヤジ”という一面もお持ちです。
厳しくも温かい教育方針で、宇野氏のもとを卒業したOBは300名近くを数え、日本全国はもとより海外でも繁盛店を作り上げています。
宇野氏が考える外食産業の魅力から、大規模チェーンとは異なる個性を活かした店作りのノウハウから、「宇野道場」で教える起業のための心掛けなどを語っていただきました。

第6回 お客さんと一緒に楽しみ、気持ちを伝え合える店が理想

お客さんと一緒に楽しみ、気持ちを伝え合える店が理想自分の店を持つには“イメージを持つ”ことが重要。こういう店を持ちたいとイメージして努力すれば必ず成功する。うちの社員にもいっているが、イメージはあるが、貯金できないようなヤツはダメ。これだけのお金があれば、どこにどういう店ができるんだと想像して実践に移すことが大切だね。この考え方は、学生時代にやっていた百科事典セールスのバイト先で、アメリカ人マネージャーから教わった。彼が「夢は持ってるか?」と聞くので、「将来は店をやりたいが、いまは車を買うことが夢だ」と答えた。そうしたら、「その車はどこに売ってあり、手に入れるためにいくら必要で、貯まるまでどの位の日数が掛かるか?」と聞いてくる。答えに窮していたら、「いくら貯めるから何ヵ月待ってくれと販売店に告げられるようでなければ、本当の夢じゃない」と教えられた。イメージを現実的に考えろという教え方は、とても分かりやすかった。それを社員に教えてやることが僕の役目。飲食店では、電子レンジの威力は絶大で、ある店とない店では大きな差が出ることは誰でも痛感する。問題は、そこから、いい電子レンジを3台買うために10万円を貯める努力ができるかどうか。そういった現実的な課題をクリアしていくことが、自分のイメージを具体化してくれるはず。

店を持ったら、自分のポジションを考えることが大切。僕は、大手チェーン店がとなりに出店してくれたらチャンスだと教えている。地域に人が増えるからありがたいのです。僕らの店とチェーン店では店のレベルが違う。資金力のある大手チェーンを目指してもなれるわけがない。だとしたら、自分たちのポジションはどこか。店長の息子がお客さんと街の中で会話をするような関係、そういったポジションに付けるのが我々の店のメリット。「オヤジがんばってるか?」なんて自分の子供が客に声を掛けられる。飲み屋のオヤジは、その客に向かって「残したらぶっとばすぞ、コノヤロー」といえるような関係を目指すべきと僕は考えている。それは、仲良しクラブを作るのではなく、店を大事にしてくれるお客さんを作れという意味。そのために、客がおもしろがってくれるアイデアや工夫を出して、一緒になって楽しめる店にしていくことが必要だね。

これまでは、店を出すところまでを教えてきたが、大成功する方法を考えてやることが僕の目標。うちのOBでも、大成功した店としてない店が出てきている。同じことをやっているはずなのに、差が出るのは不思議だけど、勉強家ではなかったり、商売を楽しんでないOBに失敗例が多いかな。立地が悪いという理由もあるかもしれないが、場所が悪いからこそおもしろいんだといいたい。場所が悪くてもひとりふたり来てくれるのなら、その人たちにありがとうと気持ちを伝える商売をやらなきゃいけない。大阪に一日70万円も売り上げるという屋台があるけど、そこのご主人は、あまりに忙しいときに“迷惑を掛けたから”と客に1000円ずつ返すことがあるらしい。好感度を上げようとしたのではなく、純粋に心の底から詫びている。もらった客からすると「おもしろい店」と感じる。気持ちを伝えるという手段ひとつをとっても、まだまだ学ぶべきことが僕にもたくさんある。お客さんに気持ちを伝える商売に徹することが一番大切なんだろうね。

お客さんと一緒に楽しみ、気持ちを伝え合える店が理想

講義は べゑ’s BAR 虎龍 で収録させて頂きました。
ご協力ありがとうございました。



宇野 隆史

宇野 隆史

1944年東京生まれ。現在の居酒屋文化に大きな影響を与えたコンセプト「くいものや楽」の創業経営者。現在はバンクーバーに住居を構え、日本とカナダとの二重生活を送る。昨年12月三軒茶屋に「べゑ’s BAR 虎龍」をオープン。店造り、商品とも楽しさに溢れた店舗で希代のコンセプトメーカーと言われる実力を見せつけた。

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