自分の個性、お店の個性、従業員の個性を大事にする店づくりを目指せ!

起業のためのネット講義 自分の個性、お店の個性、従業員の個性を大事にする店づくりを目指せ! 有限会社 唾々 代表取締役 伊藤守

1999年に名古屋でオープンした居酒屋「唾々」を皮切りに、おでん屋やたこ焼き居酒屋などを次々と開業、2003年には東京進出も果たした伊藤氏は、35才にして7店舗を構えるまだまだ若手の起業家。「個性とチャレンジ」を基本コンセプトに、新しくて美味しい店をつくり続ける伊藤氏に、差別化できる店づくりのポイントを教えていただきます。

第5回 「個性」がないと、中途半端な店になってしまう!

「個性」がないと、中途半端な店になってしまう!

有限会社 唾々 代表取締役 伊藤守私が店を出すときは、いつも新しいことを試して、全部違う店にしようと思っています。同じメニューで、同じような店だったら、ただ場所が変わっただけで、おもしろくもないし新鮮味もない。チェーン店と思われたくないという理由もある。その方が従業員の刺激になるし、勉強にもなりますからね。

起業には個性が必要です。私は、自分の個性、お店の個性、従業員の個性を活かすことを大事にしています。今の時代に起業しようとすると、これだけの情報社会になって多くの情報が手に入ってしまうために、耳年増になっているかもしれません。そうではなく、まず、自分の個性、そしてやりたいことは何なのか明確にしてから動き始めないとボヤッとした店になってしまいます。最近の若い起業家を見ていると、他人のマネばかりが目立っているように思います。ただ、ある店を理想だと考えて真似するなら、それに徹するべき。真似しながら自分の個性も出そうなんて中途半端は絶対にうまくいかない。これは、起業するには大事なポイント。私も先輩からそう教わったし、今でも心掛けています。

串かつ男「居酒屋甲子園」というランキングがありますが、私は肯定も否定もします。運営事務局の人たちと仲が良いので、はっきりと言っていますが、業界の名だたる方々が関与して素晴らしいと思う一方、判断基準が分からない。元気がよくて、従業員がイベントをする店が一番かといえば、そうじゃないはず。美味しい料理が食べられないとダメ。ランキング上位の店を何軒か回りましたが、美味しいと思える店が少なかった。いい店は、美味しい料理と美味しい接客がある店だと思います。これから居酒屋を起業する人には、元気のいい居酒屋が流行るという価値観を持ってほしくない。真似をして同じ店ばかりになってしまいますから。極端な例ですが、店員が大声を張り上げない、しっとりと接客するというのもサービスのひとつでしょう。お客さんは千差万別。うちの 『 唾々 』 がいい店だと感じた人が、 『 串かつ男 』 はダメだと思うこともある。もちろん、その逆もある。それは、順位を付けられるようなものじゃないはずですからね。

有限会社 唾々 代表取締役 伊藤守それから、私は自分が料理人だとは思ってないですが、料理をあまり経験せずに独立する人は、原価を気にしすぎないでほしい。もちろん、私も原価を気にしますが、その前に「美味しい」という大前提があって、儲けは後から付いてくるものと考えています。儲けを考えてから、味を追及するのは本末転倒。最近の若い人は、その傾向が強いような気がしています。経営者らしいのかもしれないですが、私はいつまでも頑固な居酒屋のオヤジでいたい。そうじゃないと、従業員は付いてきてくれないです。  

従業員の方と私は、起業して楽しい人生を送れていると思いますが、壁にぶつかってばかりで、成功しているなんて一度も思ったことはありません。成功なんて一生しないでしょうね。成功したと思ったら、そこで終わりかもしれないです。だから、いつも悩んでいるし、失敗している。ただ、面白いことをやり続けることができる。それが起業の魅力だと思います。



伊藤守

伊藤守

有限会社 唾々ホームページ

1971年愛知県生まれ。大学卒業後、地方ラジオ局の内定を蹴って居酒屋業界に飛び込む。フレンチなどレストラン勤務も経験してから28才のとき名古屋で居酒屋を起業。朝まで営業する居酒屋、たこ焼き居酒屋など競合店とは一線を画した店づくりにこだわり、つぎつぎに繁盛店を生み出している。

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