静岡県藤枝市にある「遊酒 岡むら」を始めとして同県内に現在7店舗の居酒屋を経営する岡むら浪漫。代表の岡村佳明氏は「看板をださない」「宣伝をしない」「入口がわからない」という独自のコンセプトで、口コミだけの繁盛店を作り上げてきた。彼のユニークな経営手法は、メディアからも脚光を浴び、今や全国の講演会にひっぱりだことなる。また「居酒屋から藤枝を元気にする会」を立ち上げ、地元の活性化にも積極的に取り組んでいる。そんな多忙な日々を送る岡村代表に、繁盛店つくりの極意を語っていただいた。
あれほど大好きだった海もサーフィンも一切封印して、「 岡むら 」 を自分の手で繁盛させたいと決心したのですが、当時の私には、たいした料理の知識も技もノウハウもありませんでした。それまではやる気もなかったので、新しい店つくりもおふくろの計画通りに進めていました。でも、いったん本気スイッチが入った途端、まず私はいろんな店を回っていろんな人の話を聞いてもっと勉強しようと思いました。その中で考えていたことは 「 母さんの計画通りじゃあ今まで通り近所のおじさんしか来ない店になってしまうな。自分が本気でやるからには、若い人や女性客も来てくれる店にしたい。でも今まで何十年もおふくろの店に通ってくれていた常連さん達が来られない店じゃあ申し訳ないし… 」 という思いでした。そこで、おふくろのお客様と私のお客様の両方に楽しんでもらえる店つくりを目指して出来上がったのが、現在の 「 岡むら 」 のスタイルなのです。
しかし、昨日まで遊んでいた私がいきなり今の店つくりを思いついたわけでは当然ありませんでした。繁盛店を作るには何から始めたらいいのか?私は、まずは、”超“繁盛店を見にいこうと考えました。それからは休日になる度に、東京を中心に”超“ 繁盛店を1日5~6軒見て回るという生活が始まりました。その中で”超“繁盛店とは何がすごいのだろうと考えた時、もちろん料理がおいしい、接客が丁寧、店のつくりが良いいところなどたくさんありましたが、また行ってみたいなと思えるお店にはなかなか出会えませんでした。1年以上この様な生活を続けていましたが、そんなある時、自分がとある1軒の店にだけは何度も足を運んでいることに気づきました。その店の名前は、東京・吉祥寺にある 「 汁べゑ 」。飲み代よりも新幹線代の方が高くつくそのお店に、自分は何でいつも行きたくなって休みの度に何度も通っているのだろう…自問自答しているうちに、ふと気付いたのです。
「 自分は料理やお酒を楽しみに行っているのではないな。人に会いに行っているんだ。良いお店があるのではなく、良い人、良いスタッフがいるお店があるだけなんだ。人が輝けば、お店も輝くんだ 」 。この気づきによって 「 繁盛店つくりは人つくりだ 」 が私の生涯のテーマとなりました。
しかし、「 人つくり 」というからには、まずは私自身がきちんとしていなければ言うもおこがましい。商売繁盛といえども、自分が人様に嫌われていては商売がうまくいくわけがない。だから商売繁盛という前に自分がいかに人から好かれる人間になるか、いかに自分を繁盛させることができるかを考えよう。そこから私の 「 自分繁盛 」 = 「 自分つくり 」 が始まったのです。
有限会社 岡むら浪漫
1950(昭和25)年 「はとや」で創業
1970(昭和45)年 「酒房 岡むら」開業
2002(平成14)年 「遊酒 岡むら」開業
「遊酒 岡むら」の他、「喰い処ばぁ 幸」「五十海 しぃぼー」「岡むら のぼる」「岡むら うさく」「VEGETABEL BAR 兼次郎」「港町 岡むら いきち」を運営
代表取締役 岡村佳明氏
1962年10月 静岡県藤枝市出身
著書に「看板のない居酒屋」