2011年3月11日、東北地方を巨大地震が襲った。未曾有の被害をもたらした東日本大震災は東北地方の飲食店経営にも甚大なる影響を及ぼした。被災地、仙台で直営9店舗、FC1店舗を運営する株式会社スタイルスヴォイスプロダクトの代表取締役 社長 佐々木浩史氏に飲食店で起業を目指す皆様へのメッセージとともに震災発生時のお話をお伺いした。
-まずは、佐々木社長のご経歴をお教え下さい。
もともとは、放送局で制作のディレクターなどサラリーマンをやっていました。29歳で独立したのですが、当時の放送局が自社製作から外部のプロダクションに番組制作をアウトソーシングする時代になって来たところでした。このまま会社にしがみついていても希望のセクションに行ける保障がなかったですし、仙台にはまだまだ番組制作をしている会社も少なかったこともあり、自分たちが番組制作を請負った方が面白いだろうということで仲間数人と制作プロダクションの会社を起こしました。競合会社も少なく、需要も結構ありましたので商売としてはうまく行っていました。けれど数年もするとちょっとした内紛みたいな揉め事が起こったんです。言い出しっぺだった私が社長をやっていたんですが立場上、当然利益を追求します。そうすると基本的に来る仕事は全て請けなければならない。けれど制作サイドはやりたい仕事だけしたがり、「 前の会社じゃこんな仕事はやっていなかったじゃないですか 」 などとなるわけです。結局は会社ごっこみたいなもんだったんですね。みんなサラリーマン根性が抜けていなかったので結局5年ほどでその会社は解散となりました。
次に起こした会社も似たような業種だったのですが、イベントとか企画もできるプロデュース会社をつくりました。ここで飲食店の企画の仕事がちょくちょくと入って来るようになり、飲食店と接点ができたのです。企画といってもコンサルティングなどという大それたものではなく 「 こういう企画をやったら集客ができるんじゃないですか 」 とか 「 店構えをこういう風に見せたらインパクトがあるんじゃないですか 」 などと完全に企画の発想でした。当時はまだ、飲食店の利益構造など全くわかっていませんでしたから(笑)。
でも見てくれている人はいるんですね。仙台の北部に泉中央というベッドタウンがあるんですが、ここに地元のデベロッパーさんが飲食ビルをつくりたいんでリーシングを含めたプロデュースをやってくれないかという依頼があったんです。今までの私たちの仕事を見ていたデベロッパーさんからの依頼だったのです。リーシングのハードルが結構高かったんですが、お受けすることになりました。
この飲食ビルのプロデュースの仕事も何とか形になってきて、私たちも1階に飲食店を出すことになりました。18坪くらいの小さな店でしたのでリスクもあまり無かったのと1軒くらいは自分たちにもありかなという程度の考えでした。この当時は飲食そのものの仕事を広げるという構想は全くなかったので、本当はこの店だけのつもりでした。結局はすぐに2店目をつくることになったのですが(笑)。
このビルの最上階の5階が120坪ほどあったのですが、デベロッパーさんの意向としてはここをランドマーク的な店にしたいので、いい店を誘致して欲しいということだったのです。当時、東京ではグローバルダイニングさんが一世を風靡していたので、イメージ的にはモンスーンカフェみたいなものだったのです。「 泉じゃ入らないだろう、そんな店は 」 とは思っていたのですが(笑)、そうも言えないので、いろいろあたりました。でも、なかなかうまく行きませんでした。早く埋めることを考えて 「 2分割か3分割にしませんか 」 という提案もしたのですが、「 収益のことを考えてくれるのはありがたいけれど、それはこちらで判断します 」 と跳ね除けられてしまいました。ランドマーク的な店を入れたいという方針はいささかも変わっていなかったのです。
当初、この様な店があったらランドマーク的な店になり、面白く、受けるのではないかという企画案を出していたのですが、「 お金はこっちが出すから、その企画をあなたがやったらいいじゃない 」 とデベロッパーさんから逆提案を受けることになったのです。
株式会社スタイルスヴォイスプロダクト
代表取締役 社長 佐々木浩史氏
1961年 宮城県石巻市出身
1999年 現、株式会社スタイルスヴォイスプロダクト設立
事業概要 飲食店の経営、商業施設・飲食店舗のプロデュース、各種店舗の設計・デザイン、SP、マーケティングのビジネスディベロップメント