東京・東中野にあるナポリピッツァ専門店「ピッツェリアGG」は、600円台から本場の味を楽しめることで多くのファンを抱えています。店長を勤める河野智之氏は、ナポリの老舗店舗で修行を重ねた本場仕込みのピッツァ職人。興味をもった食べ物を身につけるため単身イタリアへ渡り、若くして人気店を切り盛りするに至った貴重な体験談をお話いただきます。
薄利多売が前提ですから、オープン当初は運営が厳しかったですが、お客さんが付いてくれてからは問題ありません。当初は、地元に住む方や勤務しているリピーターのお客さんばかりでしたが、今年の4月に口コミグルメサイトの 「 食べログ 」 にどなたかが高評価を書き込んでくれて、それからは新しいお客さんがどんどん増えてきました。以前は、平日の昼は女の人が多く、夜は近くに住む人やカップルが多かったです。土日は家族連れが中心でした。最近は、いろいろと増えて傾向が見えなくなりつつありますね。
やっぱり、自分で店をやると、いろいろなことができて楽しいですね。「 継続は力なり 」 ではないですが、定休日があって途切れ途切れに仕事をするよりも、毎日毎日続ける方が自分のためにも店のためにもなるのではないかと思うようになりました。ですから、いまは定休日を設けずに営業しています。続けることが、技術的にも人間的にも向上すると思います。こう考えるのは、僕自身がピッツァ職人になってまだ数年しか経っていないからかもしれません。まだまだ向上できると思っているから、休まずに焼いているのです。
本場のピッツェリアをそのままもってきましたが、腹の中では現地の店に負けなくないという思いがあります。向こうの人々は、「 1枚1500円もする日本のピッツァなんて食べたいとは思わない 」 とよく言います。だったら、こっちも同じ値段にして勝負しようじゃないかということです。それで、本場よりもおいしいピッツァを出したい。30年、40年と焼き続けているピッツァ職人に対抗するには毎日焼くしかないのです。
今後は、店舗の拡大を考えていますが、店舗を増やすというよりも、まず職人を増やして、ナポリピッツァの知名度を上げていきたいです。職人それぞれにやり方があるので、店によって味が違ってもいい。ナポリピッツァという最低限の枠を外れなければ、好きなようにやっていいという展開をしたいと思います。会社が大きくなれば、仕入れが安くなるので、そういう意味で多店舗はしていきたいと思います。仕入れが安くなるほど、安い値段でピッツァを出せて、より本場に近づいていけますから。料理の味や姿かたちだけではなく、値段や店の雰囲気、料理の楽しみ方といった食文化も本場に近づけるのが僕の目的となるのかもしれません。
まだまだ僕が飲食業を勉強しなきゃいけない立場なので、これから起業を目指す人へメッセージを送るのはおこがましいですが、まずは 「 健康第一 」 を肝に銘じてほしいです。しっかりと寝ることが本当に大事です。それから、自分の店をもつ前に、“ 本物 ” を体験しておくことが大切だと思います。本物があって、そこからアレンジに流れていくのでしょうが、最終的に本物に戻るのが 「 食 」 ではないかと思うのです。僕もナポリでいろいろな種類のピッツァを体験しました。現地でもナポリピッツァからかけ離れていてながら、ナポリを名乗っているものが多くありました。やはり、そういうピッツァはあまりおいしくないのです。値段が安いので受け入れられる場合もありますが、おいしさでは王道のピッツァが圧倒的に上です。偽物は、いつかは化けの皮がはがれてしまうということかもしれません。ですから、まず、基本となる本物を身につけることがすべてのスタートになると思います。
河野 智之
1981年東京都出身。
学習院大学を卒業後、イタリア料理チェーン店に就職するも、自ら料理を身につけて起業したいとの思いから退職。翌年の2005年1月に単身イタリア・ナポリへ渡航する。
ナポリの老舗ピッツェリアでピッツァ職人として修行、2006年11月に帰国。
帰国後は料理店に勤務しながら起業準備に奔走、2007年10月に株式会社三番町ホテルの出資によって、東京・東中野にナポリピッツァ専門店「ピッツェリアGG」をオープンする。