「執念」と「覚悟」がなければ、“愛”のある飲食店はつくれない!-ナニワの繁盛指南役が語る、愛される店づくり理論-株式会社リンク代表、店舗プロデューサー 川野秀哉氏

「執念」と「覚悟」がなければ、愛のある飲食店はつくれない!ナニワの繁盛指南役が語る、愛される店づくり理論 株式会社リンク代表 店舗プロデューサー 川野秀哉氏

繁盛店には、来店の度に新しいお客様を連れてくる“愛顧客”が必ずいることに注目して「愛顧客理論」を確立し、数々の人気店舗に携わっている店舗プロデューサーの川野秀哉氏。多くの店舗プロデューサーが開業までを仕事領域としているのに対し、愛顧客育成をベースにオープン後にも積極的に関わり、約半年で繁盛店へと導くのが川野流である。また、自身のブランドである「豚料理専門店豚公司(とんこんす)」も人気店に育て上げており、その理論を実践、さらにブラッシュアップを行っている。今回は、起業を目指している外食ドットビズ読者に向け、繁盛店のプロフェッショナルである川野氏から貴重なお話をうかがうことができた。

第5回 自分の舌の経験値を高める努力を常に忘れないこと!

第5回 自分の舌の経験値を高める努力を常に忘れないこと!

【 豆乳しゃぶしゃぶイメージ 】豚料理専門店豚公司ホームページより飲食店プロデューサーの一番大きな仕事は、メニューを考えることやと思っています。こんなん言うたら敵を作るでしょうが(笑)、敢えて言わせてもらうと 「 料理人に、何でメニューが決められなアカンねん!」 という気概を持ってるんです。メニューを決めるのは、料理を山ほど作ってきた人間よりも、山ほど食ってきた人間にさせて欲しい。それから、店に来てくれるお客さんがどんな人か分かっていて、その人に成り代わって何が食いたいかを考えられる人がメニューを決めるべきなです。塩分濃度やどんな水っ気で料理を作るかということも、商圏エリアにいる人の様子を見て考えるのがプロデューサーのMENUを考える仕事じゃないですかね。

4、5才の頃(昭和39年頃)から 「 串の坊 」 の法善寺本店で串カツをたらふく喰ったあと、寿司屋に連れて行かれて、「 トロ、赤貝、鮑、エビ 」 って喰うてた、ろくでもない嫌な子供やったんです。(笑)毎週日曜日は必ず外食してました。当時は 「 いつも日曜に外食してることは、人に言うたらアカン! 」 と母親には厳しく言われてました。なんでかいうたら、外食する家はお母さんが料理をできないか、さぼっているという烙印を押されたからです。ところが、うちは毎週日曜日に外食するのが当たり前。会社社長をしていたオヤジが昼間はゴルフに行くから、そのお詫びで食事に連れていってくれてたんです。それが下地になっている。

【 生姜湯しゃぶしゃぶ 】高校に上がる頃から大学時代にかけては、家業の景気は悪くなっていたんですが、今度は、お坊さんが僕を美味しい料理に連れて行ってくれるようになるんです(笑)。ある学校法人の系列のお寺の住職と副住職が寺子屋みたいな塾をしていて、そこに通っていたら、美味しい物をごちそうしてくれた。今から30年以上前に、会員制のステーキハウスやイタリア料理専門店で食べていた。ケチャップ漬けのナポリタンしか知らん時代にイタリアンですよ。何の縁か、そのイタリアンの店にセミナーの下見に行くことがあって、久しぶりに店を見たらショック受けるくらいヘロヘロになってましたけど。さすがに、30年以上も続けていると、どこかに無理が出てきますよね。その住職は酒を飲めへんけど、めちゃめちゃ美味しそうなドリンクをそこで飲んでいた。これ何ですか?って聞いたら、「 アドバデカデジエール??? 」 とか言ってて聞き取れなかったんですが、いまはもう分かっています。「 アドヴォガードジンジャエール 」 だったんです。リキュールのアドヴォガードをジンジャエールで割ったもので、30年以上前にはめっちゃ珍しいもの。舌ができてない学生の僕がそんなもん飲んだら衝撃を受けますよね。それ位レベルの高い物を出してたイタリアンに行ってたんです。

大人になってからは建築業をやっている後輩に教わった。建築会社っていうのは現場が変わるごとに、近所のうまいもん屋を覚えていくんですね。B級・C級の食いもんも含めてようさん教えてもうた。人生の吉所吉処(編集注:川野流造語 節目の時が吉日の時と言う意味)にうまいもんをナビゲートしてくれる人がおったんです。

【 トマト酸辣湯 】(期間限定メニュー)飲食業界で成功した社長連中と食事会があると、必ずといっていいほど、貧乏自慢の話が始まるんです。名前は出しませんけど、「 成功した! 」 と思うとるやつらは、まず貧乏だったことを話すんですよね。僕は、それを聞いてられへん…。そんな空気だったら 「 オレはボンボンやった 」 とはっきり言います。その上で敢えて主張さしてもらうんです。「 皆さん、素晴らしい飲食店してはるんやから、しっかりとええもん喰ってきた、お客さんにはそれ以上に感動するええもんを出していると言ってほしい 」 とね。飲食のプロなら、ロクな物を食べてこなかったって言うのはやめるべきです。お客さんに食べてもらうもんは、店を持ってる人間の舌が経験したもの以上にはならんからです。自分の舌で味わった以上の料理を提供することはできへんのです。だから、しっかりと喰うてこなあかんのですよ。

執念と覚悟がなければ、愛のある飲食店はつくれない ナニワの繁盛指南役が語る愛される店づくり理論 株式会社リンク代表 店舗プロデューサー 川野秀哉氏そんな主張したら、場がシラーッとして、それ以上仲良うはなりませんね(笑)。でも、料理人って外に喰いに行かへん場合が多いじゃないですか。オーナーさんも、そこそこ成功しはると、オネーチャンに走るか、高い車に乗るか、クラブ活動するかですよね。舌のレベルを上げることをあんまりしないですよね。毎日自分とこの料理を喰わなあかんけど、時間があったら全然違うジャンルでもええから食べるべきやと思うてます。だから、飲食店を起業する場合は、必ずしも料理人であるべきとは思いません。お客さんの経験以上に、あちこち食べ歩いてる人なら向いてると思います。



会社名

株式会社リンク

http://www.linkweb.co.jp/

代表取締役(店舗プロデューサー) 川野秀哉氏
1959年大阪府出身

1987年にコンピュータソフト会社リンク創業、通販ソフトおよび通販事業の立上げ指導を業務としていた。その後、飲食店をはじめ各種店舗のアドバイスも手がけるようになり、繁盛店には必ず愛顧客(来店の度に新しいお客を連れてくるお客)がいることに注目して「愛顧客理論」を確立。

日経レストラン誌には、02年から2年間「愛顧客育成講座」「愛社長養成塾」を毎月4頁執筆。幅広い読者層の支持を集めて、連載終了後はナニワの繁盛指南士として活躍、「愛される店の理由」も上梓する。05年には自ら「豚料理専門店豚公司(とんこんす)」を開店、愛顧客育成の実践などノウハウのショールーム的な位置付けで人気店に育てている。

文:貝田知明
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