東京・東中野にあるナポリピッツァ専門店「ピッツェリアGG」は、600円台から本場の味を楽しめることで多くのファンを抱えています。店長を勤める河野智之氏は、ナポリの老舗店舗で修行を重ねた本場仕込みのピッツァ職人。興味をもった食べ物を身につけるため単身イタリアへ渡り、若くして人気店を切り盛りするに至った貴重な体験談をお話いただきます。
店舗デザインで一番気をつかったのは、少ない人数で運営できるよう工夫することです。ピッツァを焼きながらお客さんの様子が見られるようにしました。逆に、お客さんからは窯が見えることにもなります。厨房のオペレーションの効率化、お客さんとのコミュニケーションがポイントです。要は、本場ナポリにあるピッツェリアと同じ形式にしたかったんです。ただ、1フロアの店舗を想定していたのですが、物件が2階建てだったので、1階は窯のすぐそばに客席があるピッツェリア風、2階はリストランテ風となっています。
アルバイトを含めて12人程度が在籍、ピーク帯に5人が常駐する形で運営しています。そのうち厨房スタッフは3人です。立ち上げメンバーの中には、ナポリのピッツェリア 「 マリーノ 」 で修行していた時に知り合った日本人の職人仲間もいました。いまはまたナポリで修行していて、機会があればまた一緒にやろうと話しています。いま在籍している2人の厨房スタッフも向こうで修行の経験があります。ひとりは高校時代の後輩で、僕がナポリにいた時に旅行でピッツァを食べにきたことがあり、数ヶ月後には 「 自分も職人になりたい 」 と再びやってきたのです。もうひとりも同じ店で働いていましたのでマリーノ出身者ばかりですね。僕が長くマリーノで働いていたので、いろいろなネットワークができました。窯は職人だけですが、その他の厨房ではバイトスタッフも使っています。
ナポリにあるピッツェリアをそのまま持ってくることが、この店のコンセプトです。たとえば、日本の相場ではピッツァ1枚が1500円もしますが、現地の感覚では信じられないことなのです。向こうで1500円も取ったら、ぼったくりだと思われるかもしれません。30年、40年焼き続けているマスタークラスの職人のピッツァなら1500円でも納得してもらえるかもしれませんが、実際には、そんな店は存在しません。ローマにいけばいくらでもありますが、ナポリでは高くても7~8ユーロ、1200円程度です。一般的に食べられているピッツァは、3~4ユーロ程度です。500円もしないものもあります。僕もピッツァ1枚に1500円も出したくないし、お客さんに食べさせたくもない。高くしなくても薄利多売にすればいい。ですから、ナポリピッツァの代表である 「 マルゲリータ 」 は750円、オレガノ・ニンニク・バジリコというシンプルで飽きのこない 「 マリナーラ 」 は650円で提供しています。
修業時代につくっていたメニューのほぼすべてを出しています。ピッツァは、トマトソースベース、モッツァレラベース、スペシャルピザの3ジャンルがあり、その他の料理と合わせると数十種類のメニューがあります。減らした方がいいというアドバイスもありましたが、材料がかぶっているものが多いのでロスがないので大丈夫だろうと判断しました。
現地の値段設定にして、どんどん食べてもらい、ナポリピッツァを知ってもらいたいのです。どのような大きさをしていて、どんな味が多いとか、皆で分けるのではなく1人が1枚を食べる習慣があるなど、ナポリの食文化を知ってほしいので安くて本物を提供する店にしたいと思ったのです。メニューもピッツァが中心で、他の料理は軽い揚げ物と野菜だけにしました。味・値段・雰囲気のすべてにおいて 「 これがピッツェリアです 」 と言える店にしたかったのです。
河野 智之
1981年東京都出身。
学習院大学を卒業後、イタリア料理チェーン店に就職するも、自ら料理を身につけて起業したいとの思いから退職。翌年の2005年1月に単身イタリア・ナポリへ渡航する。
ナポリの老舗ピッツェリアでピッツァ職人として修行、2006年11月に帰国。
帰国後は料理店に勤務しながら起業準備に奔走、2007年10月に株式会社三番町ホテルの出資によって、東京・東中野にナポリピッツァ専門店「ピッツェリアGG」をオープンする。