大人の隠れ家的居酒屋「勝手口 てやん亭゙」、博多串焼きの専門店「ごりょんさん」など5店舗を都内に展開している岩澤氏。27歳の時に初めて外食産業に興味を持ち、前回の講義にご登場いただいた宇野隆史氏の元で修業を開始したというチャレンジ精神の持ち主です。
西荻窪に「てやん亭゙」を出店してから10数年、いまも挑戦を続けて全店舗を繁盛店に育て上げているほか、スタッフ指導にも力を注ぎ、岩澤氏の元から新たな起業家も巣立っています。
起業に必要な気構え、繁盛店へ育てる秘訣など、外食産業での独立を考える人々に向け、熱いメッセージをいただきました。
毎日違う店になっていいと言いましたが、メニューや業態を変えて店をリニューアルすると、やっぱり、それまでのお客さんは来なくなることがあります。でも、それでいいんです。新しい物に生まれ変わろうとすると、切っていかなきゃいけないものもあるんです。昔のものを残して、新しいものも手に入れようなんて、そんな欲張りな人生はよくないんじゃないかな(笑)。人生は短いですが、コンパクトでもインパクトのある人生にするには、常に新しいことに挑戦する姿勢が必要です。人間は、ずっと同じことをやっていたら飽きてしまうものです。お客さんよりも先に、店にいる僕らが先に飽きなきゃダメですね。表参道で営業している地魚炙り焼と和酒の店「おけやの鈴太郎」は、「てやん亭゙」からリニューアルしました。売上目標を達成していても変えちゃいました。お客さんが飽きているかなと思ったら変えちゃいます。目標に届かなくなったから変えるのはイヤなんです。売上が落ちてきて後手後手に回るよりは先手で変えちゃった方がいいんです。
そういう意味では、経営者は苦しい立場を楽しまなきゃいけない。いわゆるM的要素が必要ですね(笑)。誰がやっても流行るような店をやっていても面白くないんですよ。10軒20軒と手を広げている友達もいるけど、僕はそんな器じゃないし、そういう生き方はできない。やっぱり、スタッフと悩んで楽しんでいきたいんです。去年の暮れから6店舗目を探しているんですけど、面白い物件がないとやる気にならないんですよ。渋谷のセンター街とかイヤなんです。何もしなくても行列ができそうで、面白くなさそうですから。家賃タダといわれてもやらないでしょうね。六本木の新築飲食ビルに申し込みを入れてるんですけど、条件が1番悪い地下2階を迷わず選びました。最初からそういうところを選んで楽しもうという性分なんですね。
自分がどれだけ商売を楽しめるか? 成功する道はそれしかないと思う。楽しめなかったら終わりですよ。楽しみ方っていうのは、いろいろな方法があります。それは自分で考えるべきだし、人のマネをするべきことでは絶対にない。自分なりの楽しみ方を自分なりに表現できる人間が最後には成功すると思うんです。いま飲食業界で働いている人もそうです。自分の上司や経営者を尊敬して付いていくのも大切ですが、自分がどういう人間なのかを理解して、自分なりの飲食業の楽しみ方を見つけて、日々仕事をすることが一番大切じゃないかな。
起業しようとしている人にいいたいのは、お店は軒数じゃないということ。小さな店を一軒だけやっている人にもすばらしい人はたくさんいる。逆に、何十軒とやっていても「なんだコイツ?」と思うような人もいる。何の為に何十軒もやっているのかわからない。ただ金もうけしたいだけみたいな…。たとえ一軒でも楽しんでやっている人には絶対に勝てないですよ。