「執念」と「覚悟」がなければ、“愛”のある飲食店はつくれない!-ナニワの繁盛指南役が語る、愛される店づくり理論-株式会社リンク代表、店舗プロデューサー 川野秀哉氏

「執念」と「覚悟」がなければ、愛のある飲食店はつくれない!ナニワの繁盛指南役が語る、愛される店づくり理論 株式会社リンク代表 店舗プロデューサー 川野秀哉氏

繁盛店には、来店の度に新しいお客様を連れてくる“愛顧客”が必ずいることに注目して「愛顧客理論」を確立し、数々の人気店舗に携わっている店舗プロデューサーの川野秀哉氏。多くの店舗プロデューサーが開業までを仕事領域としているのに対し、愛顧客育成をベースにオープン後にも積極的に関わり、約半年で繁盛店へと導くのが川野流である。また、自身のブランドである「豚料理専門店豚公司(とんこんす)」も人気店に育て上げており、その理論を実践、さらにブラッシュアップを行っている。今回は、起業を目指している外食ドットビズ読者に向け、繁盛店のプロフェッショナルである川野氏から貴重なお話をうかがうことができた。

第3回 いかにしてもう一度来てもらうか?それが愛顧客理論の基本

第3回 いかにしてもう一度来てもらうか? それが愛顧客理論の基本

やきにく萬野 ホームページ 1999年になると、いろいろとお世話になってた肉屋の萬野さんから焼肉屋を手伝ってほしいという依頼がありました。「 自分たちは肉に関してはプロだけど、料理についてはよう知らん。JR環状線桃谷・寺田町間の高架下という夜6時になったらひとっこ一人歩いてへんような立地でやるわけやから、カルピ100円で売ってもえ~から、なんせ繁盛させてくれ!萬野の名前が掛かってるから 」 と覚悟で依頼されました。この 「 やきにく萬野 」 が僕にとっての最初の店舗プロデュースとなりました。面積28坪、営業時間夜5~10時という商売で、月1500万円を売る焼肉屋になったもんやから、いろんなところから取材が来ました。「 やきにく萬野 」 が難しい立地で繁盛したのは、一回来たお客さんをいかにして2度、3度と来さすかという愛顧客理論をそのまま実践してくれたからだと思います。オープンから10年以上経った今でも、そのままやってくれてます。初めて来たお客さんにご意見を聞いて、2~3週間経ったところで 「 ありがとうございました 」 というDMを届ける。そこから引っぱり上げて囲い込んでいくという地道な手法です。僕の愛顧客理論の一番の実践者が萬野さんなんです。この頃から、本格的にコンサルタントとして、飲食店のプロデュースやセミナーをやるという稼業がはじまっていきました。

やきにく萬野 ホームページ2002年から2年間は、日経レストランに 「 愛顧客育成講座 」 「 愛社長養成塾 」 という連載記事を書かせて頂き、04年12月には 「 愛される店の理由 」 という本も出して頂きました。翌年11月には 「 豚料理専門店豚公司(とんこんす)黒亭 」 を立ち上げました。これは、僕の記事を読んで相談に来てくれた人がきっかけになりました。34才の男性で、家族とレストランを経営しているが、月30~50万円の赤字が1年以上続いているというんです。僕に何とか考えてほしい、もしくは新しく商売をしようかと相談に来たわけです。とりあえず赤字を止めなあかんから、店を閉めるか、絞り込んだ展開を考えてから来いと言って帰らせたら、また半年後くらいにやってきて、やっぱり店を出したいというんです。でも、「 自己資金が100万円しかできないから、やっぱり無理ですよね・・・ 」 と言うんです。こっちは徹底的に浪花節の男なもんで(笑)、考えを巡らせていたら、何かがつながったんです。ある店舗のオーナーから 「 店長が定年で辞めるんで、ええ商売ないか 」 と相談を受けてたのを思い出しました。こっちには店があって金も持ってる社長がおる、こっちには金はないけどやる気がある34才の男がおる。つながりますよね。

豚公司 黒亭彼の得意な料理はとんかつ。僕は、ずっと牛を触ってきたから、自分が商売をするなら豚肉だと考えてたんです。だから、「 オレが豚の業態をつくるから、うちのFCの一号店として実験台になるか? 」 と誘いました。100万円で店を持てるわけですから彼にとっても良い話ですよね。物件のオーナーには、「 店を作ったって 」 とお願いしました。投資金と家賃に加えて、プラス10万円を儲けてええという条件。半年かけて彼を仕込んで、萬野さんに豚肉を相談して先の完熟豚を紹介しもらって、宮崎まで食べに行って納得して店ができるというときに、またまた問題が発生しました。34才の彼には、トータル200万円を用立ててもらって、あとはこっちで何とかして動いていたんですが、オープン3日前に来なくなってしまいました。私が店にいたら、業者が酒や食材を引き上げに来る。何してんねん?って怒ったら、「 もう店やめるから 」 と彼が連絡してきたと言うんですよ。ようやく電話で捕まえたら 「 怖いから辞める… 」 ですよ。借金200万円だけでも怖かったんですね。オープン直前に料理長がおらんようになるのは2回目でしたから、「 出た、またや 」 と割り切れましたけどね。

【 ばら肉 】豚料理専門店豚公司ホームページより2、3週間はできるという料理人を確保して、1~2日の研修だけでとりあえずオープンさせました。それからしばらくして今の調理長が来てくれることになったんですが、新地でも有名な割烹でやってた人なんです。13.5坪の店なのに、かなりの高額な月給を取ってしまうほどの料理人。本当なら無理な話ですが、いま働いている人はすぐにいなくなるから、誰かを入れなあかん。とりあえず、1週間入ってもらって豚の裁き方から覚えてもらいました。さすがに和食の職人さんで何でも器用にこなしはる。1週間経って厨房を見してもらったら、以前と違ってどこもピカピカなんです。一口カツの肉の仕込みを見せてもらったら、肉がカステラのようにきれいに並んでるんです。それ見た瞬間に 「 コイツ、ほんまもんや! 」 って鳥肌が立ちました。



会社名

株式会社リンク

http://www.linkweb.co.jp/

代表取締役(店舗プロデューサー) 川野秀哉氏
1959年大阪府出身

1987年にコンピュータソフト会社リンク創業、通販ソフトおよび通販事業の立上げ指導を業務としていた。その後、飲食店をはじめ各種店舗のアドバイスも手がけるようになり、繁盛店には必ず愛顧客(来店の度に新しいお客を連れてくるお客)がいることに注目して「愛顧客理論」を確立。

日経レストラン誌には、02年から2年間「愛顧客育成講座」「愛社長養成塾」を毎月4頁執筆。幅広い読者層の支持を集めて、連載終了後はナニワの繁盛指南士として活躍、「愛される店の理由」も上梓する。05年には自ら「豚料理専門店豚公司(とんこんす)」を開店、愛顧客育成の実践などノウハウのショールーム的な位置付けで人気店に育てている。

文:貝田知明
ページのトップへ戻る