店舗数を拡大するビジネス手法は、チェーンストア理論が一般的だが、従来にはなかった業務委託による店舗展開「トラスト方式」で、60数店に上る店舗ネットワークをつくり上げているのが株式会社ムジャキフーズである。独立希望者とムジャキフーズの間でトラスト(信頼関係)をつくり、店舗のパフォーマンスと収益を最大化させるという同社の仕組みを紹介するとともに、繁盛店運営に必要な要素を探りだしてみたい。
ムジャキフーズが手がけた飲食店はまだ70 弱で、あまり偉そうなことは言えませんが、少しずつ実績ができつつあると思っています。そのため、同業他社はもちろん、他業界であっても多店舗化を進めている企業に対して、ノウハウを提供する業務もやっていきたいと思っています。我々がつくり上げてきたマニュアルや仕掛けを有効に使っていただく立場になりたいと考えています。トラスト方式の先駆者になることが大きな目的で、そのノウハウをどんどん使っていただきたいです。
もちろん、飲食店を出そうと考えている個人の皆さんとのネットワークも広げていきます。トラスト方式は、起業を目指す方にとってリスクヘッジになることは明らかですから。1から10まですべて自分だけでやろうとすると大変ですし、失敗した時のリスクは大き過ぎますから。多額の借金を抱えてしまっては、次のチャレンジなんてできませんからね。うちの場合は、A契約でやってみてダメだったら、従業員に戻れるし、そこから再度チャレンジもできます。再でも、再々でも、本人の気持ちや置かれている環境が許せばチャレンジできます。大将として、「 ダメの烙印 」 を押されても、そこからはい上がってくることに期待しています。出る杭は絶対に打ちません。「 来るもの拒まず、去るもの追わず 」 ですね。
これまでにない新業態の飲食店を積極的に導入したいです。個人的には、焼鳥屋を手がけてみたいです。自分が行きたい店ですね。ムジャキフーズの寿司屋も天ぷら屋も鉄板焼き屋も職人の腕・技術が光る業態ですし、この食べ物なら絶対にこの店に限るという顧客をしっかり囲い込めれば全国に向けて宣伝する必要もまったくない。寿司屋などは、おそらく顧客リストに50名ぐらいしかないかもしれません。イスとお座敷合せて12~13人しか入らない規模であっても、しっかりと売上げはたっています。そういうお店がずっと生きていけるんだと思います。ムジャキフーズの店は65店舗以上になりましたが、サイトなどでまとめてプロモーションをしていない理由もそこにあります。個店ごとにPRする分には、イメージづくりとして良いことだと思いますが、「 ムジャキフーズの店です 」 とアピールすることにメリットはないと考えています。
我々は、人に特化した飲食店をつくっているから自信を持って言えるのですが、人間は十人十色で、皆がそれぞれに違う存在です。人がつくる店舗も、人それぞれに違っていてしかるべきです。これから飲食業界で起業しようという皆さんにお伝えしたいのは、ある人が良いと言ったこと、そのすべてが良いと信じ込まないのでほしいということです。10人の経営者がいたら、それぞれに合う考え方があるはずです。ということは、お客さんにもそれぞれ違いがあるはずです。個々のお客さんに認められるような店づくりを実践してほしいと思います。
文: 貝田知明
株式会社ムジャキフーズ
代表取締役社長 田代隼朗氏
1963年鹿児島県出身
1986年6月に飲食店の経営と不動産の仲介業を主たる事業とする田代コーポレーションを設立。1997年3月に子会社としてムジャキフーズを設立、田代コーポレーションからラーメン店4店舗を営業譲渡。2001年4月には、初の業務委託店舗となるラーメン店を出店。現場での運営実績をもとに、これまでにない店舗展開システムとしてトラスト(=信頼関係)方式を確立して多くの独立希望者を支援。ラーメン、中華、洋食、鮨、鉄板焼、和食など67店舗(09年10月末時点)を全国規模で展開している。